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インタビュー

デンヨー 代表取締役社長 吉永 隆法 氏

投稿日時
2023/07/28 09:00
更新日時
2023/07/28 09:00

脱炭素に立ち向かうエンジン発電機メーカー
「新機軸製品をいち早く生み出す。それが私の使命」

エンジン発電機と溶接機を軸にコンプレッサや投光機、高所作業車などを製造するデンヨーは今月、設立75周年を迎えた。地球環境やBCPに対応した製品を多く揃え、2023年3月期は643億円と過去最高の売上高を記録。4月1日付で社長に就いた吉永隆法氏に今後の方向性を聞いた。

よしなが・たかのり 1963年福井県敦賀市生まれ。福井工業大学工学部(専攻は電気、電子)卒業後、デンヨーに入社。2年間の経営企画室を挟んで35年間は開発部門に所属。60歳。趣味は車とガーデニング。ゴルフも社長就任を機に再開する予定。

――社長にご就任されて3カ月と少し、率直なお気持ちは。

「主な当社製品には内燃機関であるエンジンを使います。ご承知のとおり世の中は脱炭素、カーボニュートラルの流れにあります。CO2排出量の少ない製品やカーボンフリーに対応する新機軸製品をいち早く生み出す。それが私が社長に任命された理由だと思います」

――開発部門が長かったとお聞きしています。

2年間の経営企画室を挟んで私は開発部門(福井工場)に35年間いました。モノを設計どおりにかつコストを抑えてつくるには、良い資材を適正価格で仕入れて量産に繋げるということが必要です。そういった仕事を含め、あらゆる製品開発に携わってきた。私が選ばれたことは嬉しい、反面、重責に身が引き締まる思いです。私の信念でもあるのですが、現状維持では衰退するという気持ちを常に持っています」

――開発部門ご出身の社長は珍しいのでは。

「そうですね。特に工場勤務を経験した人間が社長になるというのは、当社にはほとんど例がありません。でも当社とは規模が全然違いますがそんな例が最近、他の大手メーカーさんでも見られます」

――貴社の主力製品の今後の販売戦略は。

「主力は可搬形のエンジン発電機とエンジン溶接機です。お客様の要望に応えてモデルチェンジを重ね、国内販売でトップシェアを保っています。商用電源並みの高品質な発電性能が自慢で、大手テレビ局からも当社製品が指定されるのは、綺麗な波形だとテレビの画像や音響にノイズが入らないからです。それでいて長寿命で壊れないのも特徴のひとつです。時代に合ったいいモノをつくり続けます」

5面【新社長】デンヨー吉永隆法社長インタビューP2.jpg

新機軸製品である燃料電池式可搬形発電装置

■BCP需要に期待

――海外にも生産拠点があり、世界150カ国以上に顧客をお持ちです。

「生産拠点はマザー工場である福井、滋賀のほか、ベトナム、インドネシア、アメリカにあります。加えて100%出資のニシハツ(佐賀県唐津市)で防災用自家発電装置を製造しています。地域の特性やニーズに応じた最適な生産体制で、世界中のお客様に製品をお届けできる体制になっています」

――冒頭で脱炭素という話が出ました。

SDGSESG経営にも積極的に取り組んでいます。アイドリングストップは自動車では当たり前になりましたが、当社ではエンジン溶接機に自動アイドリングストップ機能を2007年から搭載しています。また、エンジンオイルや軽油が万一、漏れても外部に極力流さないエコベースをラインアップしています」

――トップシェアの可搬形製品以外で強化したい製品はありますか。

BCP対策、停電対策として需要がある非常用発電機に力を入れたいと思います。一般停電用発電機の販売は顕著で、防災用自家発電装置に強いニシハツとコラボしながら販売を拡大していきたいと思います」

「アフターサービス、メンテナンスも非常に大事で、今年3月に千葉県佐倉市に1メガ㍗クラスの大型製品のメンテナンスが可能なサービスセンター関東を新設しました。2025年には岡山県にサービスセンター西日本を開設する予定です。これまでは全国に60ほどある協力会社様が当社製品のメンテナンスを担ってきましたが、発電機がどんどん大型化し対応が難しくなってきたためです」

――環境優良製品はほかにありますか。

「脱炭素社会に向け、水素混焼エンジン発電機や水素専焼エンジン発電機、水素を燃料とする燃料電池式可搬形発電装置など、次世代エネルギーに対応した製品の量産化を目指しています。2025年には大阪万博があり、クリーンな電力が求めれると思うので、水素専焼発電機で会場に電力を供給したいです」


今は技術者も話せないとダメ

吉永社長は気さくによく話す。「昔の技術者は話せなくてもよかったが、今はお客様のところに行って喋れないとダメな時代です。私の開発部時代を振り返ると、営業員と一緒になって営業していたんじゃないかって気がします」。大切にしているのは3現主義だ。「現場に行き、現物を見て、現実を知る。現場を知ることは早期の気づきにつながります」。