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インタビュー

モノとしての工作機械、コトとの合わせワザが必要

投稿日時
2022/03/10 15:16
更新日時
2024/08/19 13:20

(一社)日本工作機械工業会 会長 稲葉 善治 氏 (ファナック会長)

今年は4年ぶりのリアルJIMTOFイヤーとなる。日本工作機械工業会がまとめる月間工作機械受注はこの半年間、1400億円前後で推移し(1千億円超は1月分までで12カ月連続)、絶好のタイミングでの開催となりそうだ。この好調はいつまで続くのか。死角に潜む課題はないか。昨年5月末、会長に就任した稲葉善治氏に聞いた。

――工作機械受注は高水準が続き、内外需とも好調です。この高水準はいつまで続きますか。

「ウクライナの関係で先行き不透明感が強まり油価が高騰していますが、今年は市場が好調で受注も上向きに推移するとみています。2023年についてもたぶんいい年であろうと思います。希望としては24年、25年まで好調が続けばと思います」

――その根拠は。

「明確な根拠はありませんが、半導体関係の投資は数年は続くと見ていますし、EVへシフトするためのいろいろな投資も進んでいます。5GDXIoTなどのインフラ整備も期待できますし、カーボンニュートラルを目指し幅広い投資が進むであろうと期待しています。それに航空機が復活の兆しを見せています。息の長い投資につながります」

――工作機械はネットワークでつながり、ロボットや測定機が機内にどんどん入り込んでいます。

4年前のJIMTOFでも、会場の工作機械を繋いで見える化することを日工会が直接提案して実施しました。それは今年のJIMTOFでも大きなテーマの1つになると思います。日工会の技術委員会でもこの分野の議論を深め、会員各社がIoTDXAI化に強く興味をもっています。日工会としては会員企業にこうした新しい動きに対して準備を進めていくように働きかけていきたい。世界でも大きなトレンドになっていくと思います。と同時にRRI(ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会)のIoTによる製造ビジネス変革のワーキンググループにオブザーバーとして参加し、新動向をいち早く掴んでいこうとしています。これからはモノからコトへではなく、モノとしての工作機械とコトを実現するためのIoTAIとの組み合わせを日工会として促進していきたい。両方が揃わないとモノづくりはできません」

――EVの普及は工作機械メーカーにとってはやはり逆風ですか。

EV化はマーケットの変革を意味しています。工作機械に対するトータルの需要が減るのではなく、必要とされる工作機械が変わるということ。新しい工作機械のニーズがどんどん出てきています。新しいニーズをいかに早く掴まえてそれに対応する工作機械を供給するか。スピード感をもってEV化に対応していくことが必要です。一例として、エンジンからモーターへ変わりますが、モーターはハウジングやシャフトなどで構成され、今までエンジンで培ってきた技術を生かせる部品がたくさんあります」

■一日の長ある日本

――海外工作機械メーカー、とりわけアジア勢の台頭が見られます。日本の工作機械メーカーは生き残れますか。

「海外メーカーの台頭は競争相手が出てくるというだけの話で、今までも米国や欧州の企業と競争してきました。日本の工作機械メーカーはお互いに切磋琢磨して常に先手をとれるように開発を進めていくことが大事です。米国の工作機械メーカーはほとんど姿を消しましたが、欧州メーカーがあり、韓国、台湾の企業も目につき、中国メーカーもどんどん力をつけてきています。日本の工作機械メーカーには100年の歴史をもつところもあり、長い経験と知識の蓄積があります。それを踏まえて先手を打つ努力をしていけば、どこの競争相手にも負けることはありません。各工作機械メーカーによって得手不得手がありますから戦略は違ってくると思いますが、共通しているのはモノとコトの合わせワザを使うことが必要で、日本企業はそれをすぐ実行できるポジションにあります。新しい競争相手はまず日本の工作機械メーカーに追いつくことから始めなければなりません」

――海外の競合として欧州、韓国、台湾、中国が挙がりましたが、とりわけ脅威に感じているのは。

「当然、欧州が一番の競合です。急速に力をつけてきているのが韓国、台湾。それに少し遅れているのが中国、インド。韓国、台湾は日本や欧州メーカーの背中が見えてきているのではないでしょうか。日本は追いつかれないようにさらに加速する必要があります」

――欧州は5軸加工で先行した部分が大きいでしょうか。

「それだけではありません。欧州の工作機械メーカーは基礎がしっかりしています。残念なことは日本の大学は『機械』と付く講座がどんどんなくなっていったように、産学で一緒にやりたくても学のパートナーが減ってきています。それに対して欧州は工作機械を扱う大学が多くてしかも強い。同時5軸、複合加工機で日本より先手をとったことは産学の結びつきと無縁でないと思います」

2022310日号掲載)