インタビュー
東台精機 海外営業一部 副部長 顔 聖峯 氏
- 投稿日時
- 2025/05/14 15:41
- 更新日時
- 2025/05/14 15:45
他社に無い機種とカスタム力で勝負
日本人技術者の吉井良三氏によって設立された台湾工作機械大手、東台精機グループ。日本との結びつきも深く、かつては日系大手工作機械メーカーのOEM生産や、技術連携を盛んに行っていた。現在は6つの機械ブランドを展開し、アジアのみならず、グローバル展開を進めている。同社の海外営業を務める顔聖峯副部長に直近の受注動向を語ってもらった。

――受注環境はいかかでしょうか。
「近年、中国における設備投資がいまひとつ奮わなかったこともあり、いまひとつ伸び悩む展開が続いていましたが、昨年中盤あたりからブランドによってはかなり好調なセールスを記録するなど、回復傾向にありました。ですが、トランプ政権になってから多くのクライアントが様子見の状態になり、先行きは見通しづらい状況です」
――好調なブランドとは。
「当社にはHONORというブランドがあるのですが、ここのターニングセンタが非常に好調でした。特に大型のマシンがエネルギー関連を中心に良く売れました。また航空機需要の回復により、ボーイングやエアバスのサプライヤーさん向けにAPECブランドの5軸マシニングセンタの注文を数多く頂きました」
HONORの大型ターニングセンタ
――APECブランドの5軸マシニングセンタは、昨年のJIMTOF2024でも出展されていました。
「JIMTOFで出展したモデルはAPECの中でも一番小さい機械です。売れ筋はもっと大きいワークを削れる門形やガントリー式のマシニングセンタになります」
――半導体向けの需要はいかがでしょうか。
「半導体製造装置向けに小型の高速複合機がセールスを伸ばしていますが、半導体の市場規模や成長率を鑑みると、まだまだ食い込む余地は多分にあると考えています」
――現在のアジア市場及びグローバル市場をどう捉えていますか。
「アジア圏に関しては中国、ベトナムなどにおける関税の問題がありますし、グローバル市場においてもなかなか思うようにビジネスが進まないもどかしさを感じています。おそらくこれは他の工作機械メーカーさんも一緒なのではないでしょうか。ただインド市場は今後も成長が期待できるのではないかと見ています。当社より価格の安いメーカーが選ばれがちな現状ですが、欧州製でも中国製でも日本製でもない、性能面と価格の強みが当社の機械にはあるので、うまくはまれば良いビジネスになるのではないかと感じています」
APECの門形5軸マシニングセンタ
――貴社の競合となるとどのあたりのメーカーになるのでしょうか。
「価格的には同じ台湾や韓国の工作機械メーカーになりますが、機種によっては日系や欧州の工作機械メーカーもライバルになります。それこそ先ほどお話ししたAPECの5軸マシニングセンタの納入先は、ハームレさんや牧野フライス製作所さんからも見積りを取ったと聞いていますが、最終的に選ばれたのはウチでした。製造したいワークに最適な性能と機械価格のバランスが評価されて採用されたのではないでしょうか」
――貴社のストロングポイントは。
単なる機械販売に留まらず、加工課題に合わせた顧客へのアプローチと、ニーズに合わせたカスタマイズ力が当社の強みです。機械の部品構成から治具、ソフトウェアに至るまで柔軟に対応できる体制が整っており、オーダーメイドの機械を作り上げて顧客に提供しています。また、機械を設置してすぐに加工開始できるターンキー型のスタイルも高く評価されています。
昨今は自動化やDXなどのニーズも取り込み、加工だけではない現場での運用効率まで踏み込んだ提案ができます。また台湾本社や各地の現地法人に顧客を招いて実機の見学や加工実演、操作トレーニングも行います」
――日本にも法人をお持ちです。日本国内でのセールスはいかがでしょうか。
「日本国内には無い機械、という点で、大型のターニングセンタには根強い人気があります。また5軸マシニングセンタも評判が良く、徐々に売上を伸ばしています。特に初めて導入されるお客様には、導入後の操作トレーニングや保守についてもしっかりとバックアップさせて頂いております」
(日本物流新聞2025年5月15日号掲載)