インタビュー
バイストロニックジャパン 代表取締役 宮島 弘之 氏
- 投稿日時
- 2025/07/01 13:40
- 更新日時
- 2025/07/01 13:44
ゲームチェンジする30kWファイバーレーザー加工機
MF-TOKYO[プレス・板金・フォーミング展]に毎回出展
板金加工業界をリードし、とりわけファイバーレーザー加工機とスマートファクトリーの構築に強いスイスBystronic AG(社員3268人、2024年末)。2016年に設立したその日本法人を訪ねた。日本での知名度は必ずしも高くはないが、MF-TOKYOに毎回出展している。

お客様を連れて全国のユーザー工場を飛び回るという宮島弘之社長
――欧州の加工機は加工スピードや使いやすさが優れていると聞きます。
「バイストロニックに入社してあらためて感じたのは、日本のお客様のニーズは適切だろうかということ。『この機能がないとうちの作業者は使えない』『これくらいの値段でないと導入できない』等々、よくうかがいます。一方で生産性や誰もが扱いやすい操作性についてはあまり主張されない。ところがスイスやドイツの機械はシンプルな操作性に重きをおいている。その差を常々感じます。日本では以前のものと同じNCで同じような使い方が求められることが多々あります。ガラケーからスマホくらい加工機は進化していても、ガラケーのままでいいと。ところがヨーロッパのメーカーは、いいと思った機能をとことん突き進めます。やはり生産性をよくして効率を上げる。そのためにはオペレーターを選ばない次世代のユーザーフレンドリーでなければならない。そこに力をとことん注ぎます」
「スイスの工場作業者の時給は、ネット検索ですが、日本の3倍くらいです。その条件で世界の競合と戦っていくには最新の機械が必須となります。同じものをいかに短時間で仕上げるか。試し曲げの端材を少なくして1回できちんと製品をつくれるか。しかも少ない電気代、ガス代で、となります」
――サービス面でも違いはありますか。
「サービスに関しても日欧で考え方に大きな違いがあります。日本のお客様をエンジニアが訪問するのにいくら近くても30分、1時間はかかります。でもヨーロッパのお客様は30分、1時間あれば機械を自分たちで復旧しよう、となります。はじめから、ユーザー様自らが復旧しやすいような機械のつくり方になっているからです」
――MF-TOKYOに対する力の入れ具合は。
「当社は小規模の事務所、ショールームしかありませんが、自信をもって見せられるような商品のみ扱っています。今は、1社でも多くのお客様に当社を知っていただくために、MF-TOKYO出展に力を注ぐべく、毎回出展しています。MF展については私は以前の会社で企画段階から携わってきました。シートメタルに特化した展示会はドイツのユーロブレッヒ、アメリカのファブテック等があります。そんな国際見本市を日本でも開催しようと始めたのがMF展です。世界での認知度も上がり、板金業界のお客様が必ず訪問するような展示会になってきています」
――MF-TOKYOに出展されるいち押し製品は。
「1つは出力30キロワットのファイバーレーザー加工機『ByCut Star Fiber 3015 30kW』で、前回JIMTOFで初披露したものです。ファイバーレーザーは高出力化が進んでいますが、24時間365日連続で使えるかというと難しい。ハイパワーになればなるほど、機械自体を壊していくスピードも速くなるからです。世の中で30㌔ワットを超える加工機がありますが、我々がいま30キロワットで止めている理由は、テストをクリアし24時間365日連続で使えると判断できたものがその出力だからです。それに搭載しているのがミックスガスという技術です。ベースとなる窒素の中に酸素を少しだけ混ぜます。これにより中厚板の切断速度が劇的に変わります。たとえば軟鋼12㍉の板厚なら切断速度12.2m/分と弊社4キロワットCO2レーザーにおいて、軟鋼1.0mmの板厚を切る(9.5m/分)よりも高速で切ることができます。CO2
レーザーからファイバーレーザーに置き換わった時に薄板板金加工において、ゲームチェンジャーだと言われましたが、いま中厚板加工において、同じことが起きています。ミックスガス技術は一部の日本のお客様に使っていただいており、切断現場は激変しています。想像を超える生産性によって、さらなる短納期、コストダウンに大きく貢献します。MF-TOKYOの会場で、ぜひともご体感ください」
「もう1つは加圧能力80トン、1500mm幅の小型のプレスブレーキ『ByBend Star 80/1530』に小型の脱着式ロボットMBCを付けて出品します。日本のお客様はどうしても工場スペースがネックになります。移動用ローラーの付いたこのロボットは人が運んで脱着が簡単にできます。しかもプレスブレーキとまったく同じ幅なのでプレスブレーキを設置できるスペースがあれば、その手前に置くことができます。昼間に邪魔になるようでしたら、その間だけ取り外すことも可能です。で、夕方5時過ぎにロボットを繋いで自動化する。限られたスペースでの曲げの自動化が可能です」
ByCut Star Fiber 3015 30kW
(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)