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インタビュー

トーヨーエイテック 取締役 常務執行役員 岩井 利光 氏(工作機械事業部門 統括補佐)

歯車研削ラインとして自動化提案

マツダから分社独立したトーヨーエイテックは、内面研削盤の国内販売でトップクラスを誇る。自動車メーカーとして、また内面研削盤メーカーとして培った製造技術をベースに近年、歯車研削盤の販売も始めた。

今年は年末から大繁忙期を迎えると話す岩井利光常務執行役員。リフレッシュするため最近は妻や愛犬と中四国方面にキャンプに車で出かけたり、プロ野球・広島カープの試合を観戦したりする。

――貴社を取り巻くビジネス環境に変化はありますか。

「よく言われますが、お客様はモノではなくコトを求めるようになってきたことをよく感じます。当社は高精度、高生産性を特長とした研削盤などのモノを販売しているわけですが、お客様は自社の生産環境の中で停止することなく、安定した品質で生産できるコトを求めます。歯車研削盤においても高品質でノイズも出ない部品を生産することを求めているわけです。ニーズとしてはカーボンニュートラルもありますね。機械の加工性能だけでなくお客様が進める生産・環境改善活動などのコトに対して、当社の機械をマッチさせ提供価値を高める提案を行うことが大事です」

――先ほど工場の組立エリアを見せてもらうと、今はスペース的に余裕がありそうでしたが、注文が徐々に増えているので年末にかけて機械で埋まっていく見込みだそうです。

「受注は、去年はあまりよくありませんでしたが、年末を底に回復しています。国内もそうですが、特に中国、インドからの注文が増えています。当社が得意とするコンプレッサー、べアリング、半導体製造装置向けです。今年度末に納める仕事は結構な量があり、この傾向が来年度以降も続くのかを注視しています」

――立形の複合研削盤の需要が高まっているそうです。

「自動化、省人化の要求が増す中で、内径・外径・端面の研削を1台でできる複合研削盤は人気です。機械単体に加え測定機・ストッカーにロボットや搬送機を付けてセット販売することも増えています。これらによりお客様の品質と生産性を高めることができます」

――歯車に関わる貴社の研削盤の生産量と主な納入先は。

「歯車の内径・外径・端面を加工する研削盤を含め、年間20~30台生産を予定しています。納入先として多いのはトランスミッション関係を含めて自動車、ロボット関係。建機向けも増えています。国内外の比率はおよそ46です。来年度以降は自動車分野向けが大幅に増え、年間で40台超の生産見込みです」

――いち押し製品はJIMTOFMECTで紹介された歯車研削盤「TGG262W」ですか。

「そうです。機械剛性や熱剛性の高さはもちろんですが、内製の主軸や砥石軸、操作性の優れた対話式NCTOYOMATIC)が強みです。内面研削用のNCがなかった1980年代には自社でNCを開発しました。当初から対話式の画面を使用しお客様が簡単に操作できることを第一にしていますので、使いやすいユーザーインターフェースになっています。加えて省人化に向けチャックや砥石の交換を簡単に行えるよう工夫し、段取り時間を大幅に減らしています」

――貴社は内面研削盤の国内販売ではトップクラスですが、どうして歯車研削盤を近年上市されたのですか。

「開発はかなり前から進めており、2012年のJIMTOFで初号機を発表しました。歯車研削はお客様の要求が高く、吸収すべき技術も多くありましたが、それを採り入れれば後発ながら、トップを走るメーカーを超える商品も開発できると考えました。当社には多軸制御で高速回転軸をもつ内面研削盤やワイヤーソーで培った技術があります。それに加えて、歯車研削盤と立形複合研削盤をロボットでつなぐ歯車研削ラインとしてセット提案できるという強みがあります」

――今後の製品展開や新たな需要開拓の計画は。

「歯車研削盤のラインナップ拡充を進めて行きます。当社が得意とする高速回転主軸・砥石軸を搭載した小径ワークに対応した歯車研削盤や、内歯車の創成研削と内径・端面研削を1台で加工する内歯・内面複合研削盤を開発予定です。これにより外歯車・内歯車の研削工程をすべて当社で提供できるようになり、お客様に様々なコトを提供できると考えています。また、自動化・省人化に向け、ワークだけでなく砥石も自動交換できるようにし、更に自動交換後に必要な各種位置合わせも様々なセンサーを用いて自動で行えるようにしていきます。来年度以降は、歯車研削盤の更なる台数の上積みを狙っていきたいと考えています」

9面減速機特集・トーヨーエイテック岩井利光常務P2.jpg

歯車研削盤「TGG-26-2W」(左)と立形複合研削盤「TVG-20C-2S」をロボットでつなぐ歯車研削ライン

■トーヨーエイテック株式会社


1950年設立、社員669

広島市南区宇品東5-3-38

歯車の内径・外径・端面を加工する研削盤を年間20~30台生産

1929年、後に自動車メーカーとなる東洋工業(現マツダ)の一部門として研削盤の製造を開始。1989年にマツダから分社独立しトーヨーエイテックとなった。工作機械、自動車部品、表面処理の3事業を柱とし、売上高の割合はおよそ6:3:1。工作機械事業は内面研削盤(横形・立形・超大型)、ワイヤソー、歯車研削盤などで構成。本社のある広島工場(工作機械、自動車部品、表面処理)、東広島工場(東広島市、自動車部品)、東日本工場(埼玉県深谷市、表面処理)、中部日本工場(愛知県春日井市、表面処理)の4つの製造拠点をもつ。



(2024年7月25日号掲載)