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インタビュー

パナソニック ライティング事業部 マーケティングセンター 非住宅推進部 課長 山中 正喜 氏

投稿日時
2025/12/15 09:31
更新日時
2025/12/15 10:03

LED化の需要増に『施工性』『情報発信』で対応
「差し替えだけでは発火の危険も」

2027年末に製造・輸出入が全面的に禁止される蛍光灯。以前から人手や部材不足の懸念から早めの取り組みが呼びかけられていたが、ここにきてLED化の取り組みに火がつき始めたようだ。このいわゆる『蛍光灯の2027年問題』に向けて、施工性の良い製品などで着々と準備を進めるパナソニック ライティング事業部 マーケティングセンター 非住宅推進部 課長の山中正喜氏に聞いた。

――「蛍光灯の2027年問題」のタイムリミットが迫っています。進捗はいかがでしょうか。

「今年に入ってから一気に動き始めました。特に遅れていた学校など公共施設でのLED化が急速に進み、当社にも多数の引き合いをいただいています。2027年末の蛍光灯の生産終了(パナソニックは279月末に終了予定)に向けて、市場が一段と活発化してきた印象です」

――ようやく動き出したのですね。

「はい。業界全体でも施設用照明器具は前期比110%程で進捗しています。当社も同程度以上の伸びを示しています。ただ一方で、現場の人手不足は既に深刻で、需要に供給が追いつかなくなるかもしれないという懸念は未だ残ったままです」

――LEDを一本一本差し替えていくとなると結構時間がかかる。

「よく勘違いされるのですが、蛍光灯とLEDは見た目が似ていても中身はまったく別物です。そもそも蛍光灯は皆さんが思い浮かべる直管や丸管の『蛍光ランプ』と、それをはめ込む『蛍光灯器具』からなります。実は器具側も灯具として重要な役割をしていて、ランプを安定的に点灯するためには必須です。一方、LEDは半導体チップが発光する方式のため、管の形をとる必要はありませんし、適切な電圧や電流も蛍光灯とは異なります」

――差し替えれば使えると謳っている製品もありますよね。

「当社ではそのやり方はおすすめしていませんし、そういった製品も説明書には安定器の撤去を求める文章が記載されている場合も多いです。当社の直管型LEDランプでは、そもそも蛍光灯器具に差し込めないようプラグ形状を変更しています」

――そこまで厳格に運用される理由は。

「発煙や発火などの事故につながるリスクがあるからです。蛍光灯は管内の水銀ガスへ電子をぶつけて発光させるため強い電圧・電流を必要としますが、LEDはどちらかというと繊細なコントロールが求められる製品です。そこに従来の強い力で電気を流してしまうと故障や発熱の原因となります。LEDライトに交換したのに思ったよりも寿命が早く来てしまった事例では、器具交換が適切になされていないケースも多いです」

「加えて、蛍光灯器具は耐用年数を10年に定めていますが、2030年使い続けている現場も多くあります。その状態でLEDランプだけ新しくしてしまうと、より故障や事故のリスクが高まる懸念があります」

――蛍光灯器具の耐用年数は10年だったのですか。

「使えるから使ってしまっている現場も多いですが、実は内部の安定器や配線が劣化していたり、塵や埃が溜まっていたり、安全とは言えない状況でお使いのユーザー様も多いです。古い器具をお使いであることが理由で発煙・発火に至ったケースも報告されています。当社は蛍光ランプの生産終了に先駆け、2019年に蛍光灯器具の生産を終了しています。それ以前から供給量を絞ってきたので、現在、市場で使用されている当社の蛍光灯器具は耐用年数を超えたものや近いものが多いです。当社としてはランプと器具をまるごと交換いただくのをオススメしています」

――だから、工事が必要になる。

「そうです。器具交換も行おうと思うと、電気工事士による工事が必須です。ところが、建設業界は2024年問題などで働き方が見直された影響もあり、労働力がひっ迫していることが問題の本質です」

■器具形状見直し省施工化

――課題がある中で、パナソニックさんとしてはどう対応される。

「施工時間や作業負担の短縮・軽減に貢献する製品群を『ハヤワザ リニューアル』として提案しています。ハヤワザ リニューアルには照明器具だけでなく、電気工事に使用する設備や空調機器などもラインナップしています。照明器具で言えば、一体型LEDベースライト『iDシリーズ』のリニューアル専用器具本体があります。既設吊りボルトの長さ調整が不要な製品で、施工時間を最大55%削減することが可能です」

――長さ調整が不要になるとなぜ省施工につながる。

LED化の際、蛍光灯との器具の厚みの違いが問題となるケースがあります。一般的にLED器具の方が薄いことが多く、現場でボルトの継ぎ足しや交換が必要になります。天井裏で調整する必要があるため、手間と時間がかかっていました。当社のリニューアル専用器具は、本体の厚みを蛍光灯器具と同等とすることで、ボルトの調整を不要とし現場の省力化に寄与します」

――最後にPRしたいことなどがあればお願いします。

「当社HPではLED化に役立つ情報やハヤワザ リニューアル製品をまとめた特設ページなどを用意しています。また、来年にはさらに現場の省力化に寄与するソリューションも提案予定です。ぜひ、最新の情報や製品を知っていただき、現場の効率化に活用いただきたいです。まだまだ課題も多く『切れてから動く』では間に合わないケースが出てくるかもしれません。早めに計画を立てて、安全に、そして快適な空間づくりにつながるLED化を進めていただければと思います」

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一体型LEDベースライト『iDシリーズ』リニューアル専用器具本体の直付型。蛍光灯からLEDにリニューアルすることで約60%省エネに。山中課長によると「人材獲得に向けオフィスを見直す動きが活発化している。空間演出にLED照明を活用したいニーズも高まっている」という。