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インタビュー

グリーソンアジア 営業・マーケティング統括マネージャー 蟹江 俊靖 氏

投稿日時
2023/03/13 09:00
更新日時
2023/03/13 09:00

歯車ニーズを全方位で攻略

自動車の電動化に伴い、ギヤノイズを抑えた「静かな歯車」が求められるようになってきた。歯車加工機にもワンランク上の精度が求められ、これまで以上に厳格な検査体制が必要とされるなど設備側の要件も変わりつつある。歯車加工機のリーディングメーカー 米・グリーソンの日本法人グリーソンアジアは、EVシフトに伴う歯車加工の新たなニーズを加工機・測定機・ソフトで包括的に取り込む構えだ。

――足元の需要動向は。

「シェアの大半を握るベベルギヤ用の歯車加工機やソフトが好調です。自動車やロボットの減速機などが活発に動いており、昨年から引き合いも伸びてきました。EVは国内では各社ともベストな工法を煮詰めている段階。これが徐々に動くことで202324年も忙しくなる見込みです」

――EV化で歯車にも静粛性が求められています。設備需要にはどのような変化が。

「歯車業界のトレンドの1つは全数検査。EVは走行音が静かで、歯車も不快な音や振動を抑える必要があるため従来より高い精度が求められます。要求精度が上がると不良品の発生率も高くなり、抜き打ち式ではない厳格な検査体制が期待されるわけです。我々が提供するレーザー式の測定機は打痕や歯車ピッチ、均一さを高速で検知可能。さらに歯車研削盤や搬送ロボットを組み合わせて『ハードフィニッシングセル』というユニットを構築し、高い生産性とインラインでの無人全数検査を両立できます」

――焼入れ後の全工程をセル化すると。

「そういうことですね。歯車研削、洗浄、測定を1ラインに集約。測定結果を即座に加工機へフィードバックし補正することで不良品も出さないというコンセプトです。日本での導入はこれからですが、海外では無人化やエラー防止の観点で導入が増えています。我々はこうしたハードの他に設計・解析ソフト『KISSsoft』も提供しており、これもギヤノイズ対策、及び最適化に効果的です」

――レーザー測定のメリットは。

「我々のレーザー測定機を使えば、歯面を全歯スキャンし3D的な可視化が可能です。歯車ピッチ・形状は従来も計測できましたが、レーザー測定ではそれに加えて高次ノイズやうねり成分まで可視化します。歯車は原因の推定が難しい『ゴーストノイズ』という振動・騒音が発生しますが、うねりの解析でこの原因を解明でき、結果的にノイズの低減につながります。今まで見えなかったレベルの騒音まで検知・解析・除去できるわけです」

■EV化で増える2段歯車と内歯車

――EV化で加工機にはどのような要素が求められますか。

EVでは駆動ユニットの小型化に伴って2段歯車と内歯車の使用量が大幅に増えます。2段歯車はノイズ低減のために歯車同士に非常に厳しい位相公差が求められますが、干渉のため2つの歯車を同時に仕上げるのが非常に難しい。これに対し我々は『コンビホーニング』という技術を提供しています。2段歯車を2つの砥石でワンチャック加工するもので、我々のホーニング盤『260HMS』が世界で唯一可能な工法です。別で加工して組み合わせるより圧倒的に精度を高められます。工程集約にもなるため足元で注目を集めています」

――内歯車に対するソリューションは。

「内歯車の課題は熱処理後の仕上げです。外歯はアクセスが容易なので通常の工法で研磨できますが、内歯車は干渉でそれが難しい。そこで我々が提案するのがパワースカイビング。工具とワークの回転を同期させて削る工法で、生材から削れるので加工が早く、ワンクランプで熱処理前の2段歯車を加工できるため注目されています。これを焼き入れ後の歯車の内面仕上げに使うのが『ハードパワースカイビング』です」

「焼き入れ後の歯車は硬く、工具寿命が課題です。従来は摩耗した工具を取り外して調整していましたが、我々のパワースカイビング盤は機内にカッター研磨装置を搭載しました。自動で工具研磨を行うことで交換が不要になり、機械の停止時間を減らせます。ハードパワースカイビングでは熱処理後の内歯車の仕上げが可能で、自動車メーカーもEVの量産を視野にこの技術に興味を持っています。電動化が進むほど欠かせない技術になるはずです」

――中長期的な目標を教えてください。

「我々は歯車加工機メーカーというイメージを持たれていると思いますが、実のところ単なる加工機メーカーに留まりません。測定機やソフト、設計ツールに至るまで歯車加工を全方位でカバーし、それぞれをリードするのが我々の方向性です。『歯車加工機のグリーソン』『ベベルギヤのグリーソン』ではなく『全てにおいてグリーソン』。このポジションの確立を国内でも目指します」



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歯車研削盤とレーザー式の非接触測定機をロボットで結んでひとつのセルに。噛み合い検査と同時にレーザーで歯車測定を行うため検査スピードが早く、生産性を落とすことなく歯車の全数検査ができる

2023310日号掲載)