インタビュー
中村留精密工業、新商品ラッシュの背景は?
- 投稿日時
- 2021/12/10 13:38
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
複合加工機メーカー、中村留精密工業が近年、新商品・新技術を連発している。それも機械技術、ソフトウェア技術、自動化技術それぞれの分野で業界パイオニア的な技術成果を生んでおり、異彩を放っているといえそうだ。発表の場となった展示会メカトロテックジャパン2021で、中村匠吾専務に話を聞いた。
■切削も技術進化の余地は大きい
―久々の大型リアル展示会。開催を待ちに待ったという感じですね。
はい。新商品の数が多く、じっくり見ていただいています。コロナ禍以降、当社ではWEB展に注力していて、いい意味で手作り感が好評だったんですよ。女性社員がMCを担当して明るく的確にご説明したり…。そこで今回も、出展内容の生配信を実施しました。リアルのよさを久々感じながら、さらにWEBも活用したハイブリッドスタイルでリアルとWEB双方の利点を重ねています。
―出展物も、自動化システムからIoT的なもの、切削技術の新提案まで多層的に揃っていますね。
このMECTは、機械とソフトとオートメーションのそれぞれの分野の成果発表の場になっています。一番新しい目玉技術は、複合加工機の内部に据え付けた小型搬送装置「フレックスアーム(商品名)」。今夏初公開したもので、ワークの着脱とともに爪の交換も自動でできるのがミソです。ロボットアームが機外から伸びてきて着脱等を行う仕組みは多く提案されていますが、フレックスアームだと内部で完結できるため、オペレーターが機械との接近性を保てて、段取りもしやすい。
―ストッカーとロボットをワンタッチでつなぐシステムも注目されます。
プラグワンと呼ぶシステムで、ロボットの架台とストッカーの配線・配管を同時ワンアクションで着脱でき、工場内の複数の機械で利用できます。言い換えれば、お手持ちの機械を簡単にロボット仕様にできるんです。
―他方IoT関係の提案もされていますし、切削技術でも新しい見どころが揃っています。最近はDXや自動化、あるいは切削の前後工程の集約化といった提案が目立つ反面、切削技術そのものをアピールした展示は業界で少なく残念でしたが。
いやいや、個人的な考えを言いますと、切削技術は伸びる余地が大いにあると感じています。
―一部でいわれるような切削技術の成熟化はないと?
ないです。伸びしろは大いに残されています。
■社員の自発性が推進力
―貴社展示内容で言えば「ビビリケア」や「揺動切削」が削りの新しい技術ですね。
前者は主軸の回転数を周期的に変動させるもので、共振周波数を避けてビビリを抑える仕組みです。一方、揺動切削は工具を振動させて切粉の絡みをなくし、かつ排出性を高める仕組み。おかげさまでこの機能をつけた機種はどんどん増えています。小型自動盤で普及し大型機への対応はあまり進んでいませんでしたが、当社が先行的に大型機への搭載を果たしました。剛性の足りない機械には不向きなど、機械の信頼性も問われる切削法です。
―ほかにもギアスカイビングなどの技術提案をされています。数多くの新提案は、それだけ開発陣の意欲的な取り組みがあったからこそなんでしょうね。
その通りです。トップダウンで取り組むことも当然多いけれど、それよりも技術者や現場の社員一人ひとりがディスカッションを重ねながら自発的にチャレンジした成果です。引き続き私どもの強みとしたいですね。
―最後に今後の目標と課題をお聞かせください。
課題から言いますと、足下の業績は今上期(決算期3月)過去最高の受注を記録するなど好調ですが、世界を見渡せばシェアを取れていない国がまだまだあります。白山工場の強化も含め取り組んでいきます。
あと目標ですね。これはずばり、ターニングセンタの領域でトップカンパニーを確立することです。
―ありがとうございました。
(2021年11月10日号掲載)