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インタビュー

村田機械 取締役副社長 (工作機械事業部長) 村田 洋介 氏

量産で培った自動化をあらゆる現場に

旋盤中心の工作機械と板金加工機を手がける村田機械。工作機械は内蔵型の内製ガントリーローダーによる自動化に強く、自動車部品の量産ニーズに合致し成長してきた。だが村田洋介副社長は「我々の工作機械は量産だけではない」と語る。自動車業界の投資は軟調だが、高度な自動化と汎用機能を武器に中量多品種生産の現場へも広く機械を提案していく。板金加工機はファイバーレーザーを軸に成形とタップ機能を加えた独自の複合機が好評。顧客のツボを押さえた製品群で成長を果たす。

――貴社の工作機械は量産に強い印象です。主力は自動車ですか。

「国内はもともと大半が自動車向け。ただコロナ禍前に各社が積極的に投資され、設備にやや過剰感があります。その関係で今は軸受や建機、油圧機器等の比率が上がっています」

――ガントリーローダーを用いた自動化が得意です。

「平行2軸旋盤だけでは自動車部品の量産に適したものとは言えません。ガントリーローダーが搭載され、機械と同じコントローラーで制御できることが強みです。サイクルタイムは(他社に)引けを取りません。最高速や加減速に優れるだけでなく、モーションコントロールに力を入れてきました。自動倉庫のクレーンにも使う技術です」

――業界全体の市況が芳しくないですが、工作機械の景況感は。

「日工会の会員企業も自動車比率が高い企業は回復が遅れ気味。我々も御多分に漏れずです。あとは上がるだけですが、ずいぶん底が長い。自動車の動向が見えない部分があります。各社様々な検討をされる中、既存設備を有効活用する動きもあります」

――工作機械は自動車以外の比率を高める考えですか。

「そうですね。世の中には大量生産ではなく自動化に踏み切れていない現場が沢山あります。そこで最初に自動化を行う際に培った技術でお手伝いができれば。ところが皆さん『村田機械さんは大量生産向けでしょう』と仰います。その分野で評価されている証で有難いのですが、敷居が高いと思われているようで。先入観をどう払拭しようかと思っています」

――実際は汎用的に使える。

「平行2軸旋盤の当初の開発の狙いはワークの裏表を1台で加工し、搬入出も自動化すること。プログラムを組み素材を供給すれば数時間や半日はオペレーターが付かなくても自動で動いてくれて、お客様の売上が伸びるというコンセプトです。それがある時点で自動化ラインに使える機械と評価され、我々もそうシフトしました。原点に戻り、数十個単位の仕事が定期的に入るような業態でも興味を持って頂ける準備をします」

――中量多品種も含め広い業界を相手取るということですね。注力したい国は。

「動きがあるのはインド。90年代は建築現場で重機を見ませんでした。今はかなり投入されスピードが上がっています。資本が投下され道具が揃い、物事が加速する段階に入っていると感じます。人材も若く非常に伸び代があります」

ファイバー複合機に強み

――板金はタレパンやレーザー加工機、複合機等を手がけています。

「お客様の課題により提案する設備を決めますが、ファイバーレーザー主体の複合機を勧めることも多いです。元々CO2レーザーを手がけておらずレーザー加工機では後発。ですがこれが逆にうまくいきました。CO2をお持ちのメーカーはファイバーの登場時に発振器を載せ替えて対応されます。我々はファイバーの高い加工能力を元にイチから設計したので剛性が高く、非常に評価頂きました。さらに、レーザー単体機ではできない成形やタップ加工を載せた複合機を開発しています」

――板金分野の市況は。

「堅調です。複数の業界から仕事を請け負う中規模のお客様が特に積極的に投資されています。懸念は人手不足による建設の遅れ。今は影響ありませんがサッシやパネル、空調などが関係します」

――注力市場は工作機械と同じインドですか。

「インドはインフラ整備が進むと建材も必要。暑い国なので空調や冷凍・冷蔵設備は伸びると思います。ただインドに限らず、単純な2次元レーザー加工機は中国メーカーが市場を席巻しています。我々は展示会(印で1月開催のIMTEX FORMING2024)でも、2次元ではできない成形加工やタップが入ったサンプル品を沢山並べました。タレパンでここまで加工できるのかと興味を持って頂き、好評でした」

―― JIMTOF2024ではどんな提案を。

「自動化を軸に、お客様に身近に感じて頂ける見せ方をします。今までの自動化は材料ストッカーへの投入は人手、完成品も人が取り出していました。そうした人の作業を軽減し、多品種生産時の段取り替えもできるだけ人を掛けない。自動化は生産量が多く生産技術がいないと難しいと思われている方々に、自動化の第一歩として採用頂けるような提案を行います。『超量産向け』と思われているイメージを払拭します」

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ファイバーレーザー加工機に成形・タップ加工を加えた複合機「LS2512HL」。剣山型のテーブルにより厚板も加工でき能力も高い。溶接工の減少で代替となるボルト接合が増えタップ加工の需要は増しているが、同機はM2~M12まで対応できる 

■オープンインターフェースで板金DXを支援

板金業界でも進むDX。その推進にはデータ間の互換性が重要だが、村田機械は独自のオープンインターフェース「SCPX」を開発し、ユーザーのデータ連携を支援する姿勢をとる。「多くの板金機械メーカーやCAD/CAMメーカーとデータ連携できる」(同社)ため、現有資産の有効活用が可能に。適材適所のマシンを使いたいユーザーの支持を得ている。


(2024年9月10日号掲載)