インタビュー
ニデック 副社長執行役員 機械事業本部長 西本 達也 氏
- 投稿日時
- 2024/09/11 16:47
- 更新日時
- 2024/09/11 16:50
29年までに工作機械トップを目指す
ニデックの西本達也副社長は数々のM&Aを成約させた人物。これにより活動領域を広げる同社機械事業本部の司令塔を担う。またニデックドライブテクノロジー、ニデックマシンツール、TAKISAWAの会長を兼任する。同氏にニデックが進めるM&Aについて「イーアクスルの内製化が狙いなのか」「次なる買収は」など業界注目の質問をぶつけ、2029年に工作機械メーカートップを目指すというロードマップを問うた。
――ニデックに入られた経緯は。
「さくら銀行(現・三井住友銀行)でM&Aを担当していた当時、制御装置を作っている大三工業の買収先をどこに話を持っていくかと悩んでいました。ちょうど業界紙を読むと日本電産(現・ニデック)がシンポ工業買収、という記事が一面にあり『中小型モーターへ進出』と書いてありました。制御とモーター、『これだ!』と」
「さくら銀行は日本電産と取引はありませんでしたが『同社人事部が金型職人を探している』と聞きつけ、半ばだまし討ちの様に『金型職人を紹介しますよ』という風を装って日本電産を訪ね実際は大三工業のM&Aの提案を投げたのですが、当然つまみ出されました。ぶつくさ、ふてくされて帰ってきたら『永守だ。明日8時に来てくれ!』と電話があり、翌朝行くと『本当にその会社を売るのか。この場ですぐ電話してくれ』となり、次の日の朝に大三工業に訪問して永守が『いっしょになりましょう』と。その後紆余曲折ありましたが成約に至りました。それをきっかけに永守との長い縁が続き2009年に入社しました」
――機械事業本部などの進捗を教えてください。
「ニデックには6カテゴリーあり私が担当するのが機械事業本部で減速機事業、プレス機事業及び工作機械事業で成り立っています。減速機事業は1995年にシンポ工業がグループ入りして以後、100億円台の売上でしたが2012年あたりから海外展開を開始し23年度で395億円の売上になりました。プレス事業は1997年にグループ入りしました小型プレス機のキョーリからスタートし、中・大型、超大型と買収を進めつつ、それだけでなく送り装置、アンコイラー、レベラーなどのメーカーをグループに加えることでライン一式を構築できるように。それが奏功し圧倒的に高い利益率を確保しました。工作機械事業へはこの成長、そして高収益化モデルを参考にし、現在育成の途上にあります」
――工作機械事業については。
「旧・三菱重工工作機械がニデックマシンツールとして21年にグループ入りしたのが始まりです。これがニデックグループの成長に大きな好影響を与え、事業成功の確信を得ました。ただ、工作機械で歯切り盤と門形五面加工機の市場規模は決して大きくない。その後『大票田はマシニングセンタだ』と永守から電話があって『売上はかくかくしかじか、機械は良いが、大きな赤字があるOKKという会社から支援要請がきてます』というと『OK。すぐ買え。利益が出るようにすればよい。1カ月でやれ』と。こうした経緯でニデックオーケーケー(旧・OKK)を22年に買収。23年にイタリアのパーマ社、岡山のTAKISAWAと続きました。TAKISAWAは今、グループシナジーもあり利益率が格段によくなった。三菱重工工作機械も含めニデックに入ると利益が改善していますが理由は『決定の迅速化』『リードタイムの短縮』『ユーザーへの訪問の強化』の徹底です」
■イーアクスルよりもシナジー重視
――M&Aは当初イーアクスルの内製化が目的とみられていましたが。
「当初からイーアクスルを念頭に置いたわけではありません。たまたま車載事業の幹部がイーアクスルに使えそうだ、と気づきを得て対外的に話をしたので、同内製化が目的とみられるようになりました。本来の狙いは相互のシナジーとプレス事業で知見を得た成長・高収益化モデルの横展開です。例えば歯車加工機と旋盤、歯車機械と減速機といった組み合わせは極めて強力なシナジーを発揮しています。ロボットの手首・関節に使われる波動歯車減速機や根本軸に使われるサイクロイド減速機など、自社で歯車加工機を作れ、密に連携できることが競合メーカーに対して高い競争優位性となります」
「今は工作機械の研究・製造・販売の最適化を迅速に進めています。営業部門はほぼ一体化しました。マシンツールの大型機とオーケーケーのマシニングセンタをマシニングセンタディビジョンとして一体化し開発を強化しました。内製化という意味では、好調なデータセンターの水冷システムについてはTAKISAWAの旋盤を積極的に活用しています」
――現在、工作機械部門の売上は1200億円ほど。売上規模の大きな競合が多くいますね。
「1500億円から2500億円規模の工作機械メーカー群があり、その先に最大手の5000億円前後と競合がいます。2000億円グループを超えるのが社内目標で27年、最大手を超えるのが29年です。社内では更に一年前倒しして、達成するロードマップを描いています」
――ロードマップには放電加工機や複合加工機などのラインナップも必要では。
「複合加工機は現在の技術の延長線上で開発は可能です。またヨーロッパには複合加工機のいい会社が多くありM&Aも視野に入ります。放電加工機は高収益化できる道筋が見える『ここぞ』という企業があればM&Aも含め将来的には検討していくとは思いますが、現時点では白紙ですね。ちなみに半導体製造装置カテゴリーは世界規模でみると工作機械の市場規模の倍ほど、20兆円あります。夢がありますよね。だから研削盤はラインナップに加えたい。そうするとダイヤモンド工具なども必要になってきて…と夢が膨らみますね」
(2024年9月10日号掲載)