インタビュー
東亜精機工業 代表取締役社長 十時 理祐 氏
- 投稿日時
- 2023/03/31 09:00
- 更新日時
- 2023/03/31 09:00
根強い内燃機関需要をしっかりキャッチ
2025年に100周年を迎える「治具」のトップメーカー・東亜精機工業。オーダーメイドで「世界でたった一台の機械」である治具をつくるには先ず人づくりから、が方針だ。「治具づくり全般を見わたすことができ、なおかつ一芸に秀でている」人材の育成を目指している。近年ではEV需要に加え、従来からの内燃機関関連の需要もしっかりキャッチし成長を続けている。
――直近の受注状況はいかがでしょうか。
「コロナ禍の20年、21年は業績も落ちましたが22年は工作機械の回復に歩調を合わせて徐々に復調しました。今年に入って上向き傾向が顕著です。電気自動車(EV)向け部品の加工治具のニーズも増えていますが、内燃機関関連設備の更新需要も根強いと感じています」
――国内の内燃機関関連は、新規投資は様子見傾向と言われています。
「現有機の活用や遊休設備の再利用を目的とした引き合いも多いです。エンジン関連は自動車のみならず船舶、2輪車やバギーの需要もボリュームがあります。またインドで日本車が好調で、関連する設備投資も活況です。EVシフトだから内燃機関関連がシュリンクしていく、と悲観するのではなく、根強い需要をしっかりキャッチしていくことが重要だと考えています。今後の見通しとしては納入ベースで考えると7月後半から9月までは落ち込むだろうと予測しています。ただ、今年後半は、また少し動きが出てくると見ています」
――加工のこだわりはありますか。
「精度には特にこだわりがありますが、一つの例が測定です。加工してすぐの精度部品を測定するのと、時間をおいてから測定するのでは寸法精度が変わってきます。当社では20℃の測定室に精度部品を最低6時間以上おいて、精度部品全体が20℃になってから測ります。これはもう何十年も前から実施していて、当社では当たり前ですが、案外そこまでやっていない所も多い。また加工現場も空調管理をしていますので、従業員にとっては夏でも快適な職場となります」
――2013年に設立されたタイ拠点の業況は。
「アッセンブリーまでの完結には至っていませんが、部品づくりにおいては現地で高精度のものを作れるようになっています。昨今では日本での受注をタイで加工することでコストダウンに繋げています。またコロナ禍においては、日本の工場が停滞した時もタイ拠点は稼働していましたので、かなり助けられた部分も大きいです」
■システム更新で「治具一つから」に対応強化
――新たな取り組みなどはありますか。
「新しい生産システムを構築しており、今年の秋から稼働予定です。これまでも『治具一つからでもご相談ください』と提案していますが、それがよりスピーディになります。当社ではかねてより3DCADによる設計を行っています。ユーザー様にも3D図面を見て頂いたり、3Dプリンタで試作品を作って実物イメージを掴んで頂くなど、対応力を強化しています」
――エネルギー・素材価格が高騰しています。
「昨年の中ごろから2週間ごとに材料が上がっていき、今では1・5倍から2倍になっている状況です。心苦しいですが納入先には値上げの理解を賜っています。また早めに内示をいただいた案件は先行して材料発注をかけられますので、材料メーカ様にもご協力頂いてコストダウンに繋げている側面もあります」
――ユーザーに貢献できる一押しの製品はありますか。
「昨今、小型マシニングセンタにロボットを使用した自動化設備への投資が多くなっています。しかしロボット導入はティーチングやセッティング含め、費用も時間もかかります。当社の自動段替えシステムは、ロボットを使用せずに子治具を段替えできます。1日単位での段替えや異なるワークの加工といった多品種少量生産にも対応できます。生産するワークが変わっても、子治具のみの新規作成で対応できますので、設備コストの削減と省人化に大きく貢献できます」
――中長期的な目標をお聞かせください。
「現在、金属加工会社は高齢化が進み、若い人材の確保が困難な状況です。協力会社も廃業が多くなっています。当社でも特に製造部門の人材確保が難しくなってきていますが、自社の環境や待遇面をしっかりと整備し、モノづくり人材を育成していかなければならないと感じています。また、金属加工へこだわり、技能継承、内製化の推進、スキマ産業へのこだわりなどを通じて、時代に求められる新しい製品への治具を提案していきたいですね」
段替え治具
(2023年3月25日掲載)