インタビュー
京セラ ロボティクス事業部長 兼 大阪玉造事業所長 森田 隆三 氏
- 投稿日時
- 2025/03/21 16:47
- 更新日時
- 2025/03/21 16:51
ロボットの「できない」破るサブスクサービス
ロボット事業に参入した京セラが2023年に発表したのは、AIで協働ロボットを知能化するクラウドサービスだった。ワークが追加されたり環境が変わっても京セラが定額契約の範囲内でAI学習を行うため、社内に専門人材が不在でも導入後の変化にしなやかに対応できる。FAに特化したデータセット生成に強みがあり、同サービスを活用すれば3Dカメラが苦手な半透明な物体や光沢の強い部品も安価なカメラで認識し、バラ積みピッキングしたうえで向きも揃えて整列させられるという。森田隆三ロボティクス事業部長に話を聞いた。

ロボティクス事業部長 森田隆三氏。1983年三田工業(のちに京セラグループ入り)入社後、約15年の米国勤務を経て2010年に京セラドキュメントソリューションズの事業戦略本部長に。のちに新規事業の創出を目的とした組織が立ち上がるとそこへ参画し、21年から現職で新事業の指揮をとることに
――なぜロボット事業に。
「グループ全体で新規事業の創出を目指す中、AIによるロボットの知能化事業が候補に上りました。ロボット制御は京セラドキュメントソリューションズの複合機/プリンターの制御と技術的に近く、グループにはAIのスタートアップも。現場環境と学習用サンプルは社内工場に沢山眠っており、ピースが社内にあったんです。シーケンシャルな動きのロボットは普及が進む一方、そうでない分野のロボット活用は遅れているとの認識もありました」
――23年に京セラロボティックサービスをリリースしました。
「特徴はクラウドを使うサービス事業であること。契約はサブスクリプションで、ロボットは我々が提供するか既存のものを流用するか選べます。そこへAI搭載のエッジデバイスを後付けし、AI学習をクラウド上で行ったうえで、エッジで推論して自律的にロボットを動かします。導入先に専門家が不在でも我々がクラウド上で稼働を監視し、アップデートを行う仕組みです」
――クラウドベースの事業にした狙いは。
「ロボットやAIの専門家が不在の企業も使えるようにするには、この形しかないと。通常のロボットシステムはAI学習と動作設定を専門のエンジニアが担い、稼働後も対象物や環境が変われば再学習が必要です。経験豊富なパワーユーザーでなければ難しく(外部委託するにも)投資ハードルが高い。それをすべて我々が担うサービスが発想の原点でした」
「預かったワークを元にAIモデルの生成と保全を定額料金内で行います。今はFAに狙いを絞っており、学習を積み上げるほどFA業界の部品の認識能力が向上していきます。それでも認識が難しいワークが導入後に追加されれば、ワークを預かり追加料金なしでAIモデルの生成と保全を再び我々が行う。この形なら我々の手元にAI資産が蓄積され、AIモデルの生成工数をその都度お客様に負担いただく必要がありません」
――初期費用が安くなる。
「ロボットを別にすれば百数十万円で済みます。導入後のAI再学習やロボットティーチングを考えると運用コストも低いです。さらに2次元画像を分析してワークを一つずつ検出し、あとはアプローチの距離を算出できれば良いため市価20万円程度の安価な3Dカメラで高精度な認識が可能です。ハードが安価でデータは共通なので、多拠点にロボットを展開する場合はボリュームディスカウントが適います」
■微小部品をバラ積みピッキング
――どういう作業に向く。
「社内の最初の導入例は400種類もの部品を1つの加工機に投入するマシンテンディング。テンプレートマッチングで部品を1つずつ覚えさせるのは非現実的で、従来は加工中も人が張り付き自動化が遅れていました。強みが最も発揮できるのはバラ積みピッキングです。半透明や光沢のある部品など3Dカメラが苦手な物もバラ積み状態から認識して掴み、向きや裏表を判別して整列配膳できます。微小部品も扱えます」
――微小部品はどのように認識を。
「通常のカメラでは難しいですが、微小部品の認識に特化したAI測距カメラを京セラの研究開発部門が開発しました。1㍉までの物を認識できます。野菜など柔らかい物と硬い物を共通して掴めるハンドも開発中です。こうした今までロボットを使えなかった工程にこそ実は膨大なニーズがあり、従来の想定とは違う市場が作れると考えています」
――中小企業にも向きそうですが、引き合い状況は。
「我々もロボットを初めて導入するユーザーを強く意識していますが、現状の引き合いは大企業とそれ以外が半々。ただ今も、ロボットのファーストタイムユーザーの方がポテンシャルは大きいと見ています。引き合いの中身はバラ積みピッキングか、多品種の認識が必要な工程が多いです」
――FA以外への展開予定はありますか。
「今はFAでデータセットを積み上げる考えですが、将来はFA以外にも門戸を広げたい。多拠点展開が可能で扱う商品が共通のコンビニやスーパーマーケットは有望かもしれません。また対応ロボットメーカーは現状、テックマンロボット、オムロン、ユニバーサルロボットですがこれから対応製品を増やしていく予定。今後は協働ロボットのみならず産業ロボットへの対応も目指します」
AI測距カメラでM1.2(平径3㍉)のナットをバラ積みピッキングする様子
「すごい教材」を持つ塾のように
京セラロボティックサービスは認識力に優れ、従来の3Dカメラが苦手な半透明の物体や光沢のある部品、微小なパーツも認識できる。照明環境の変化にも強い。その理由を森田事業部長が塾に例えた。「塾の先生(AIモデル)が優秀かどうかは、我々もベンチマーク比較をしていないので断言できません。ただ使う教材とカリキュラム、すなわちデータセットとAI学習が我々のノウハウで、そのレベルがFA領域では非常に高い。それがアウトプット(認識力)にもつながります」
(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)