インタビュー
伊東電機 代表取締役社長 伊東 徹弥 氏
- 投稿日時
- 2025/09/29 09:14
- 更新日時
- 2025/09/29 09:17
ピッキング工程の自動化にMDR式マテハン活用
物流現場の自動化の障壁となっているピースピッキング工程。近年、自律走行式カートやアーム型ロボットを活用した自動化ソリューションが各所で見られるようになったが、独自のコンベヤ駆動用モーターローラ「MDR」に強みを持つ伊東電機は、異なるアプローチで自動化して見せた。同社・代表取締役社長の伊東徹弥氏にその狙いとMDR式マテハンの可能性を聞いた。

――今回展の出展内容を教えてください。
「当社のコア技術であるコンベヤ駆動用モーターローラ『MDR』を根幹とした新しいピッキングシステム『RevoPick』を提案しています。人手で行われることがほとんどのピースピッキング作業の自動化を目指したもので、入荷した商品をケースから取り出し、重なりをばらして整列させ、バーコードスキャンまでを連続的に行います。その後、同一商品のみを一時的にバッファし、お客様からのオーダーに応じて必要な商品を自動で集品トレイに投入する仕組みです。ピッキング工程は自律走行式カートやアーム型ロボットを使った自動化が進められていますが、実はMDR式マテハンの方が大きなメリットがあります」
――具体的にはどこに優位性がありますか。
「まず処理能力の高さです。アーム型ロボットは『認識して、掴んで、移動して、戻る』という一連の動作を繰り返しますが、当社のMDR式マテハンは商品を連続的に流しながら仕分けるため、サイクルタイムが大幅に短縮されます。また、ロボットは自身の往復動作にエネルギーを使いますが、我々のシステムは基本的に一方向に流すだけなので消費電力も抑えられます。設置スペースに関しても、安全柵なども考慮に入れるとコスト面、作業性の面に優位性があります」
――使用されている製品や技術の特徴について教えてください。
「RevoPickは、機械はその場にとどまり、小さな動きで荷物だけが少ないエネルギーで移動する『究極の静止型』とも言えるMDR式マテハンです。コンテナ傾けモジュールなどを使って入荷コンテナから商品をいっぺんに取り出し、独自開発の衝撃吸収ローラを搭載した『FNR(フレキシブル・ノイズレス・ローラ)』でバラします。FNRは、ローラを分散駆動させることで商品を揺らしながら搬送でき、少しずつ優しく商品の山を崩すことができます。ここでしっかり商品を一つずつ整列させることで、後工程のスキャナの読み取り精度を安定化できます。ピッキングの要となるオーダー集品機能では、バッファエリア前に仕分けされた商品が自動で補充され、オーダーに応じて集品用のトレイにコンベヤから直接投入します」
オーダー集品機能。オーダーに応じて、コンベヤから商品がコンテナに自動投入される
――どういった現場での活用を想定されますか。
「もともと、無人コンビニやスーパーのバックヤードでも設置できるシステムとして企画しました。例えば、顧客の好みに合わせた「ミールキット」を自動で準備するといった活用も想像できます。こうした小口・多品種のピッキング工程は人の好みが多様化する中で、増えていく可能性があります。一方で、人手不足も深刻なため省人化する必要があります。当社の製品は、それぞれの機能がモジュールとなっているため、現場のレイアウトや要求に合わせて、最適な自動化ラインを提案できます」
■自動化=ロボットの固定観念を打ち壊す
――来場者の反応はいかがですか。
「会場の入り口に近かったこともあり、多くの方に足を止めていただき、常に人だかりがあるほどの盛況でした。既に物流の自動化に取り組まれているお客様も多く、MDR式マテハンの良さや可能性を改めて感じていただける提案になったのではないかと感じています」
――市場環境についてどう見ていますか。
「建設費の高騰で新設倉庫が建ちにくい状況ですが、物流量はむしろ増加傾向です。日本ロジスティクスシステム協会の調査でも作業員不足率は年々上昇し、2024年は過去最高水準を記録しました。最低賃金が上がる中で人材確保も難しく、『人に依存しない仕組みづくり』がますます重要になっています」
――やはり人手不足ですか。
「人手不足はマテハンの導入企業に限ったことだけでなく、自動化システムを構築する側にも言えることです。ロボットでシステムを構築しようとすると、ティーチングやメンテナンス、センサー調整といった専門知識を持つエンジニアの介在が必須です。ちょっとしたシステム変更にかなりの時間がかかっているといった話も耳にします。MDR式マテハンはロボットほどの専門的な知識はいりません。自動化=ロボットと飛びつくのではなく、少し視野を広げるだけで、人材不足やコスト不足に陥らないスムーズな現場改革が可能になると思います」
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
「これだけ様々なマテハン機器が揃っている物流業界からしっかりと自動化に取り組んでいくことで、自動化が難しく人手が不可欠な業界に人的リソースを振り向けることが可能になると思います。社会全体の発展のためにも、MDR式マテハンを使って自動化への一歩を踏み出していただきたいです」
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)