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インタビュー

ハイオス 代表取締役社長 戸津 勝行 氏

「締めやすく、外しやすい」ネジから始まるサステナブルなモノづくり

産業用電動ドライバーにおけるパイオニアメーカー・ハイオスの「インタトルク」が大手製造業に相次いで採用されている。インタトルクはヘキサロビュラと呼ばれる星形ネジを改良し、ドライバービットの先端部にスーパーポイントと呼ばれる突起部分を付け、ビットとネジの嵌め合い性能を飛躍的に高めたもの。従来型のネジとは一線を画する特殊形状のネジがいま、なぜ必要とされているのか。同社の戸津勝行社長に聞いた。

――以前から提唱されていた貴社の「インタトルク」を導入する企業が増加しています。

「国内、欧米、中国の大手自動車メーカーや電機、精密機器メーカーに相次いで採用されています。海外でも様々な分野の大手メーカーが続々と当社のインタトルクへ切り替えています」

――プラスネジをはじめとした従来のネジに限界を感じているメーカーが増えているということでしょうか。

「深刻な人手不足に見舞われている製造業各社において、自動化は喫緊の課題です。一方で、従来のラインを専用機やロボットで自動化しても、なかなか歩留まりが上がりません。その大きな要因となっているのがネジの形状です。一般的なプラスネジやマイナスネジは、そもそもビットとネジの嵌合性能が著しく低いのです。皆さんもネジ締めの際に苦い経験をしたことがあると思います」

――私もDIYの際に、ネジ山をなめてしまったことが何度もあります。

「ロボットや自動機以上に感覚的に優れている人間でも、ネジ締めを繰り返し正確に行うのは難しい作業です。それを自動化するとなると従来のネジでは限界があります。その点、ネジ頭の形状とビットの嚙み合わせに優れるインタトルクは自動化に最も適しています」

ハイオス写真2.jpg

電動ドライバー「熟練工」【写真左】とインタトルク

――ドライバーの性能も自動化の成否を左右するのではないでしょうか。

「これまでのネジ締め作業は、きちんと締まったかどうかの判断を作業者の経験や勘に委ねる部分が大きく、ベテランと初心者では品質面で大きな差が出てしまっていました。このネジ締め作業をデジタルで可視化することにより、作業者の経験値に左右されない品質を確保できる電動ドライバーが当社の『熟練工』シリーズです。人間の感覚では判断できない部分もモーターの回転やパルスをドライバー自身が読み取り判断するので、誰でも簡単に質の高いネジ締め作業を行えます。無論、ラインを止めない自動化やトレーサビリティの確保にも貢献します」

■生産性向上と脱炭素を両立

――実際に「熟練工」と「インタトルク」を導入された企業ではどのような効果が出ているのでしょうか。

「年間360万本のネジ締めを行っている産業機器メーカーさんのケースですと、他社製の電動ドライバーと従来のプラスネジの使用で、ネジ締め不良が年間500回発生していました。これを熟練工とインタトルクに置き換えることで不良ゼロを実現しました。またプラスネジでは1万本に1回のペースでドライバーのビット交換が必要でしたが、インタトルクでは12万本に1回の交換で済んでいます。約3日に2回のペースで発生していた不良をゼロに、ビット交換の手間も大幅に削減しています」

――大幅なコストダウンや生産性の向上だけではなく、脱炭素化にも大いに貢献しますね。

「究極は、モノを作らないのがいちばんのカーボンオフセットになりますが、現実的にはモノを作り、人々の生活を豊かにするというサイクルで世の中は回っています。ですから、メーカーにはこれまで以上に無駄を出さず効率の良いモノづくりが求められる時代となっています。また、本当の意味でのサステナビリティを追求するならば、作ったモノをしっかりとリサイクルできるかどうか、簡単にリサイクルできるか、という点もとても重要になります」

――現状、作りっぱなしでリサイクルのスキームが確立されていない最終製品も多々あります。

「だからこそ、今後はネジがリサイクルに大きな役割を果たすと考えています。ネジそのものがリユース可能なパーツですし、作った製品を分解、リサイクルする起点になります。当社のインタトルクは従来品より『締めやすく、外しやすい』ネジです。生産性の向上に寄与するだけではなく、ライフサイクルを見据えたモノづくりに貢献できます」


■環境問題へ積極的な取り組み


ハイオスのネジ締結システムは2022年、「ねじ締め不良を削減し、リサイクル時における解体のしやすさがサーキュラーエコノミーに向けて効果的」と評価され、優れた環境配慮が組み込まれた製品に送られる「エコプロアワード」(〈一社〉サステナブル経営推進機構主催)に選出されている。また2020年に竣工された社屋は国土交通省が定める建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」認定3つ星を取得するなど、自社の脱炭素化にも注力している。

(2024年9月25日号掲載)