インタビュー
明治機械製作所、エア両軸体制の新たな展開
- 投稿日時
- 2021/10/12 10:18
- 更新日時
- 2024/08/19 13:17
特注品受注比率の向上へ
コンプレッサとスプレーガンの両軸体制で歩み続けてきた明治機械製作所が新たな戦略を描こうとしている。食品、医療などの用途開発に絡む情報を積極的に収集し、自社の技術と紐付けて特注品受注比率を高めるというものだ。岡山工場では以前から一部工程の自動化を進めており、特注品対応への人員配置の比重を年々高めているところ。佐伯直泰社長は、「技術スタッフも入れた専門チームを東西に新設する予定」と話す。
「コンプレッサ市場はまさにレッドオーシャン」
そう話す山田康二営業部長は価格競争が厳しくなるなか、競合他社との差異化要素の一つとして現場環境に沿った提案を挙げた。工場のインフラ設備として不可欠な存在ながら、当たり前になりすぎている分、エアの需給バランスや最適な設置環境に配慮されずに導入されるケースも散見されるからだ。
山田康二営業部長
「コンプレッサの困りごとは、音、振動、熱に絞られる。だからといって、埃が溜まりやすい工場の片隅に置いたり、換気を考慮せずに囲ったり、屋内仕様を屋外に設置したりすれば、壊れやすくなる。気付きにくさで言えば、配管破損によるエア漏れもそう。現場に足を運ぶことで、メーカー独自の改善提案ができる」
現場に合った選択肢を増やすべく、今年5月に新たなラインナップとして、屋外仕様のスクリュコンプレッサ「ODS―11VA―C」を追加。さらに、今後のIoT需要を見込んで、遠隔監視(オプション)が可能な「MAS22VD―E」も発売した。
山田部長は、故障対応にも注意を払う。コンプレッサの故障は生産ラインの停止に直結するため、緊急時の顧客要求は一層厳しい。そこで明治機械製作所は、全国80社とサービス店網を敷くことで「現場に近いところから適宜急行できるようにしている」という。
「DUAL AIR PAX」は、危機管理、負担軽減などを目的に引き合いが続いている
レシプロコンプレッサに代表されるように、明治機械製作所は「堅牢性」を元々売りにしているが、製品サイドの具体的な備えとして、パッケージコンプレッサ「DUAL AIR PAX」を推す。レシプロコンプレッサ2台を上下に配置した構造で、片方が故障したときでも、最低限のエア供給は確保できるというものだ。
山田部長は、「週末忙しいカーショップやタイヤ販売店にも好評。エア消費量に応じて使い分けたり、主機を変更させて稼働負担を減らしたりと、危機管理以外の目的でも使える」とした。
■意外な反響
ハンドスプレーガンが意外なところで認知度を高めている。動画投稿サイト「YouTube」だ。試しに「スプレーガン」で検索すると、上位に明治機械製作所の製品が紹介されている。検索ワードに「自動車補修」「塗装」を加えれば、ヒット率はさらに高まる。
YouTuberがとくに薦めているのが取り回しの良さに定評がある「Finer―Force」。手の延長となる道具としてこだわり、独自の高微粒子化技術(MMT)により、最適化微粒子化性能を実現した。
美しさと使いやすさを追求した「Finer-Force」
流量コントロール性能や引金荷重の最適化に加えて、さらに「Force=力強く・ダイナミック」なデザインを採用した。佐伯社長は、販売数からも手応えを感じている。
「従来製品なら、キャンペーンが終われば大きく下がる。Forceは、1丁、2丁、多くて10丁とコンスタントに注文が入る。米国向けに開発した『Finer―Core』もそう。『減るかな』と思いながらも、一向に減らない。流通に在庫が残らない分、リアルな数字かもしれない」
佐伯社長にとって「Finer」の名前には感慨深い思いがある。20年以上前に、自動車補修で知名度を上げるきっかけとなった製品名だからだ。
「ハンドスプレーガンは、職人のこだわりで選ばれる。嗜好品に近い性質を持ちながらも、ガンメーカーの力が強い一面が当時はあった。そこから『お客様からもっと話を聞こう』という姿勢から生まれたのが、Finerだった。これからはWebマーケティングにも力を入れる」
■用途開発も積極的に
そういった歩みを踏まえて、佐伯社長はブランディングを含めた新たな戦略として「特殊品で生きていく」道を模索している。例えば、これまで液体に漬けていた工程を噴き付けに置き換えて改善するといったもの。「液体を霧化するといった、これまで当社が想定していなかった用途開発にも積極的に対応していく」との姿勢を示した。
全体の売上で特注品が占める割合は約2割。その比率を「2025年までに5割まで高めていく」考えだ。
その実現に向けて、製販体制の見直しを図っている。岡山工場では、2016年から小型多関節ロボットによるハンドスプレーガンの組立自動化を開始。工場内の動線も見直し、生産性と特殊品の人員比重を高めた。
販売体制では、塗装品質、流体、塗料の専門知識が必要なことから、技術とベテランスタッフによる専門チームを立ち上げる構想も思い描いている。今年、30~40代社員で構成される次世代の検討会を設置。毎月、戦略ミーティングを開催している。
佐伯社長は、「さらなる要望に応える準備は整いつつある。足りないのは情報だ。『明治ならあらゆる要望に応えてくれる』。そう思っていただけるような体制を築いていきたい」と力を込めて語った。
(2021年9月25日号掲載)