インタビュー
岡本工作機械製作所 取締役 技術開発本部長 兼 営業本部長 伊藤 暁 氏
- 投稿日時
- 2024/09/12 09:09
- 更新日時
- 2024/09/13 09:56
半導体向け脆性材加工へ新提案
中期経営計画「研削で価値を創造するソリューションカンパニー 500億円企業へ成長」という目標を2024年3月期に1年前倒しで達成した岡本工作機械製作所。2030年までの長期目標「世界に類のない『総合砥粒加工機メーカー』として研削盤、半導体ウエハ研磨装置でグローバルNo.1を目指す」を掲げる同社の直近の業況と今後の戦略について伊藤暁営業本部長に聞いた。
――昨今の市場環境をどう捉えていますか。
「当社の数字的なところで言いいますと、日工会の統計とほぼ同様の推移を辿っており、飛びぬけて良くなっているという実感はありませんが、様々な情報や実際に見聞きする限り、底は脱したのではないかと思っています」
――中期経営計画の目標であった500億円を前倒しで達成されました。
「豊富な受注と半導体事業の好調に支えられた結果、前期に目標を前倒しで達成できました。一方で、昨年あたりから徐々に受注が落ちてきていることも感じていましたので、今期の数字に関してはある程度想定内の結果と、前向きに捉えています」
――半導体事業に大きな強みを持つ貴社ですが、半導体関連の市況をどう見ていますか。
「当社の主要な製品は、生産材料メーカー向けの装置が多く、いわゆるウエハを生産しているメーカーがターゲットになります。コロナ禍を通じて半導体市場が上向きになるにつれ、メモリメーカーをはじめとした様々な半導体メーカーが、のちの好況に備えてウエハをかなり在庫していると言われています。そうした状況もあって、生産材料メーカーさんの生産自体がまだ100%に戻っていないのが現状です。一般的に半導体市場は今年の末から、2025年にかけてピークに向かうと言われていますが、当社のユーザーさんの流れからすると年内は横這いか、少し遅れて受注が来るのではと予測しています」
■売上700億円
――今秋にはJIMTOFが開催されます。
「全体としては、昨今のトレンドであるAIの活用や自動化、グリーンイノベーションといったものを、生産現場の課題解決に繋げる展示を行います。当社は『研削革命』という言葉を掲げていますが、研削盤に様々な機能や付加価値を盛り込むことで、いかにお客様のお役に立つかを考えています。現在、市場でいちばんシェアを頂いているのが汎用平面研削盤ですが、こちらもJIMTOFでは毎回新たな提案を行っており、進化を遂げていると自負しています」
――過去には全自動平面研削「SELF」を発表するなど、意欲的な提案を行われています。
「汎用的な平面研削加工は、砥石の載せ替えや成形、測定など作業者の手が必要な場面が多い。そうした作業を簡易的に自動化するという機能を当社の平面研削盤には盛り込んでいます。これに加えて制御装置に拡張性の高いものを採用し、一歩進んだIoT化を目指しています。これは当社とお客様のコミュニケーションツールとしての活用も見据えています。将来的には機械のサービス診断やメンテナンスをひとつのアプリケーションとして対応できるものをお客様に提供し、ダウンタイムを最小限にするのが狙いです」
――長期目標で2030年までに売上700億円を掲げています。
「今後の成長を考えると、半導体事業が大きなカギを握っていると考えています。半導体事業をこれまで以上に伸ばすとなると、やはり脆性材など新素材への対応が必要不可欠になります。当社の工作機械による新素材の加工提案もJIMTOFでは積極的に行っていきます」
――どのような機種を展示するのでしょうか。
「脆性材加工にはグラインディングセンタ『UGM64GC』を提案します。回転テーブルを標準搭載しており、高精度の内面・外周・端面加工に対応可能で、ガラスやセラミックスといった素材の加工に強みを持ちます。ダイヤモンド砥石の活用で半導体製造装置に用いられるセラミックス製のフォーカスリングやウエハチャックなどの加工を容易にします。また砥石交換による複合加工や、ロボットを活用した自動化提案も行います」
脆性材加工を得意とするグラインディングセンタ「UGM64GC」
■一歩進んだ環境対応
自社工場へのエネルギーマネジメントシステムの導入や社屋への遮熱塗料の塗布、研削液の集中処理による環境負荷低減など、他の工作機械メーカーに先駆けて脱炭素化に取り組んできた岡本工作機械製作所。昨今掲げているのは、自社機械の高度化による生産性向上での環境負荷の低減だ。伊藤暁本部長は「良品を作り無駄を省くことがサステナブルなモノづくりに繋がる」と語る。