インタビュー
ダイヘン 取締役 専務執行役員 森本 慶樹 氏
- 投稿日時
- 2025/01/10 14:05
- 更新日時
- 2025/01/24 09:40
EV軽量化や脱炭素に対応、新技術の芽を育む年に
昨年、新たな中期経営計画のスタートを切ったダイヘン。『溶接機の決定版』と銘打ったハイエンド半自動溶接機「Welbee The Short Arc(ウェルビー ザ・ショートアーク)」や、高品質溶接をかなえる協働ロボットのロングリーチタイプなど革新的な製品を上市した。米ロボットSIerのM&Aを通して米市場の売上げ拡大を狙うなど、次年度への布石を生み出した。同社・森本慶樹専務に昨年の需要動向と次年度の見通しについて聞いた。
――昨年の国内の需要動向についてお聞かせください。
「溶接部門は造船が比較的好調でしたが、資材、エネルギー価格の高騰や働き方改革による人材不足の影響が深刻です。特に建築関係では工期が軒並み後ずれし、景況感は悪化しています」
――海外の需要動向は。
「調子がいいのはインドです。自動車部品メーカーに大量に溶接ロボットが入り、今後の成長にも期待がもてます。米も悪いなりに堅調に推移しましたが、中国やアジア、欧州は非常に良くない上、まだ底を打っていない。溶接機に対する設備投資は様子見です」
――FA・ロボット事業はいかがですか。
「売上げの7割以上が海外のFA・ロボット部門は、特に欧州の市況悪化や中国の建築問題の余波などで悪い影響を受けました」
――売上げなど数字的な面では。
「独・溶接機メーカーのローヒ社の売上を連結で入れたので、溶接部門は受注・売上ともに対前年度比20~25%増。加えて、好調なインドの子会社の連結対象を増やし、売上げが増加しました。国内なら対前年度比4、5%増です。造船の堅調さと、自動車メーカーの大口案件受注が、マイナス分をカバーしました。FA部門の受注は前年度比で若干プラス。売上的には受注の持ち越しが少なかったので対前年度比で落ち込みました」
――「スーパー標準機」の売れ行きは。
「昨年9月に発売した溶接電流350Aの半自動用溶接機『ウェルビー ザ・ショートアーク』は主力溶接機5機種を1台にまとめ、最高級デジタル機並みの溶接性能でありながらミドルレンジ機並みの価格と、サイリスタ機からインバータ機への置換えを促進させています。幅広い分野のお客様にすでに千台近く出荷し、非常に好調。このほか、サブマージアーク溶接機をデジタル化した新機種を40年ぶりに出しました。デジタル化により作業者の脱技能化に貢献し、三相の環境下でも使えるなど省エネ面でも画期的な製品です」
「FA・ロボット事業では従来機種比1・4倍のロングリーチタイプの協働ロボットをラインナップに加え、高い軌跡精度による高品質溶接やティーチングの容易さをアピールし着実に浸透させ、海外にも広げていく考えです」
――欧州に引き続き、米でもM&Aによる売上げ拡大を目指されます。
「昨年、米ロボットSIerのフォースデザイン社を買収しました。FA事業はロボット単体でなくシステムパッケージのニーズが多いので、今後も縁があればSIerを積極的にM&Aしていきます」
――東京と本社2社体制に。
「東京本社に最新展示場を備えました。首都圏にいる経営幹部層にアピールでき、意思決定スピードの向上に重要な役割を果たすと見ています」
――今年、新中計の2年目に突入します。どのような1年に。
「EV軽量化に向け、超ハイテン材の接合に最適な固相抵抗スポット接合システム(CSJ)の製品開発に力を入れます。ウェルビー ザ・ショートアークの溶接電流500A対応機種も検討しています。FA・ロボット部門ではEVのアルミバッテリーケースの溶接技術に磨きをかけながら、協働ロボットとAMRの新製品投入で、工場全体の自動化を推進します」
「省エネ性能の高いインバータ機の開発や、接合に限らずアーク溶接を応用した積層技術の金属3Dプリンター(WAAM)といった造形の新技術を世に出したい。昨年より環境は厳しいかもしれませんが、しっかりと売上げを確保しつつ、将来の事業の芽を育みたいです」
5機種を1機種に統合したハイエンド半自動溶接機「ウェルビー ザ・ショートアーク」の「売れ行きは非常に好調」(森本専務)と言う。
(日本物流新聞2025年1月10日号掲載)