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インタビュー

キャドマック 開発部 部長 渡邉 光行 氏

2次元展開図をクラウドで3次元化、溶接・ロボット向け提案も

シートメタル用CAD/CAMソフトの開発・販売・メンテナンスを手掛けるキャドマックは、昨年創業から30年を迎えた。ユーザー数は2500社以上、納入数はおよそ5000シートに及ぶ。同社開発部部長の渡邉光行氏は「お客様に支えてもらえた30年」と振り返りつつ、「今年は現場に変革を起こせるツールをお客様に届けたい」と意気込む。同社が推すデータ管理ソリューションと開発を進めている溶接・ロボット分野への提案について話を聞いた。

――20224月にプレバージョンを発売したデータ管理システム「MACsheet DataPocket」ですが、今年はクラウド上で2次元展開CAD2DCAD)を3次元CAD3DCAD)化する「MACsheet 3DPocket」を本格的に提案していくとのこと。まずはDataPocket3DPocketの提案を強化する背景を教えてください。

「前提として2DCADは世界に類を見ない優れた日本のプロダクトである一方、それが邪魔をして3D化が遅れた事実があります。当社は深刻な人手不足に対し、職人でなくとも素早く、簡単に、ミスなく作業できるよう3D化を推進してきました。しかし、これだけでは急激な人口減少の波に太刀打ちできなくなりつつあります。ここ数年、生産現場だけでなく様々な業務においてDXに取り組みたいというお声をいただいていますが、横断的にシステムを組むことができる人材やツールは少なく、デジタル化しても会社全体として業務改善につながらなかったケースも散見されます。DataPocketは会社にあるデータをクラウド上に入れ込んでいただくことで、図面や画像データを素早く検索できるようにするデータ管理ツールです」

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MACsheet DataPocketの活用イメージ

――他のデータ管理システムとの違いは。

「我々は創業以来、当社のシステムを使うためにお客様の持っているデータをこういう形に変換・整理してくださいといった提案はしていません。それは、これまでお客様が行ってきたファイリング方法には様々な理由があると考えているからです。そのためお客様のデータには手を付けず、取り込んだデータを緩く繋ぐ。インターネット検索のように、それぞれの立場の人が過去の類似図面や見積もり、納期、失敗事例など必要な情報に的確にアクセスできるようにし、過去の経験を生きたデータに変換したいと考えたのがDataPocketスタート地点です。お使いの他社製のCAD/CAMシステムとの変換・データの受け渡しも可能で、これまで築いてきた資産を無駄にしません」

――3DPocketは。

3D化を推進する中で板金製造業が2Dから3Dに移行できない理由として、2Dデータを3D化できていないという問題がありました。リピート品の多い板金業界では、多いところで過去の2D図面データが数十万枚残っているケースもあります。3DPocketはクラウド上で2DCAD3DCADに変換するため、お客様はデータを投げ込めばいいだけで使い勝手に優れます」

――これまでのソフトでも3D化できそうですが。

「確かに従来からのソフトでも3D化できますが、これまでのオンプレミス型ソフトはPCにそれなりのスペックを要求しますし、3D化する際はそうした高スペックなPCとオペレーターをその作業のために占有することになってしまいます。3DPocketであればクラウドに投げておけば結果がかえってくるので社内リソースを無駄にしなくて済みます。また、読み込んだデータに修正を加える必要があればMACsheet SEG5でデータを加工できますし、板抜きの際に2Dデータが必要になればそれも取り出すことができる。これまで積み上げてきたデータを活用可能な形にするのがDataPocket3DPocketです」

■溶接・ロボ向けも

――今年は溶接やロボット向けのシステムの展開にも力をいれているようですね。

「これまで溶接は熟練作業者が取り組むべき難しいものとされてきました。近年、誰でも安定的に作業可能な性能の良いファイバー溶接機が出現し、さらに価格も中華系製品であれば数百万円と国内メーカーの10分の1ほど。試しに導入する企業も増えています。そうした中で問題となるのが適切な治具の作成です。誰でも簡単に溶接ができるようになっても、溶接時や検査時に活用可能な治具作成は未だノウハウが必要で時間がかかっています。ここをG5で簡単にしたいと考えています」

――G5をさらに高度にしていく?

「実は既にG5上で治具データを作成することはできます。実際に、あるユーザー様がダクト用の治具作成にG5を活用しています。しかし、誰もが簡単・的確に治具データを作成できるかというとそうではありません。必要な機能をリサーチしながら今期中を目途にG5への実装を進めています」

――ロボットへの取り組みについても教えてください。

「プレスブレーキ工程をロボットを使って自動化するソリューションを今秋にも発表予定です。日本人は器用なため曲げ作業の操作を人力でこなしてきましたが、欧米では数十年前からロボット化が進んでいます。ここにきて深刻な人手不足と現場の労働安全の観点からロボット化に注目が集まっています。現在、機械メーカーやロボットメーカーと共同して取り組みを進めています。このように様々なメーカーと取り組みを進められるのも当社の強みであり、その強みを活かした提案になります」

――今後について教えてください。

「昨年30周年を迎え、お客様に支えてもらえた30年だと改めて感じています。板金についてお客様の方が我々の100倍、1000倍ご存知です。お客様の声のおかげで今の当社があると思っています。これからもそうした気持ちを忘れずに取り組んでいきたいと思います」


■一言メモ

機械産業などは踊り場にあるとされるが同社の景気は悪くないようだ。「半導体関係や建築関係などから需要があり世間ほどは悪くないです。特に配電盤関係などは過去にないほど忙しいと聞いています。また、レーザー加工機で厚板(6㎜以上)も切れるようになってきつつあり、そうしたところからの新たな需要も増えています」(渡邉氏)

(2024年7月25日号掲載)