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インタビュー

NCプログラムを自動生成、切削の完全自動化へ  

投稿日時
2022/03/30 13:53
更新日時
2024/08/19 13:20

アルム 代表取締役CEO 平山 京幸 氏

金沢市に本社を置くアルム。祖業は自動化設備やソフトウェアのODM開発だが、2021年にAIを用いて3DCADデータからNCプログラムを自動生成するソフトウェア「ARUMCODE1」を上市し、注目を集めた。しかし同社が目指すのは「切削加工の完全自動化」。ARUMCODE1はそのために必要なピースの1つに過ぎないと平山京幸代表取締役CEOは語る。同社の目指すビジョンを取材した。

平山京幸代表取締役CEO。GIGABYTE社とコラボしたARUMCODE1の推奨PCを手に

――事業内容を教えてください。

「祖業は自動車や半導体向けの自動化設備およびソフトウェアのODM開発。大手企業の生産ラインを数多く手がけ、アジアや欧米など海外の工場での立ち上げ経験も豊富にあります。強みは機械設計・制御設計・SE・組立・加工など一連のエンジニアリング機能を全て有する点。搬送・検査・加工まで、自動化設備をオールマイティに手掛けられます」

――21年にNCプログラムを自動生成する「ARUMCODE1」の提供を開始されました。開発の経緯は。

「まずお伝えしたいのは、我々は『切削加工の完全自動化』を目指しているということ。ARUMCODE1は必要な要素の1つであり、NCプログラムを自動生成するソフトが世になかったため開発に着手したという経緯です。リーマンショックで加工業者の廃業が相次ぐ中、我々の技術で状況を打開できないかと日々思案していました。我々の強みは自動化設備やソフトの開発。また私自身AIなどデータサイエンス分野が得意で、『これら複数の技術を掛け合わせれば切削加工のあり方を変えられる』と考えたのが出発点です。折しも最大の外注先だった切削加工業者のオーエスイーが事業承継を模索しており、14年にM&A。調べると、オーエスイーのような多品種少量生産の企業は他社も含め、NCプログラムの製作コストが部品原価の50%超を占めるという事実がわかりました。そこで7年前から300万通りの切削条件を網羅したデータベースを作るなど実証を重ね、ARUMCODE1を上市しました」

――ARUMCODE1の概要は。

AIを用いることで、属人的だったNCプログラムの作成を自動化するソフトウェアです。操作は3DCADデータをドロップし、ワークの材質を選定するだけ。形状解析/必要な加工の種類の判断/工具選定/切削条件設定/加工パス生成/プログラム作成までの6工程を全て自動化します。ワークにもよりますが、例えば熟練技術者がCAMを用いて76分で行っていたプログラム作成を約3分に短縮可能。作業指示書や見積原価、工程表も自動出力し、加工精度も±5ミクロンを実現しています」

■Ver.2・0も間近

――ARUMCODE1の開発には、これまで培った手法を用いたと聞いています。

「自動化メーカーとしての知見を開発に応用しました。具体的には自動機の開発同様、何万回にも及ぶ『n増し』や『意地悪テスト』で徹底的にバグを潰し精度を追求したのです。机上でなく実際に行ったテスト加工の多寡で、ソフトの精度は決まります。とはいえ我々も現状のARUMCODE1を完成品とは捉えておらず、直近1カ月も約70回のアップデートを重ねるスピード感で動いています。ユーザーの要望も収集しており、現在は3軸対応ですが5軸や旋盤など様々な加工への対応も開発テーマの1つ。5軸対応はテスト加工も開始済で、他にも5月には様々な改善を実装したVer.20への大型アップデートも予定しています」

――Ver.20における主な改良点は。

「メインは解析のハイスピード化と経路改善。独自開発の解析手法に変更し、解析時間を従来の半分に短縮します。職人が76分で行うプログラム作成を約3分で行うのがこれまでのARUMCODE1でしたが、Ver.20ではこれが約1分半に縮まるわけです。また加工パスの無駄を省く経路改善で、加工時間もこれまでの2分の1以下に短縮。自社開発のカメラデバイスを使い、工具の磨耗状態を読み取って補正をかける機能も実装します。また、これまで難しかった25次元加工への対応も可能に。他にも機能を追加しますが、とはいえARUMCODE1だけでは我々の目指す切削加工の完全自動化は達成不可能。さらなる展開も並行して進めています」

――具体的にはどのような取組でしょうか。

「素材セットや工具ホルダへの工具の着脱、加工、検査など一連の工程を自動化するユニットを製作しています。このユニットをARUMCODE1で生成したプログラムを遠隔で飛ばして稼働させれば、人手作業を極限まで減らせる。設計は既に完了しており、詳細は明かせませんがその先にも驚くような展開を進めています。ここまででわかる通り、我々の目的は切削加工のスマート化。ソフトウェアで職人を無くすのでなく、製造業に新たなインフラを作り職人がより高次元な仕事を行える環境を築きたいと考えています。そうすると、価格面から海外で調達していたものを日本で調達できる。そうした世界観で開発を進めていきます」

アルム02.jpg

ARUMCODE1の実際の画面。人は3Dデータの入ったフォルダをドラッグ&ドロップするだけだ

2022325日号掲載)