インタビュー
「トポロジー最適化」が次世代モノづくりのスタンダードに
- 投稿日時
- 2021/09/13 13:42
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
テクノソリューションズ 代表取締役 大眉 博 氏
CAD/CAMソフトを中心に3Dプリンタ、3Dスキャナなどハード、ソフト両面から最新のモノづくりを提案しているテクノソリューションズ。国内製造業から欧米の先端的な設計・製造まで幅広い知見を持つ同社・大眉博社長に、次代のモノづくりを支えるソフトウェアとその活用について語ってもらった。
―貴社が取り扱うCAD/CAMソフトのセールス動向を教えて下さい。
「3次元CADのSOLIDWORKSは、主に機械産業向けソフトとして定着しつつあり、コロナ禍前と変わらず好調です。最近では取引先からSOLIDWORKSのデータで来るので、同じCADが良いといったケースや、2次元CADや他の3次元CADの顧客からの問い合わせも多くなっています」
―3Dプリンタや3Dスキャナの販売も好調と聞きます。
「当社で取り扱っているMarkforged社の3Dプリンタは、炭素繊維ながらアルミ同等の強度が確保できるので、これまでのように試作ニーズではなく治具など本製品として活用が拡がっています。さらに金属3Dプリンタが航空機のエンジン部品製作にも使われるなど、積層造形はこれからさらに成長する分野だと感じています。特に脱炭素やEV化が進むと、さらに需要が拡大すると思います。
3Dスキャナは昨今、大手で相次いでいる品質保証の改ざん等問題の影響を受けてか、問い合わせが特に増えています。当社で取り扱っているなかでも人気なのが、ハンディタイプの『HandySCAN 3D』です。立体形状を高精度で計測できるうえ、持ち運びや取り回しが楽なので自動車関連や鋳物、金型分野からも引き合いがあります。製品の仕上がり検査による品質向上や、リバースエンジニアリングによる製品開発の迅速化などに活用されています」
―近年のコロナ禍で、貴社における販売戦略や働き方の変化はありますか。
「東京本社では政府の指針である70%のリモートワークは達成しています。現状、既存のお客様はオンラインがメインの商談となっています。特に地方のお客様は『来ないでくれ』という声も多く、対面での営業が難しくなっています。それでも訪問させていただく場合は、PCR検査をして陰性証明書を発行して赴きます。そのためPCR検査キットは各拠点の冷蔵庫に在庫しています。
新規開拓はリアルの展示会が無いので苦戦しています。メーカー様や自社のホームページを介してウェブセミナーを数多く行い、新規のお客様を取り込もうとしておりますが、展示会ほどの効果は見込めません。一方で、販売店様の営業マン向けのウェブ勉強会を開催しておりますが、こちらは新規の引き合いを頂けるようになり、徐々に成果が出始めていると感じています」
■自由度の高い設計が求められる時代に
―独がインダストリー4.0を提唱して約10年が経ちますが、世界におけるモノづくりの変化を感じていますか。
「メルセデスやBMWの新車リリースがすごく早くなっているように、欧州ではモノづくりのデジタル化がかなり進んでいると実感します。日本でも同様の取り組みは行われていますが、欧米に比べると遅れている感は否めません。
欧米の先進的な企業では、クラウド上で3次元CADを共有し、打合せや必要なアプリでCAEやCAMやデザイン等のソフトを使ってモノづくりを進めています。しかし日本の場合セキュリティやノウハウ等の流出を恐れてなかなか進まないというのが現状です」
―日本のモノづくりは世界の潮流から外れていってしまっているのでしょうか。
「当社ではSOLIDWORKSをリリースしているダッソー社のプラットフォーム「3Dエクスペリエンス」を扱っています。こちらはスタートアップ企業やロボット、宇宙開発関連のベンチャー企業を中心に導入が進んでいますが、まだまだ道半ばです。世界ではこのようなプラットフォームを活用して爆発的に開発スピードを加速させていますので、このままでは日本は取り残されてしまうという危機感はあります」 ―モノづくりを変革していく過程において、ソフトの重要性がますます高まるということですね。今後、注目の設計ソフトがあれば教えてください。
「今年3月に弊社は米『nTopology(nトポロジー)』社と代理店契約を締結し取り扱いを開始しました。『nトポロジー』は先進的な設計製造のためのエンジニアリングソフトです。現在、3Dプリンタの発展に伴い、従来の加工方法に比べて飛躍的に自由度の高い製造特性を生かした設計が求められています。『nトポロジー』は既存のCAD/CAEと連携し、ラティス設計やトポロジー最適化を簡単に行えます。
モノづくりの高付加価値化や少量多品種への対応といった課題に対し、従来の切削加工から積層造形に置き換えるケースも今後は増加していくと思われます。そこで3DCADでモデリングされた製品を『nトポロジー』でトポロジー解析をし、余分な肉をそぎ落として軽量化を図り、さらに3Dプリンタ用にラティス設計をし、解析をかけて強度確認を行い、3Dプリンタで出力する、という流れになります。
EV化やデバイスの軽量・小型化など、数年後の製造業における設計から製品化への流れは確実に大きく変わっていきます。そういった次世代のモノづくりにおいて『nトポロジー』をはじめとするトポロジー最適化やラティス設計は、大きなアドバンテージを生み出すと思います」