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インタビュー

ニデックマシンツール 歯車機械システム事業部 事業戦略企画部 部長 谷村 昌秀 氏

投稿日時
2024/11/20 13:54
更新日時
2024/11/20 13:58

ギヤの知見集約したマルチタスクギヤセンタ

ニデックマシンツールはJIMTOF2024で新たな歯車加工機を複数披露した。歯車研削盤「ZFA260」には熱に鈍感で振動減衰性の高いミネラルキャストを採用。マルチタスクギヤセンタ「MGC300」にはホブやスカイビングに加え面取りやバリ取り、マシニング、旋削まで多機能を集約するという。歯車機械システム事業部事業戦略企画部の谷村昌秀部長に詳しく話を聞いた。

右から歯車機械システム事業部事業戦略企画部 谷村昌秀部長、同事業部開発部開発第5グループ第2チーム 菊池寿真チームリーダー。JIMTOF2024会場でマルチタスクギヤセンタを前に

――EV化で歯車の噛み合い時に静粛性を求められています。これに対する提案は。

「歯車研削盤『ZFA260』とクリンゲルンベルグの噛み合い測定機をロボットで接続しました。歯車に求められるポイントが変わってきています。従来は歯形やピッチだけを測定する現場が大半でしたが、EVではそれでは見えないゴーストノイズが重要になります。歯車の噛み合い次数以外の箇所で発生するので『ゴースト』と呼ばれるわけですが、要するに原因がわからない。今はその可視化と、NV(ノイズ・バイブレーション)をいかに減らすかが問われています。ただプローブで歯形や歯すじを測ると1つの歯車で1時間かかるのでインラインでは到底無理。そこで今回の展示では噛み合い測定機ではじかれたNG品だけを測定機で原因分析するという流れで全数検査を行っています」

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歯車研削盤「ZFA260」とクリンゲルンベルグの噛み合い測定機をロボットで接続し、歯車の全数検査を提案した

――歯車研削盤「ZFA260」はミネラルキャストを採用した新製品と聞きました。

「すでにZEシリーズという歯車研削盤を販売していますが、ZFAはその後継というより別系統の新機種。ZEはテーブルが1つですが、ZFAは2つあります。歯車研削では砥石の溝と歯の位置を合わせる『歯合わせ』が必要で、ZEではテーブルにワークが載ってから歯を合わせるためサイクルタイムが長い。ZFAは加工中にもう一方のワーク軸で脱着と歯合わせを行ったうえでテーブルごと回転させチェンジするので、サイクルタイムが有利。頻繁に段取り替えをする現場にはZEが向きますが、大量生産でサイクルタイムを切り詰めたい現場にはZFAがマッチするでしょう。またZFAはミネラルキャストを採用しており震動減衰性能も高い。熱に鈍感でドレスインターバル中も寸法変化が安定します」

――マルチタスクギヤセンタ『MGC300』も発表されました。歯車の複合加工ができるとか。

「『ギヤ加工機メーカーが複合機を作るとこういう機械になる』という多機能マシンです。我々はギヤの専門家として機械に加え切削工具も手がける独自の立ち位置。まだ発売前ですがギヤのノウハウを結集し、マシニングは当然ながらホブ加工やスカイビング、歯切り後のバリ取りや面取り、さらに旋削まで1台に集約しようとしています」

――最近は汎用的な5軸機や複合加工機にギヤ加工機能を取り込む例も増えていますね。

「例えばホブ加工では、カッターの諸元を変えると加工条件は変わります。ホブだけでも最低限知るべき要素をまとめると1冊の厚い冊子になるほどで、この知識がないと本当の意味での加工条件は設定できないはず。これが汎用機メーカーと我々の違いだと思います。これが端的に表れているのがMGC300の操作盤です。基本的に全て対話式で、NC言語での入力は一切割愛しています。我々のギヤマシンに慣れたお客様が複合機になった途端にプログラムを直接手打ちする、という事態がなく同じ使い方ができる。複合加工機機で加工する以上ロットは少ないはずで、頻繁に指令を与える必要があります。その都度面倒な作業を要求されるのか、感覚的な入力で良いのかは大きな違いです」

――歯車の深い知見が貴社ならではの強みで、それが機械の仕様にも反映されていると。

「例えばホブカッターは切り刃がストレートですが、それで削った歯車は歯が円弧形状のインボリュート歯車になる。これはすべて理論で説明できます。仮に理想の歯車にならなかったとして、理論を知っていれば原因が『カッターを取り付けた際の振れ』なのか、あるいは『主軸のベアリングの傷み』なのかトラブルシュートできるんです。極端な話、ハードを組み合わせれば歯は削れます。問題はそこにどういう加工技術を入れるか。つまりソフトが肝で、それこそが我々の強みです。歯車には旋削、ホブ切りから歯研まで様々な工程があり、すべてのプロセスを知らないと各工程の理想的な機械もできません。この知見は一朝一夕で蓄積できないでしょう」



(2024年11月10日)