インタビュー
MSTコーポレーション 取締役 製造部部長 東 憲弘 氏
- 投稿日時
- 2022/09/30 15:38
- 更新日時
- 2022/09/30 15:43
人と設備の稼動を可視化 自社を「DXモデル」に
ツールホルダからアイデアに富んだ自動化治具まで、加工現場を支える幅広いラインアップを揃えるMSTコーポレーション。同社の強みは、匠の技術と効率的な自動化を融合させた生産技術の高さにある。いまなお歩みを止めず進化を続ける生駒の「DX工場」の強みを同社・東憲弘氏に語って貰った。
――内需の伸長に呼応するカタチで受注を獲得されていますね。
「工作機械受注の後追いになるかたちではありますが、今年度の計画には届きそうな上昇カーブを描いています。現在はフル稼働に近い生産体制となっていますが、標準的な製品でしたらタイムリーに供給できております」
――活況を呈した2018年の景況に戻りつつあると見ていいでしょうか。
「工作機械自体の納期が徐々に伸びているのが気がかりですね。今回は半導体や電装部品の供給がボトルネックとなっているとのことですが、この状態が続けば当社への影響も大きくなりそうですね。また素材価格の高騰も懸念材料のひとつです」
――主力製品の価格改定は行わないのでしょうか。
「いまのところはカイゼンや工夫といった企業努力でなんとかコスト吸収できている状況です。とはいえ、この状況が続くようでしたら難しいかもしれません。調達は前倒しで行っているのですが、昨今では鋼材メーカーさんへ多めに発注すると『本当にその量、必要でしょうか?』と断られる傾向にもあります。素材やエネルギー価格の上昇はどうしようもありませんし、すでに期初に立てた予算を大きくオーバーしている現状です」
――外需の比率と昨今の加工ニーズを教えて下さい。
「当社はおよそ45%が外需になります。外需の半分ほどは中華圏からの需要です。現在は半導体製造装置やEV関連からの需要が中心となっています。またスマートフォンも一時期ほどの勢いはありませんが堅調に推移していますし、ウェアラブル端末関連も引き続き好調です。こちらは一度の受注ボリュームが大きいのも特徴です」
――売れ筋のツールホルダは。
「海外は圧倒的にスリムラインですね。当社と言えば『焼ばめホルダのスリムライン』と認知されているように感じます。部品加工から金型製作まで、国内外を問わず高精度加工に取り組むお客様にご支持頂いています」
■DX推進で生産量2割増
――近年、貴社は自動化にも注力されています。
「当社がはじめてロボットを導入したのが40年前。私が入社して33年ですから、それよりも前から自動化に着手しています。2015年の新工場の稼働を機に無人化、自動化、省人化への取り組みが加速しました。素材の搬入から工作機械のクーラント交換まで、これまで人が介在していた作業をロボットやAGVにより自動化を推進しています」
――生産設備の稼動状況の可視化にも取り組まれています。
「各種機械のモニタリングがある程度、管理出来るようになったのは3年ほど前からです。各部署や加工機にタブレットPCを設置するとともに、大型モニターで稼動状態を確認できるようにしました」
――様々な自動化・見える化を推進していくための専門部署を立ち上げたそうですね。
「従来は部署ごとの担当者を中心に工場の自動化・見える化を進めていましたが、工場全体のデジタル化を推進するには不十分でした。そこで専門部署を立上げて生産設備の可視化だけではなく、工場で使用するホルダや切削工具をタブレットPCを用いて工具依頼・在庫確認も行っております。大型モニターやタブレットPCを活用して更に自動化設備の構築を目指しています」
――どのような効果が現れているのでしょうか。
「まずは人の部分ですが、デジタル端末(タブレットPC)で管理することで、各機械や作業者の仕事の状況が明確になりました。誰がどの機械で何時までに何個加工するのか、その後にはどのような作業工程があるのか等のスケジューリングが担当している機械の前で見える化出来た事で、作業待ち等の無駄な時間が減っています。これにより、生産能力は2割程度向上しています」
――今後もさらに自動化を進めていくのでしょうか。
「年々、人材確保も難しくなっていますし、課題はまだまだあります。現在、自動化設備機器を中心にタブレットPCを設置していますが、今後はすべての加工機に設置したいですね。タブレットPCには稼働状況の見える化はもちろん、作業中のミスを軽減できるよう作業標準書や過去の不具合事例等を閲覧出来るような仕組みも取り入れていきたいです。また、マテハンの強化は喫緊の課題です。各従業員の稼動データや作業風景を定点カメラでチェックすると、モノの持ち運びや受け渡しにおいて無駄な時間が生じていることが分かりました。今後は自動化工場以外の機械設備にもマテハンの自動化を取り入れて改善していきたいと考えています」
工場内は様々な自動化が進められている
(2022年9月25日号掲載)