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インタビュー

ナカニシ 機工事業部 機工設計部 坪子 裕一 氏/事業企画部 関 ジョン 英雄 氏

投稿日時
2025/04/11 12:59
更新日時
2025/04/11 13:09

小径・高速・高精度なモータースピンドル

歯科治療向け回転切削器具シェアトップを誇るナカニシは、独自の高速回転技術を武器に高速・高精度なモータースピンドルも手掛ける。特に小径分野では大きなシェアを持ち、指名買いされるほどだという。近年、クーラントスルータイプやロボットへの適用など、新領域の開拓にも力を入れている。同社の取り組みについて機工事業部機工設計部の坪子裕一氏と同事業部事業企画部の関ジョン英雄氏に聞いた。(以下、敬称略)

【写真左】坪子裕一氏、【写真右】関ジョン英雄氏

クーラントスルーで生産性2倍超

——小径・高速・高精度なモータースピンドルに強みがあります。

坪子 当社は1930年に歯科治療用の回転切削器具「ハンドピース」製造のために創業しました。現在、同分野では世界トップシェアを誇っています。工業用機器分野には1982年に参入し、歯科用回転機器の技術を応用して一般産業界への製品展開を進めています。歯科技工用の製品を改良したバリ取り用のエアー駆動ハンドツールの製造から始まり、市場のニーズを受けて機械へ装着するスピンドルを開発しました。当時、小さなワークを高精度、高効率で加工できる小径スピンドルは市場にあまりなく、当社のハンドピースでも数㍉のワークを精度よく削りたいという要求があったことから、回転技術など独自技術を応用して作り始めたのがきっかけです。

——強みのひとつである内製化率90%超の源流でもあるわけですね。

坪子 そうです。ほぼ全ての部品を国内工場で内製化することで、部品単体ごとやアッセンブリー時のばらつきを抑え、振れ精度1㍃メートル以下を実現しています。また、当社は機構部品といったメカニカルな部分だけでなく、電動部品、コントローラーといった制御系も含め、ほぼ全てを社内で設計しています。開発・製造コストを抑えられるだけでなく、製品のコンパクト化などがしやすいのも特徴です。

——売れ筋の製品は。

 スピンドル径40㍉の「E4000シリーズ」と多彩なラインナップが特徴の「E3000シリーズ」です。いずれも小径・高速・高精度が特徴のシリーズですが、E4000は最大1200㍗、トルクはE3000と比較して3倍以上とコンパクトながら高性能です。当社がターゲットとしている小物部品を加工する機械は加工スペースが限られており、スピンドルもコンパクトでなければなりません。一方で、コンパクトにしたが故に回転速度が落ちてしまうと、工具寿命に悪影響を与えます。工具径1㍉以下の小径工具は回転数が工具寿命と密接に関わっているので、ユーザー様としても気になるところ。高い回転数を確保できる当社の製品を指名いただくケースも多々あります。

■コラボで販路拡大

——クーラントスルータイプのスピンドルやロボット向けの取り組みなど、新領域への訴求も強めています。

坪子 昨年のJIMTOFで発表した、クーラントスルーモータースピンドル「CTM—4020」は、小径のオイルホール付きドリル向けの製品です。小径工具はオイルホールも小さく、高圧でないと適切にクーラントが吐出されません。本製品は最大30MPaの高圧クーラントに対応しており、小径深穴加工の加工時間の短縮、工具の長寿命化、高精度化などのメリットがあります。

——具体的にはどのような効果がある。

坪子 SUS303に穴径0・5㍉、深さ6㍉の貫通穴をあける加工テストでは、工具メーカーの推奨切削条件の送り速度が毎分100㍉であったのに対し、毎分200㍉と2倍の速度で加工を実現しています。2倍以上の生産効率を実現している事例も多々あり、今後活用が広がっていくと期待している分野です。

——JIMTOF後の反響は。

 クーラントスルーで深穴加工をすることで、大幅に効率が高まることは多くの方に理解いただけたと感じています。一方で、高圧ポンプを導入する必要があったり、システム全体を高圧対応仕様にする必要があったり、普及にはもうしばらく時間がかかりそうだと見ています。当社としては、工具メーカー様やポンプメーカー様などと連携しながら、拡販に努めていきます。

——今後の展開について。

 スピンドルは単体で買ってくださいといってもなかなか売れません。近年、引き合いが増えているバリ取り向けのロボットシステムでも工具メーカー様やSIer様と一緒になって提案を広げています。実は、昨年のJIMTOFでは約30もの企業とコラボレーション展示をしていました。今後も、様々な企業とタッグを組みながら、ユーザー様が求めるニーズにしっかりと対応していきたいと思います。

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クーラントスルーモータースピンドル「CTM—4020」。最大30MPaに対応し、小径のオイルホール付き工具でも適切にクーラントを排出する


MECT2025で新製品


10月22日よりポートメッセなごやで開催される工作機械見本市「MECT2025」では、小型工作機械に向けてコンパクトかつ高トルクな新スピンドルを出展予定。限られた加工スペースにも導入しやすく、加工時間の短縮にもつながる製品だという。