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インタビュー

ナンシン機工 代表取締役会長 竹澤 薫 氏

投稿日時
2023/05/17 09:45
更新日時
2023/05/17 09:55

自動化装置や測定機器に注力「小粒でもピリリと辛い山椒の実でありたい」

生産財販売のナンシン機工(長野県茅野市)が4月、創業60周年を迎えた。野村ダイカスト工業所の商事部門が工作機械および機械工具類の仕入・販売業務を始めたのが発端。長野県内でトップクラスの取扱い製品数を誇り、関東・中部エリアもカバーする。近年は自動化装置や測定機器に力が入る。同社に51年間在籍する竹澤薫会長に信条と抱負を聞いた。

たけざわ・かおる 1949年、長野県駒ケ根市生まれ。72年にナンシン機工に入社し、98年代表取締役社長、2005年野村ユニソン取締役副社長(兼務)、21年に藤森正志氏がナンシン機工代表取締役社長に就任、現職に就く。「周年行事では必ず舞台でやらせてもらってます」と言うのはカントリーミュージック。テンガロンハットを被り、高校生で始めたアコースティックギターを手に歌う。十八番は「テネシーワルツ」だそう。

――最近の景況感は。

「地方にいて日本全体の景気はわかりませんし、当たりません。ただお陰さまで、当社の2022年度(226月~235月)の売上高は3月終了時点で見ると前年同期を数%上回ります。顧客である製造業はそれなりに受注を抱えているようです。ただしこの1年、月始めに今月は安泰だと言える月はほとんどありませんでした。やはり先が読みにくい時代です」

――貴社が近年力を入れている事業は。

 「野村ユニソングループの一員として様々な企業と意識してコラボレーションし、既製品単体でなく自動化を伴う装置やセルに力を入れています。差別化できますし、従来商品では価格の比較になります。提案力をどう認めてもらうか。それが日本製品のシェアを高めることにもつながります。製造業の皆さんはどうやって自動化を図るか、夜間稼働させるか、賃金を抑えるかを考えています。そこに提案できるものを用意したいと意識しています。一部、本日の展示会(60周年を記念して自社展を41415日に開催)でも紹介しています」

――プライベートショーを見させてもらって驚いたのは、工作機械だけでも実機が7台並び、しかも機械単体というものは1台もなく、ロボットやガントリーローダー、APCと組み合わせてすべてに何らかの自動化が付加されていたことです。

「時代を反映し、様々なSIerさんと連携しています。協力会社にすべてを任せるのではなく当社も一緒になってスキルアップしながら提案しています。ロボット開発をするグループ会社もあります。これらは間違いなくユーザーさんが興味をもってくれます。今回は実績が出はじめている小型画像計測装置や5軸加工機も用意しました。5軸機はAPCを使って何十時間も連続して稼働できるだけでなく、加工精度も高い。このメーカーの3Dプリンターを搭載したマシニングセンタは1億円もし、その種の仕事を抱えるところしか使わないというものですが、当社でも販売実績が出てきました。いい機械はユーザーさんに高く評価してもらいたいという思いがあります」

――5年ぶりの自社展は自社会場ということとリアル開催にこだわられています。

「どんなに会社が変わっても熱意を伝えなければなりません。誠実で感謝の気持ちがあるのは当たり前で、その思いをどうやって伝えるのか。何年たってもこうした催しは続けたいです。ただ最近、迷いだしたのはChatGPT(米オープンAIが開発した対話型AI)の存在。熱意の言葉なんていらないのではないかと。これが普及すれば取り残される人や判断を間違える人がいるのでは。今の時代に必要とされるのはAIで導き出される答えを見極める力でしょうね。便利だからいいに決まっているとは思いますよ。コンピュータなんて要らないといった時代もありましたが、今やなければ仕事にならない。それと同じで慣れるとAIがなければやりようがなくなるかもしれません。採用試験の合否をChatGPTで決めればいいじゃないかという声もあります。どう考えればいいのか、まだ頭の整理がつきません」

■拡大よりも成長を

――機械工具類の仕入れ販売を始めて60年。これまでの歩みとこれからの抱負をお願いします。

60年のうち私がここに身を置くようになったのは51年。途中グループ会社の工場に12年ほど出向していましたから正味39年ですね。お客様に支えられて今があります。60×1ではなく1×60なんです。1年ずつの積み重ねの60回という非常に気の遠くなるような年月はすべてのお客様や仕入先様、銀行様、地域の皆様のおかげであることを節目節目で実感します」

――意識して気をつけていることはありますか。

「時代が変化しているのでお客様の利益を生み出す提案をし続ける企業でなければなりません。それには若い人の感性が必要。私がその抵抗勢力になっては経営を妨げます。社員の提案を実現してやる側に回ることが私の仕事かと思います。人は権限と責任を与えれば相当なことができる。73年の人生と会社の60年を振り返って実感します。加えて同業の皆さんの後ろ姿が見えなくならないように一生懸命ついて行くことが最低限必要です。小粒でもピリリと辛い山椒の実でありたい。これは私がいつも思い浮かべる好きな言葉です。ローカルにいる小さな会社だけどなんか頑張ってるよね。そんなふうに思ってもらえる会社でありたい」

――ライバルは多いです。

「当社は1万人の会社や売上5千億円の会社と競っているわけではありません。小粒でも伸びしろをもっていたい。規模の拡大よりも成長を大事にしたい。人格形成や商品提案力などの様々なファクターがじわじわーっと広がっていくさまを成長と言うのでしょうね」

6面ナンシン機工創業60周年・竹澤薫会長インタビューP2.jpg

コロナ禍で3年ほど使えなかった「念願の自社会場」(竹澤会長)で4月に開いたプライベートショーには64社が出展。自動機能を強化した工作機械も多く並んだ。来場者数、成約額は当初の目標を大きく上回り盛況裏に閉幕した。

(2023年5月15日号掲載)