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インタビュー

ファナック 代表取締役社長 山口 賢治 氏

安全性、信頼性、使いやすさで差別化

CNC、ロボット、加工機を提供できる数少ないメーカー、ファナック。加工性能を向上させる一方で、使いやすさや技能継承、環境対応をいっそう追求する。近年は協働ロボットが加工機と連携するかたちで様々な場面で使え、存在感を高めている。

山口賢治社長。社のトップとしてFA(CNC)、ロボット、ロボマシンの3分野すべてを見るが、「元々の出身はロボット。10年間ロボット設計をやっていましたので、技術的には1番ロボットが明るいかもしれません」と言う。

――貴社の足元の市況はいかがですか。

「当社にはFACNC)、ロボット、ロボマシン(小型切削加工機、電動射出成形機、ワイヤ放電加工機)の3つのビジネスがあります。FAの国内については日工会の毎月の受注動向と連動する形で、2023年末を底に徐々に上がってきました。数字は決して悪くはありませんが、絶好調というレベルではありません。半導体関係は一部で動いているのは確かですが、まだこれからです。一方でインド市場は堅調です。市場としてはそれほど大きくありませんが新興市場としてトルコも悪くありません。また中国企業が東南アジアや米州に進出しており、それに関連する設備投資は当然出てきますので、期待しています」

「ロボットおよびロボマシンの国内は好調とは言い難いのですが、引合いはかなり強いです。両事業で8~9割を占める海外についてはインド向けが堅調です」

――FA、ロボット、ロボマシンのいずれの事業もインド向けが好調ですね。

「そうですね。メイク・イン・インディア政策等によって年率の伸びは高いです。まだ中国の数分の1の規模ですが、今後、大きく伸びていきます」

――最近の貴社のロボドリルは能力が増し、協働ロボットは機種の充実が目立ちます。市場の反応はいかがですか。

「ロボドリルの工具本数は従来より7本多い28本仕様を追加しストロークも拡大し、非常に好評でEV関係のワークを加工したい要求がかなりあります。サイズの大きなワークを対象とするお客様、工程集約を志向されるお客様から受け入れられています。当社の協働ロボットは最大で50㌔グラム可搬まで用意していますので、様々な用途でご活用いただいています。塗装用の防爆タイプを新たに追加しました。塗装ガンの動かし方をロボットに教示するのはハードルが高いのですが、協働ロボットなら専門知識がなくてもダイレクトティーチで教示が楽になります。アーク溶接などを含め多くの業界で当社が想定していた以上に引合いが非常に増えています」

――協働ロボットは競合が多いと思います。どう差別化されますか。

「海外製には低価格のものがたくさんあります。当社は産業用ロボットからスタートしたメーカーで、工場で長く使われることを想定しています。ですから安全性、信頼性、使いやすさの3点が他のメーカーより優れているのではないかと自負しています。実際、タブレットのティーチペンダントの使い勝手、ハンドの先を持ってのダイレクトティーチ時の動きの軽さ・滑らかさなどで高い評価をいただいています」

■一発で良品をつくるCNC

――今秋のJIMTOFでは何をテーマにされ、どんな価値を訴求されますか。

FAが当社の中では1番中心的な商品展示になります。従来の加工性能の追求から環境負荷の低減、労働力不足の対策へ観点が増えています。また、加工現場のオペレーターが世代交代する中で技術継承をどう進めるか。デジタルネイティブの世代です。当社としては従来から取り組んでいるCNC技術そのものの強化に加えてIoTAI、デジタル技術、それとロボット技術を組み合わせた解決策をテーマとして取り組んでいます。今回の大きな目玉としてプラットフォームを刷新したCNC500i-A』、『αi-D』シリーズサーボに力を入れます。500i-Aは工作機械を自然に制御し、かつわかりやすく操作できるうえ、設計プロセスを効率化できる機能も追求しています。ポイントは精度の高いシミュレーションができること。実際に削る前に加工面の状態などがわかります。これにより良い条件を導き出し、一発で良品をつくることを目指します」

「ロボットでは協働ロボットと多彩なアプリケーションの2つのテーマを掲げます。協働ロボットは今回もダイレクトティーチによる使いやすさ、工作機械との連携などを実感していただきます。多彩なアプリケーションではサイバーセキュリティに対応した世界初のコントローラー『R-50iA』に力を入れる一方、高精度・高剛性ロボットによる機械加工、FSW(摩擦撹拌接合)も展示予定です」

「ロボマシンはロボドリル、ロボショット、ロボカットがあり、ロボドリルは先ほど申し上げたようにEVなどの部品の大型化、工程集約に対応できるような機種を用意します。熟練者でないオペレーターが増えてきていますので、技能を支援する機能も紹介します。ロボカットは機械幅800㍉の大型機による高精度加工の実演を予定しています」

6面リレーインタビューファナック・山口賢治社長P2.jpg

加工性能を向上させる一方、環境負荷を低減する「αi-D」シリーズサーボ

■人手不足と環境対応に力

人手不足は加工の現場だけでなく、機械メーカーやシステムインテグレーターでも問題になっている。ファナックはそれらを広くサポートできるよう、デジタルツインを利用したシミュレーション関連商品に力を注ぐ。一方で省エネも重視する。サーボモーターそのものが省エネになり、機械は暖機運転レスで立ち上げられる。デジタルツインを使えば試し加工の回数を大幅に減らせるという。



2024910日号掲載)