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インタビュー

タケダ機械 代表取締役社長 竹田 雄一 氏

投稿日時
2023/12/26 09:00
更新日時
2023/12/26 09:00

手間をいとわず本当に頼られる存在へ 

建設現場の状況が深刻すぎてなかなか見えづらいが、鋼材加工の現場にも人手不足の波が押し寄せている。重く長い形鋼を人力で扱うのは無理があり、だからこそ段取りを自動化したいというニーズには切実なものがあるのだ。中小形鋼加工機を得意とするタケダ機械は、自動搬入出機能や工程集約でこれらの課題を解決する。竹田雄一社長は自社の強みにカスタマイズ力を挙げ、「本当の意味で頼られる存在を目指す」とする。

――中小形鋼加工機を得意とされています。足元の需要は。

「いわゆる端境期と言いますか、端的に言えば良くも悪くもないですね。半導体工場やデータセンターなどの大型構造物は好調なので全体の需要も旺盛に見えますが、一方で今年度の鉄骨需要は400万㌧を割る見込み。つまり実需としてそこまで良くはありません。地方の中小案件は建設の延期や中止が顕在化しています。大型案件の仕事を受けているファブリケーターは数年分の受注残を抱えていますが、中小案件を手がける企業はそうでない。二極化が進んでいます」

――中小案件が先送りになる背景を詳しく教えてください。

「鋼材価格の高止まりと人手不足に伴う人件費の高騰で、採算の合わなくなった案件が延期や中止になっています。工期がずれ込めば鋼材の供給タイミングもずれますので、本当はもっと生産できたはずなのに生産量が上がらない。そういうサイクルに入っている気はしますね。とはいえ大型案件は動いており建設計画自体はあるので悲観はしていません。あとは来年4月からはじまる建設業の『2024年問題』が、どこまで人手の確保や工期に影響するか次第でしょうか。状況を注視したいと思います」

――建設の人材不足の話が出ましたが、鋼材加工の現場も人手が足りないと聞きます。

「ファブリケーターもその外注先の企業も、総じて人手不足にお悩みですよね。日本全体がそうなのでしょうが、鉄骨関係はより顕著な気はします。我々も形鋼加工機に自動搬入出機能を付けて提案していますが、近年はオプションにも関わらずほぼ必ず選択いただくようになりました。プレートに孔をあける『オートボーラー』も自動化仕様が好調です。形鋼は小型でも重量物なので、人力では段取りができずどうしても手間がかかる。自動化ニーズは今後も下火にならないでしょう。私も現場をいかに楽にするかがタケダの仕事だと考えています」

――人手不足対策の観点から、提案に力を入れる機種を挙げるとすれば。

3軸のドリルによる同時孔あけ機能と切断機能を備えた複合機『CBFシリーズ』です。標準タイプのほかにATC仕様もあり、これは異形孔をあけたり、ドリルを摩耗に応じて交換するなど段取りの削減に重宝されています。ATCに加えミーリング機能を搭載した機種もありますが、こちらは様々な鋼材の一次加工を行う企業における工程集約目的。いずれもオプションの自動搬入出機能を付ければ、鋼材をチェーンコンベヤの上にラフに置いて加工条件をセットするだけで完品が払い出されます。加工速度の面からも近年はこうした複合機が需要の中心になっています」

■NC装置を刷新

――人手が不足するとオペレータの教育も難しくなり、そのぶん機械にも簡易な操作が望まれそうです。

「操作性に関連して、実はこのほど数年がかりでほぼすべての機種のNC装置のリニューアルが完了しました。独自のNC装置を市場で定評のある汎用品に切り替えたわけです。在庫不足で迷惑をかけないためですが、外部機器との通信の容易さやタッチパネルの採用など使いやすさも確実に上がったと感じます。例えば汎用NCが音声入力に対応すれば我々の機械もそれを享受できるわけで、長い目で見た進化の可能性も広がります」

――人手不足のほかにニーズの変化は感じますか。

「採算性の向上のため、お客様の現場で内製化が進んでいるのを感じますね。例えば大物メインのファブリケーターが、今まで外注していた小物の加工を自社で取り込むなど。形鋼の一次加工を手掛ける企業が鋼材の切断だけでなく孔あけまで行う流れも加速しています。ユーザーの裾野が広がると色々な加工を要求されますが、これは裏を返せば成長のチャンス。挑戦は会社にとってプラスですから」

――カスタマイズ対応もいとわない姿勢を貫かれています。

「都度設計が必要なので、もちろん手間がかかるのは紛れもない事実です(笑)。特にやり始めた当初は苦労もしましたが、小言を言いながらもカスマイズを続けたことでノウハウが蓄積され、自分たちの考え方も変わってきましたね。今ではタケダの大きな武器に育ったと感じますし、ここまでくればさらに前のめりにお客様の要望に応えたい。困ったときに『タケダならやってくれるんじゃない?』と自然に相談が集まるのが、ある意味本当に頼られる会社の証だと考えています」

――2021年に設立50周年を迎えました。改めて自社の強みは。

「切断・孔あけに特化した豊富な製品ラインアップと、繰り返しになりますがやはりカスタマイズ力ですね。最後に綺麗ごとを言わせていただくと、何だかんだと言っても前向きにやってくれる社員が大勢いるのが最大の強みかもしれません。人間だれしも楽をしたいはずですが、そこをぐっと踏みとどまって挑戦してくれる。カスタマイズは新製品開発にもつながります。まだまだ粗削りですが、真に頼られる存在を目指して引き続き進化を続けます」

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CBFシリーズは3軸ドリルによる同時孔あけと切断を可能にする

形鋼向けの複合機

(2023年12月25日号掲載)