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インタビュー

フジ矢 マーケティング本部 プロダクトデザイン部リーダー 兼 デザイナー 林 淳美 氏

投稿日時
2024/11/25 15:01
更新日時
2024/11/25 15:04

デザイン賞受賞の鍛造クリッパー

――鍛造ハンディクリッパー、通称「鍛クリ」の特長を教えてください。

「刃からハンドルまで一体鍛造によってつくられたハンディクリッパーで、高い強度とパワフルな切断力が特長です。従来のボルトクリッパーでは両手が必要だった8番線を片手で切れます。建設現場では足場を結わえたり、建築部材を縛ったり、8番線を切る作業は多く、片手で切断できれば作業効率がアップします」

片手で8番線切れる剛性も

「ハンドル部がアルミで軽量・コンパクトなミゼットカッターと、大きくて両手で力を加えなければならないボルトクリッパー。鍛クリはその中間的な位置づけで、コンパクトでありながら硬い線が切れます」

――一体鍛造で剛性がアップし、切断力が高まりました。

「刃からハンドルまで部品が分かれないため、刃に力を確実に与えられます。例えばハンドルがアルミのプレス品だと職人さんの力加減ではしなってしまい、力が分散してしまいます。もう一つ切断力アップの大きな理由は、切断部と支点をほぼ同じところに設計にして距離をより近づけたこと。てこの原理で、軽い力で部材が切れます」

――刃の戻りも軽やかですね。

「従来品のボルトクリッパーでは切断するたびに両手で広げなければなりませんでしたが、新設計したバネにより連続作業時でも楽に作業できます。解体時には1日100本切らなければならない現場も。作業負担を軽減できます」

「バネも、通常使われる断面が円形状のものではなく、四角形状のバネ材を採用。耐久試験で5万回以上のテストをクリアしています。製品自体が長く保っても、『バネが先に折れてしまう』とか『刃ががたがたになる』というユーザーからの声を基に、製品寿命を延ばすためバネの耐久性も重視しました」

――ロック機能が、手元の操作しやすい位置にあります。

「片手で動作が完結する、ということをコンセプトに鍛クリを設計しました。グリップ部に一段くびれを設けて握りやすくしています。現場で増えつつある、手が小さい女性や力を入れにくい高齢の方にも楽に作業してもらうのが大事です」

――ロック部分とロゴ、柄尻のリングの金がアクセントになっています。

「KUROKINシリーズのテイストを守るため、見た目も大切にしています。黒を基調に、金を差し色としていますが、金色の比率が多すぎないように厳密に決めています。シリーズ当初では金の割合を増やす案も出ましたが、職人さんにアンケートすると、『これくらいの割合がちょうどいい』、『渋い』と言ってもらえています」

――研磨で仕上げたシルバー部分も印象的です。

「削らなくても機能的に問題ありませんが、意匠性と質感を高めるためにあしらいを加えました。デザイン賞ではその点も評価に繋がりました。手に持った時、所有する喜びを感じてほしい。誰からも見てカッコいいものを生み出して、業界を盛り上げることをメーカーとして取り組んでいます」

フジ矢鍛クリ_PC21-200-BG_photo2.jpg

片手でも8番線を切断できるパワフルさが持ち味の「鍛クリ」

(日本物流新聞2024年11月25日号掲載)