1. トップページ
  2. インタビュー
  3. 全国銀行協会 古賀 元浩 氏

インタビュー

全国銀行協会 古賀 元浩 氏

投稿日時
2024/11/26 10:07
更新日時
2024/11/26 10:26

手形・小切手「電子化のススメ」

紙の手形や小切手の全面電子化に向けて、政府は「約束手形・小切手の利用廃止」の方針を示しており、これをもとに金融界では現在「2026年度末までに手形・小切手の交換枚数をゼロにする」ことを目標に、政府・産業界と連携しながら手形・小切手の電子化を推し進めている。支払うい側、受け取りる側共に大きなメリットをもたらす手形・小切手の電子化だが、これまでの商習慣からなかなか切り替え出来ない企業も少なくない。そこで全国銀行協会事務・決済システム部の古賀元浩次長に、電子化によるメリットやスムーズな移行方法について訊いた。

かんたん移行、メリット多数

——手形・小切手の電子化を推し進める理由は。

「紙の手形・小切手は、これまで企業間の商取引の決済において重要な役割を担ってきましたが、デジタル化が進む昨今では、非効率な決済手段となっています。手形・小切手の電子化は、企業の労働力不足の解消、生産性向上、DX推進にも繋がります。政府も「約束手形・小切手の利用廃止」の方針を示しておりので、政府をはじめ産業界、金融界が一体となって取り組みを進めています」

——金融界の取り組みについてお聞かせください。

「金融界では、2021年4月に設置された『手形・小切手機能の全面的な電子化に関する検討会』(事務局:一般社団法人 全国銀行協会)において策定した『手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画』に基づき、2026年度末までに電子交換所における手形(約束手形・為替手形)・小切手の交換枚数をゼロとすることを最終目標としています。そのために手形・小切手を電子化して取引を行う『でんさい(電子記録債権)』やインターネットバンキング(IB)による振込への切り替えを促しています」

——これまでにどのような成果が出ていますか。

「紙の手形・小切手による取引はピーク時の1979年には約4億4千万枚に達していましたが、2023年には2468万枚と約1/20に減少しています。また、代替手段のひとつであるでんさいの利用件数は、サービス開始時(2013年)の13万件から10年を経て、689万件まで増加しています。」

——でんさいに切り替えるメリットは。

「まず支払い側は手形や小切手の発行や郵送作業など、面倒な事務負担が軽減されます。受け取り側もWEB上で取引が完結するので、相手方から受領する手間や金融機関へ行く必要が無くなります。さらに支払い側、受け取り側ともに紛失や盗難、封入ミスなども起こらず、災害時にも安心です。加えて郵送料や手形帳・小切手帳発行代金、手形の振出や領収証の発行時に必要な印紙代もかかりませんのでコストダウンも図れます。また支払期日当日に入金が完了し、入金時点から資金利用が可能です。さらに、受取企業は手形と同様に支払期日前に譲渡・割引ができ、担保として活用できますし、必要な分だけ分割して資金化することも可能ですので、資金繰りの円滑化にも繋がります」

■「でんさいライト」で簡単に手形を電子化

——11月18日には新たに『でんさいライト』をリリースしました。

「でんさいは株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が提供しており、原則、各金融機関とのIB契約が必要となりっていました。新たにリリースしたでんさいライトはIB契約がなくても利用でき、インターネットに接続できる環境があれば、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットを通じて、でんさいのサービスを利用できます」

でんさい.jpg

——利用するのに手数料やアプリのインストールは必要でしょうか。

「でんさいライトを利用するためには、口座を開設している取引金融機関への申込みが必要となり、サービス利用1件ごとに手数料がかかりますが、基本手数料は無料です。またアプリのインストールも不要で、PCだけでなく、スマホやタブレットを使って、で直感的に操作できるのが大きな特徴です。でんさいネットにおいて特設ページを開設していますので、そちらも是非ご覧ください」

——従来の手形からでんさいに切り替えた場合、どれくらいのコストメリットが見込まれるのでしょうか。

「取扱件数や金額にもよりますが、支払い側・受け取り側ともにコストメリットを感じて頂けると思います。でんさいネットのウェブサイトには、月間の手形取引枚数を入力するだけでかんたんにコスト診断が出来るページがあり、そちらでコスト削減額を確認できますので、ぜひ使ってみて頂きたいですね」

——とはいえ従来通り、紙媒体を使い続けたいというニーズも根強くあるかと思います。

「従来の紙の手形・小切手の利用方法に慣れ親しんだ方が多いのも事実です。実際に金融機関のお客様からは『紙のほうが使いやすい』『取引先がでんさい等に切り替えてくれない』『いまさら電子化なんて』といった声も聞かれます。そうした方々がいかに負担なく、スムーズな移行を行えるかが最大の課題です。また、政府の方針等も踏まえ、手形帳・小切手帳の製造業者の中には製造中止の動きもあり、一部の金融機関においては、手形帳・小切手帳の発行終了の予定を公表している金融機関もあります。こうした状況を踏まえると、今後、手形帳・小切手帳が入手できなくなることによって各金融機関のお客様の商取引自体が継続できなくなってしまうかもしれません。そうした事態に陥ってしまわないよう、金融界全体で電子化への移行をサポートする必要があります」

——電子化への移行についてはどういったバックアップを行っていますか。

「各金融機関において、訪問サポートやヘルプデスクの設置といった、電子化への切替えをサポートする体制を整えておりますので、お早めに金融機関にご相談ください。その他、でんさいネットと共同主催で2025年1月までオンラインにて『手形・小切手の全面的な電子化セミナー』を開催しています。こちらではでんさいの基本的な仕組みや操作方法の説明、さらにでんさいライトの概要や使い方をセミナー形式で説明しており、でんさいネットのウェブサイトで申込みを受け付けておりますので、是非お申込みください。また、ご要望があれば企業や団体様にオンラインでの個別説明の他、参加者が多数の場合、講師を現地に派遣することも可能です。全てのお客様が無理なく手形・小切手の電子化へ移行できるよう、当協会では出来る限りのサポートをしていきたいと考えています」

【でんさいライト特設ページはこちら】


■全国銀行協会とは?


国内の銀行、銀行持株会社および各地の銀行協会を会員とする組織で、民間銀行のほとんどが加盟。銀行取引の適正性の確保や消費者保護のための活動を行っている他、金融機関間の手形・小切手の交換をするための「電子交換所」の運営など、公正かつ利便性の高い決済システムの企画・運用も手掛ける。

(2024年11月25日)