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インタビュー

中西金属工業 輸送機事業部 企画部 部長 光川 竜右 氏

投稿日時
2024/12/24 09:38
更新日時
2024/12/24 09:42

先進的マテハンを一挙開発

自動車生産ラインを得意とする中西金属工業が近年、独自のマテハン機器で提案の幅を拡げている。無人フォークリフト(AGF)やデバンニングロボット、入出庫を担うAGVが棚の内外を走行する新たな自動倉庫を立て続けに展開。狙いや背景を聞いた。

――元々、マテハンでは自動車生産ラインが主力です。AGFなど物流全般向け製品を手がけ始めた時期と、狙いは。

「輸送機事業部の売上は今も9割が自動車生産ラインで、全長10㌔ものコンベヤで車体を搬送し組み立てます。2006年頃から自動車の生産ラインの枠を超えて、さらなる工場の無人化・省力化をより包括的に提案ができるように技術研究を進めてきました。2014年頃にEC化に伴う物流市場でのFA機器の需要増加があると考え、AGVやAGF、自動倉庫や自動牽引車などの複数の製品開発を同時に進めました」

――特に売れ筋は。

「展開数では『ROBO Fork』(AGF)。40社超に導入済みです。我々は自動車メーカーに長期で伴走しベターではなくベストな専用機を提供する事業モデルなので当然、AGFも実運用まで伴走しましたがこれが評価されました。約半数の案件でハード・ソフト何らかを改造対応しており、自社開発を貫くのもそのため。次に実績が多いのは『ROBO Rook』(AGV)。1㌧可搬で製造業の支持を得ています」

――「ROBO Carry Rack」も先進的な自動倉庫です。棚の内外をAGVが走り保管と搬送を行うとか。

「着想は16年で18、19年には自社工場の2拠点に導入し計3千棚規模を運用していました。棚の内外をAGVが走るのは世界でも珍しい。1時間数パレットの物量ならコンベヤを設置せず保管も前後搬送もAGV1台で自動化できます。棚搬送ロボを用いたGTPは処理量が高い現場で有効ですが、ピッキングなどによる出し入れの頻度が少なく、上部のスペースが活用したい現場では、処理量は落ちても収容効率の上がるROBO Carry Rackが有効です」

――スタッカークレーン式にも柔軟性で勝りますね。

「我々もスタッカークレーン式自動倉庫を扱いますが、ハマればパフォーマンスが高いのがクレーン。ただ天井が低いと費用対効果が出ません。また生産ラインは設備を限られた工場に詰め込み成立させることが重要で、しかもマテハンは後回しで自由度が低い。歪な形の『テトリス』が使いづらいようにスタッカークレーンはFAでは不利で、形が自由なROBO Carry Rackは限られたスペースを有効活用するのに丁度良い存在です。加工機を跨いで上に棚を設け、究極に隙間のない工場も実現できます。また予算が限られるなら固定棚とAGFで疑似的な自動倉庫の提案も。要望に応じた倉庫を提供できる体制がAGFとROBO Carry Rackで整いました」

■荷下ろし自動化へ

――今までどちらかと言えばFA向け機器の話でした。デバンニングロボ「ROBO Square」は流通向けですね。

「実はヒアリングで最も需要が高かったのがデバンニングの自動化。川崎重工業様とのご縁で共同開発しました。今は積み方や扱える段ボール寸法が限られるので、ロボットが扱える段ボールサイズ・重量以外はお客様側がロボットに適した荷姿に変えるなどの工夫が必要です。ただハンドやビジョンの進化により、対応できる範囲が広がればゆくゆくこの設備が当たり前になると思います。既に複数社で運用中で、今まで『実績のない設備を初めて入れるのは…』と及び腰だったお客様も導入へ前向きになってきました」

――今まで挙がった製品で必要なピースは揃いましたか。

「実はまだ開発中の機種が2つあるのでぜひお楽しみに。我々が16年以降に新規開発した製品は一見、脈絡なく見えますがすべてAGVや多軸ロボット関係です。いずれも無人工場を包括的に手がけるのに必須のピースで、今はそれが自社に揃った状態。今後、現場レベルの生産性向上のために細部までの作りこみを進めると共に、さらなる無人工場の実現に向けて技術・製品の開発を進めます」

中西金属02.jpg

ROBO Carry Rack」は棚の内外をAGVが走る新型自動倉庫



(日本物流新聞2024年12月25日号掲載)