インタビュー
ダイヘン 溶接・接合事業部長 上山 智之 常務執行役員
- 投稿日時
- 2025/06/25 09:54
- 更新日時
- 2025/06/25 09:58
新接合技術の製品化に注力、500Aの半自動溶接機の集約も
昨年、溶接電流350Aの主力溶接機5機種を統合したハイエンド半自動溶接機「Welbee The Short Arc(ウェルビー ザ・ショートアーク)」を、今年5月に500キロ可搬の新型AMRとロングリーチで可搬質量8キロの協働ロボットと、新製品を意欲的に上市したダイヘン。EVの逆風やトランプ関税が市場を揺さぶる中、新たな接合の領域にも果敢に挑む。4月から溶接・接合事業部長に就任した上山智之常務執行役員に話を聞いた。

――二度目の溶接・接合事業部長ですね。
「前回は2015年~20年に溶接事業部長を務めました。そこから本社の技術開発本部長を経て、昨年度3月までは欧州事業統括兼OTC DAIHEN EUROPE GmbH会長として独・ミュンヘンにおりました。その間に溶接事業は生産から技術開発、営業も含めて大きく変革し、事業部名に接合も加わり、新領域の技術開発に力を入れています。当社のアーク溶接は世界でもトップレベル。そこに留まらず脱皮し、新たなフィールドに挑みます」
「高圧力をかけながら電力を流し、強度特性を変えずに低温で金属同士を接合する『固相抵抗スポット接合技術(CSJ)』やアーク溶接を応用した金属積層造形(WAAM)のシステムなど新技術に打って出ています。再登板となりますが私も新しいことに挑戦する心構えです」
――昨年発売した「ウェルビー ザ・ショートアーク」の売行きは。
「順調に目標達成しており、昨年度の溶接事業のプラスの要因です。販売実績も上がっており、9月の発売から半年で数千台が販売され、想定通り。今年はさらに伸ばしていきます。リーズナブルな価格でありながら、インバータ機の方が性能も上がり、消費電力やCO2排出量もサイリスタ機に比べ抑制できます。サイリスタ機からの置き換えも進んでいます」
「次は溶接電流500A溶接機の展開を据えていますが、厚板向けでは用途別に仕様が大きく分かれます。造船や建築土木などでは耐候性・防滴性、そして可搬性を持たせたコンパクトな500A溶接機が必要。一方、工場でロボットや自動機などに組み合わせ長時間稼働するラインでは使用率100%で、夏場の工場温度にも耐えられる高い冷却能力を備えた大型の溶接機とします。これら屋内・屋外用の2仕様に集約することを考えています」
――新接合における製品開発は。
「EVの車体軽量化をターゲットに、鉄とアルミの異材接合に向くCSJの製品化を急ぎたいですね。製品への実装に向けては高いハードルはありますが早期実現に取り組みます」
――FA・ロボット事業も旺盛な製品展開をされています。
「初めてロボットを導入するお客様には、ダイレクトティーチができる協働ロボットに興味を持っていただいています。トップクラスのロングリーチをもつVC8を発売し、さらに使いやすく、今まで展開できていないターゲットにも届けられると期待しています。小型化しつつ500㌔可搬にした新型AMRは今年度に国内外で予定されている各種展示会に出展しPRしていきます」
――今年度の市場の見通しは。
「造船は27年度まで受注確定しており堅調。建築鉄骨は厳しさが残っている状況で、去年並みになる声もあるが、後半は一部で明るい兆しを見込む声も聞こえます。自動車は関税などの不確定要素を含め世界的に先行きが見通しにくい中、中国EVメーカーは積極的に設備投資している様子も見られます。総じて設備投資は抑制気味になると見込みます」
――生産拠点の集約や拡充の予定は。
「地政学的なリスクを考慮しコスト面だけでなく、今ある中国やタイ、ヨーロッパの工場で何を作るのがベストか見直しの時期にあります。現在、FA・ロボットの工場はほぼ100%近い自動化率ですが、溶接機も同じ方向で進めていきます。その場合どこに工場を置くかが検討事項ですね。既存の工場だけでなく世界中の国を対象に最適地を考えていきたい」
(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)