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インタビュー

PERSONNEL CONSULTANT MANPOWER(THAILAND) 小田原 靖 社長

投稿日時
2024/11/11 09:00
更新日時
2024/11/11 09:05

日系企業が自ら育てたタイ企業に負けている

1994年にタイバンコクで設立された人材紹介会社「PERSONNEL CONSULTANT MANPOWER(THAILAND)」。日系企業に対する人材紹介を30年にわたって行い取引日系企業は約9000社、月間100人前後を紹介(最盛期には250人)している。小田原靖社長に人材面から見たタイの現在・過去・未来を聞いた。

――タイの景況をどう見るか。

「日系企業からは『不景気だ、不景気だ』という声ばかり聞こえますが、タイ自体はそこまで不景気ではないですね。人は動いており、いい会社がどんどん強くなっています」

――日系企業の市場環境が悪い原因は。

「人材の獲得という面でお話しするとタイのローカル企業が成長して、競争相手のタイ企業に日系企業が勝てていません。マネージャー層などの中核人材に関してコロナ前の2010年代は日系企業同士が戦っていました。今はタイの企業のほうが給料や条件がいいのでタイ企業に人材が流れています。日系企業の人事担当者から『Aさんはよかったので採用します。来月から来てください』といっても『そんな給料ではいきません』となります。企業の戦力となる中核人材が確保できていないのが、日本企業が苦しい一因ですね」

――原因は。

「タイの会社はみんな若い(設立して年数がたっていない)。ですからいい人材なら給料を高くして獲得できます。日系企業は30年の歴史があり、中途採用に例外的に高給を出せない。現地社長が、給料を上げても人材を確保しようと判断しても、本社が認めないというケースが多いですね。等級によって基本給が決まっているなどすでに給与設計されている中で、一人の給料を例外的に上げるのは難しいですよね。ただ、タイでの全体の給料を上げたり、出来る人には報酬を出すなど柔軟な対応をして人材の確保につながっている企業も出てきています」

――中国系企業は。

「人材の育成という面では弱い面があり実績のある日系企業に優位性があるかもしれません。30年前、日系企業が出てきた時は社長も営業や管理や製造の部長も工場長も全部日本人で現場作業員だけタイ人でした。それを30年でタイ人を育て管理職や役員、現地社長(Managing Director)までタイ人で運営しています。中国系企業も初期の日系企業の様に今は中国人が管理していますが、もし日系に学ぶとしたら、30年もかからず営業部長も製造部長もタイ人で運営できるでしょう。同時に先ほど述べたような日系企業の構造上の問題に突き当たります。30年もかからず10年で壁にぶつかるでしょう」

■タイは「工場」ではなく「市場」

――タイは人材面で自律的成長ができるようになった。

「繰り返しになりますが30年前、管理者側の多くの日本人とタイのワーカーで会社が運営されていた。2000年代になると経理や総務の部長がタイ人になり、我々にもマネージャークラスのタイ人の紹介依頼が多くなりました。コロナ前後から工場長、副社長、社長(MD)までタイ人で運営する会社が現れました。日本人が教育し、30年でタイ人が自分たちの力で会社を運営できるようになった。当然、日系企業で働いていて自分で立ち上げる人も増えてきました。それこそタイ人が立ち上げた機械商社もあります。これは日本人がもたらした素晴らしいことです。その反面十分タイ人で運営できるので『役に立たない日本人いらないよね』となってきました」

――今後進出する企業に助言は。

「それだけ給料が上がってきているということは『工場』ではなく『市場』になっているということです。飲食や小売りなどがマーケットを求めて進出してくるのがほとんどです。製造業でも安い労働力を求めて進出する時代ではとっくに終わっており、市場であるということを意識して付加価値を高めていく必要がありますね」