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インタビュー

トーヨーコーケン 執行役員 山梨事業所 生産本部設計 第二部 梶原 宏生 部長/営業本部 営業企画室 田村 紘一 リーダー

投稿日時
2024/12/11 14:48
更新日時
2024/12/11 14:50

はしごの昇り降りを省力化

バランサーやウィンチなど重量物搬送機器を手掛けるトーヨーコーケンは今、両分野で培った技術とノウハウを生かし、建設現場作業者の昇降移動をアシストする助力装置の展開を進めている。建設・インフラ向けへの助力装置の展開と新製品「昇降力(しょうこうりき)」について、同社・執行役員山梨事業所生産本部設計第二部の梶原宏生部長と営業本部営業企画室の田村紘一リーダーに聞いた。

梶原宏生部長(左)と田村紘一リーダー

バランサー機能で助力と操作性を両立

今年7月、東京ビッグサイトで行われた展示会「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024」で、トーヨーコーケンのブースに足を止める人が続出した。法面に見立てた急坂と5㍍ほどのはしごを永遠と昇降するスタッフに目が奪われたからだ。

「まるで無重力?」の謳い文句通り、はしごを不思議なくらい軽々と昇り降りし続けるスタッフを支えたのが「昇降力(しょうこうりき)」。同月発売の新製品で、作業者の上下移動を助力する装置。ウィンチのような見た目をしているが、モーターの力で作業者を一方的に引き上げるのではなく、荷重変化に応じてアシスト力が変わる仕組みなため、作業者は自然な動きで軽々と昇り降りすることができるようになる。

「建設分野では現場の高齢化や人手不足が深刻で、メーカー側としても製品を正しく安全にお使いいただくとともに作業者負担を軽減し、より多様な人材が働き続けられる環境を確保していくため、2019年に法面作業向けの専用機『法面ウォーカー』を発売したのがきっかけです」(梶原宏生部長)

同社としても業界としても初めて、人自体の動作をアシストする助力装置をラインナップに加えた直後、電力会社から声がかかり、30㍍ほどの縦穴を掘る必要がある送電鉄塔の基礎工事向けに昇降力を開発。同製品は、工場や倉庫で人の作業の補助として用いられるバランサーの技術と、ウィンチなどで培った建設業向けのノウハウを掛け合わせることで、助力機能とスイッチレスで使用できる操作性・安全性を兼ね備えた。

現在、法面ウォーカーと昇降力2機種のラインナップだが、昇降力発売以降、様々な業界から引き合いが来るようになったという。

「これまで作業者の上下移動を補助する装置というのは、ほぼ工業用エレベーターしか市場で見当たらない状況でした。エレベーターは大人数高頻度の使用が見込まれる現場には向きますが、費用対効果が見込めない小人数低頻度の現場では、作業者が自力で昇り降りをしているケースがほとんどです。昇降力発売後お声かけていただいている下水道点検や建設用クレーンの操縦席への移動、火力発電所の煙突点検・塗装、観覧車の点検などはいずれも、未だに人が何十㍍ものはしごや階段を昇り降りしている現場です。当社としてもこれほど多様な業界からニーズがあるとは思わず、現在、どのようなケースで活用いただけるのか見直しを進めているところです」(田村紘一リーダー)

様々な業界から声がかかる一方で、「体験してみないと良さが伝わりにくい製品」でもあるという。そのため、機器の貸し出しや実際の現場でのデモンストレーション、同社・開発本部(山梨県)にある20㍍鉄塔や8㍍の屋内鉄塔を使った体験会など、実際に製品に触れられる機会を増やしている。田村リーダーは「体験して初めて良さがわかる機器だと思うので、展示会などでも体験できるようにしていきたいと考えています。昇降力は人の助力だけでなく、削岩機や大型ワークなどに取り付け作業負荷を低減する使い方も可能です。まずは様々な現場での活用事例を増やしていきたいと思います」と話す。

241210建設インフラ_トーヨーコーケン_写真2.jpg昇降力の活用イメージ

(日本物流新聞2024年12月10日号掲載)