インタビュー
ハイオス 代表取締役社長 戸津 勝行 氏
- 投稿日時
- 2025/09/30 13:15
- 更新日時
- 2025/10/01 09:42
産業用電動ドライバーの先駆者、55周年迎える
1970年、世界初の電流制御による精密な デジタル式 トルクコントロールが可能な産業用電動ドライバーの開発、 さらにトルク制御式バッテリータイプを含むオートクラッチ式ドライバーやオートクラッチ式ドライバーやトルク計測器、トツねじ、トツプラねじ、インタトルクなど、「ねじ締め工程」のパイオニアメーカーとして業界を牽引してきたハイオス。創立以来、50 数年間に渡り総発売元の三菱商事に支えられ、現在は自社体制で事業展開している 同社の戸津社長に、これまでの歩みとこれからについて聞いた。

――創立55周年を迎えました。
「設立当初から製品開発にあたっては、使いやすさと性能の両立、そして環境への配慮を心がけてきました。そして時代がデジタル化していくなかで、自動化、DX化への対応に注力してきました。その全ての要素が詰まったものが、現在の当社の製品ラインナップになります。とはいえ集大成ではなく、ここにきてようやく『基礎』が固まった、という認識であり、これからがさらなる飛躍のステージになると考えています」
――振り返ると山あり谷ありの半世紀でした。
「当社の電動ドライバーが精工舎(現セイコー)、ソニーを皮切りに任天堂、松下電器(現パナソニック)など大手企業に続々と採用され、面白いように製品が売れた時期がしばらく続きました。しかし、市場で一定のプレゼンスを得ると、ほどなくして大手メーカー数社が市場に参入し、さらに海外ではコピー製品も出回るようになりました。その中には当社の部品を流用したものや設計までそっくりな製品もあり、大手ならではの販売力を背景に次々と市場へ投入してきました。」

世界初の産業用電動ドライバーM型
――そこで役に立ったのが特許ですね。
「当社のような中小企業が身を守るには、知的財産しかありません。気づけば特許申請は国内外で300件、知的所有権は1500件にも達しました。その大半はドライバー、ねじ関連のものになりますが、なかには日常生活で役立つユニークなアイデアも含まれており、思いついたらすぐに出願するようにしてきました」
――それでも海外では貴社ドライバーに似せたコピー品まで出回っています。
「海外のコピー品のなかには、外箱から本体に至るまで当社のロゴを模したものも存在しました。ただし品質や性能は当社製品と比較して大きく劣ります。模倣されるほど海外で認知度が高まったとも言えますが、ブランド価値を守るためにも知的財産の保護が不可欠であると改めて実感しました」
■グローバル需要が伸長
――近年では海外メーカーからの受注も増えていますね。
「かつては国内メーカーや、その海外生産拠点が中心でしたが、最近では自動車メーカーをはじめ、航空機メーカー、防衛関連企業など海外の名だたる企業から受注や問い合わせを頂くことが特に増えています。ですから外需比率は年々増加傾向にあります」
――外需比率が増えた理由は。
「昨今、作り手の責任が大きく問われる時代になっています。海外ではそれが特に顕著で、訴訟を起こされて数百億円の賠償金、といったケースも珍しくありません。たかがねじ、ではなく、ねじ一本が業績や会社の命運を左右しかねないのです。リコールでの莫大な出費を考えれば、多少のコスト増はあれど、より精度が高いねじ締めとトレーサビリティもしっかり管理できる当社のドライバーが選ばれているのだと思います」
――国内でも貴社のねじ締めソリューションを導入する企業が増加しています。
「国内のモノづくり企業の多くは無駄を無くし、生産性をいかに高めるか、という点にフォーカスしています。その点において、当社のドライバーを採用されたメーカー様は、いずれも歩留まりの向上やラインの停止時間の短縮、といった目に見えて分かる成果をあげています」
「特に当社のインタトルク(ヘクサロビュラ型を改良したねじ。嵌合性、直進安定性に優れる)を自動化ラインに採用したメーカーでは、ドライバービットをいつ交換したか分からないほど長持ちしている、との報告もあります。以前は数日に1度はビット交換のためにラインを止めていたと聞きますから、生産性を大きく向上させているのが分かります」

自動化に最適なインタトルク
――今後についてお聞かせください。
「グローバルで当社ドライバーが採用されていますので、現在は世界中の誰もがすぐに使えるような取り組みも進めています。複雑さを排し、シンプルに。世界中の誰もが直感的に理解できる簡単なものにしていきます。」
「これからは作るだけではなく、作ったものをいかにリユース、リサイクルしていくかが問われる時代です。取り外し可能で、部品を何度でも交換し再利用を可能にするのがねじです。ねじは地球に優しく循環型社会に貢献できるパーツとも言えるでしょう。当社では自動化や省力化、デジタル化への対応はもちろん、『締めやすく外しやすいねじ』の開発にも注力していきます」
尽きることのない「開発意欲」
連日の猛暑が続いた今夏、戸津社長は連日研究室に引き篭もる毎日を過ごしていたという。「もはや趣味みたいなものだから」と、誰も出社していない土日も独りで黙々とドライバー・ねじの研究・開発に明け暮れていたそう。長年培った情熱が今も変わることなく、「新しいアイデアを次々と浮かび上がる」という戸津社長。今後、さらなる革新的なねじ締めソリューションの誕生も期待できそうだ。
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)