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インタビュー

柳瀬 代表取締役社長 柳瀬 孝之 氏

投稿日時
2024/10/03 18:00
更新日時
2024/10/03 18:06

研磨の自動化、実績が加速中

幅広い研磨材を扱い、研磨の自動化にも力を入れる柳瀬。「研磨材が摩耗し圧力を保持できない」という研磨の自動化における課題をFERROBOTICS製の圧力を自動制御するハンドで解決、実績を増やしている。来夏は東大阪にロボットショールームを持つ大阪営業所を移転開設予定。研磨材ではペーパー砥石とオフセット砥石の"中間"を狙った新商品をヒットさせた。デジタルツールで業務を効率化する一方、北関東と北海道に営業拠点を設けて営業力を強化。かけるべき部分に必要な人手をかけ、成長を目指す。

――景況感は。

「横ばいです。店舗向けはコロナ禍で伸びた分、その反動減をまだ引きずっています。工場向けは堅調。円安も一時より落ち着き設備投資しやすい環境が整ってきました。今後は総合的に良くなるとの認識です」

――オーストリアのFERROBOTICS社製ハンドで研磨の自動化に注力しています。

「販売を始めて3年。ここにきて実績が加速度的に増えてきました。潜在需要も多く、特に溶接ロボットとのコラボは伸びが期待できます。溶接の肉盛り除去は多くが人手。マシニング加工のカッターマークを除去する金型向けの繊細な研磨も好調です」

――バリ取りや溶接ほど研磨の自動化が進まない要因は。

「砥石の摩耗ではないかと。砥石は摩耗するので従来のティーチングでは開始時の圧力を最後まで維持できず、できても多数のセンサーが必要で高額かつ汎用性に欠けるイメージでした。バリ取りの自動化を軸付き砥石でなく超硬カッターで行う現場があるのはこのためです。FERROBOTICSのハンドは35㍉のストロークの範囲で常に同じ圧力を保てます。ワークに合う砥石も提案します。とはいえ1件ずつテストは必要で、今は常に複数社がテストしている状況です」

――研磨ロボのショールームを持つ営業所を移転開設されます。

「大阪営業所は長らく賃貸でしたが、ロボットのショールームを建てるため、営業所を併設したショールームの開設を決めました。丹波の本社よりアクセスが有利。ロボットは少なくとも4台常設し、持ち込みワークでのテストや代理店や販売店の勉強会に使います」

――新製品「ハッピーファイバーディスク」が好評とか。

「ちょっと思った以上に売れまして、一時欠品もしました。ペーパー砥石とオフセット砥石の中間的な位置づけ。今までなかった製品です。切れ味に優れ食いつきが良いのでペーパーと比べ2~4倍の研磨スピードで、耐久性も高い。火花も出ません」

――研磨ロボ以外ではそれら新ジャンルの商品に注力しますか。

「そうですね。径100㍉に加え125180㍉の投入も検討中です。また充電式のフラップサンダーも発売し、好評です。他社の電動工具は径100㍉のディスクを回す用途ですが、そうではなくシャンク径6㍉のフラップホイールや軸付き砥石に適した回転数の、ニッチを狙った工具です。我々はあくまでソフト(研磨材)のメーカー。ソフトを使って頂くためのハードを提供するというスタンスで、研磨ロボも同様です。すでに自動化が済んだ現場へ研磨材を後から提案しても採用頂けません」

■人手に頼らぬ成長戦略

――12千点の製品を網羅した検索サイト「研磨ポイント.com」も始動しました。

「全製品が検索でき、パーツリストや使い方の解説動画もリンクしています。キーワード検索も可能。またLINEの友達登録で、テキストや写真を添付し瞬時に問い合せもできます。いずれも使いこなして頂ければ絶対に便利なツール。できる限り普及させ、我々もですが代理店や販売店の負担を軽減できれば。これからの世の中、お互い仕事を楽にし人数に頼らず成長する必要があります。需要を減らさず見積や問い合わせの手間を減らすのが重要で、それにはストレスなく電話に代わるツールが必要です」

――社内の効率化も進めますか。

「社内では物流と営業のDXも進めています。エクセル文書は極力撤廃し、デジタルツールを使った顧客管理で受注確率も向上させました。過去も含めすべての案件が一覧でき引き継ぎも簡単。タブレットも配布し社内手続き含めどこでも仕事ができる環境を整えています。今いる人数で売上を増やしてこそ適切な賃上げができます」

――注力地域は。

8月に北海道、10月に群馬県へ営業拠点を設けます。本社が関西なのでシェアは関西が強いのですが、今後は東日本にも力を入れようと」

――北海道は意外です。

「現地の代理店のおかげで昔から広く認知は頂いています。ただ今までそこにマンパワーをかけられていませんでした。北海道のようなローカル地域は経験上、力をかければ返ってくる市場です。効率を高めるためデジタルツールは使いますが、営業はリアルが重要だと思います。人をかけるべきはそこ。そのためのDXです」

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東大阪市に3階建ての大阪営業所を移転開設。2025年夏の竣工を予定する

■東南アジアを開拓



ベトナム・ホーチミンの工場で海外生産も行う柳瀬。現地で製造した製品のおよそ9割は日本で販売されるが、今後はベトナムや近隣の東南アジア諸国への拡販を進め、海外向けの比率を5割に高める目標だ。そのために10月にホーチミンで開かれるMETALEX Vietnam2024にも出展。5年ぶりの海外展示会への参加で足がかりを築く。

(2024年9月25日号掲載)