インタビュー
ダイフク オートモーティブ事業部 技術本部 林 信浩 本部長
- 投稿日時
- 2025/03/13 09:00
- 更新日時
- 2025/03/13 09:00
変化に強いクルマづくりへ
車体を運ぶ組立ライン向けAGV
変革の最中にある自動車産業。EV、あるいはHVの先々の需要がこれほど見通しづらい中では、まとまった投資が必要な生産ラインをどう構築するかは極めて悩ましい問題だ。だが生産ラインを後から柔軟に組み替えられるなら話は違う。ダイフクは6・5㌧のけん引と全方位の走行が可能な大型AGV「TRVS(トラヴィス)」を開発。自動車組立ラインに用いる車体を運ぶオーバヘッドタイプやフロアタイプのコンベヤからの置き換えを想定し、自動車メーカーは車種や台数の変動に強い組立ラインが構築できるようになる。オートモーティブ事業部技術本部 林信浩本部長に話を聞いた。

――自動車組立ライン向けの大型AGV「TRVS」を開発されました。
「従来の自動車組立ラインでは大きな台車にボディを載せ、台車の上に組立作業者も一緒に乗った状態で低速で搬送します。この台車が最大20台ほど連なり一定間隔で動くのです。動力は台車の下のフロアコンベヤでしたが、TRVSがこれに代わります。今までラインを止めて長期連休での工事が必須だったルート変更がQRコードの張り替えなど数日でできるようになり、柔軟性が圧倒的に高まります」
――全方位移動できる仕様にした狙いは。
「従来システムではラインがいわば『一筆書き』になり、現在はEVと内燃機関車(ICE)を同じラインで流し、バッテリーの取り付け工程をICEは素通りしてその先でエンジンを搭載するような混流生産が主流です。ただEVやICE、FCVなど多様な自動車を1つのラインに混流すると、非共通な工程のエリアにも搬送する必要がありライン長が間延びします。全方向に動くTRVSなら特殊な工程のみ分岐させ再び合流させるなど、合理的なライン構築が容易に実現可能になります。この自由度が最大の利点です」
――柔軟なラインを作りたいという要望が寄せられていたのですか。
「要望というより、今後の自動車産業を見据えた時にダイフクとして『必要になるはずだ』という視点で開発しました。生産方式を大きく変える製品なのですべてのラインが今すぐ置き換わるとは思っていません。とはいえ自動車メーカーさまも変革期の車づくりは大変、悩まれているはずなので、どこかのタイミングでこの設備が必要になると考えています。EVやFCVの台数が少ない現状においては、既存ラインの改造による混流生産が合理的です。しかし今後、対応が難しくなり、生産方式自体を変えなければ効率化できないフェイズが来るのではと感じています。それを可能にするのがTRVSです」
■自動車生産工程以外も
――TRVSはスキー板のような薄く細長い構造です。どのように最大6・5㌧もの台車とその上のボディを搬送しますか。
「台車中央に車輪があり、TRVSは片側に潜り込み台車全体をけん引します。単にけん引するのでは車輪がスリップするので、内蔵のバネで接地点の摩擦力を向上させました。6・5㌧のけん引能力は車体の重いEVを視野に入れており、一般的な乗用車ならすべてのボディサイズをファイナルライン(ほぼ完成車状態になる工程)まで搬送できます」
――導入費用はどうですか。フロアコンベヤよりは上がる方向に?
「仕様やレイアウトによって異なりますので、詳細はお問い合わせいただければと思います。柔軟さやライン長が短くなるなど費用対効果がありますし、従来のオーバヘッドタイプやフロアコンベヤとTRVSを組み合わせたライン構築も可能です。今までライン改造では迂回路を設ける大工事が必要な場合もありました。TRVSは改造も新設もかなり工期が縮まります。また万が一、1台が故障しても、複数台で運用していればリカバリーが効きます」
――車体搬送以外への活用も考えていますか。
「まずは自動車です。ただ将来的には2台が連携し鋼材を運ぶなど、様々な重量物搬送の提案も視野に入れています。自動車生産工程以外で巨大で重い搬送物は、車体に限らずニーズはあると考えています。また理論上は1つのシステムで100台程度まで制御可能です」
――夢が広がりますね。EV化は日本より海外で先行していますが、需要先として期待されるのは海外市場ですか。
「海外ももちろん期待できます。ただ付け加えておきたいのは、TRVSはEVに限った設備ではないこと。EVはあくまで自動車の選択肢のひとつに過ぎず、モデルやオプションが異なる車を混流生産する場合もTRVSによる分岐・合流は有効です。要するにEV化を含めたあらゆる可能性に対応するのがTRVSです」
「TRVS(トラヴィス)」が台車の下に潜り込み車体を搬送するイメージ
(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)