インタビュー
JTBコミュニケーションデザイン 執行役員 塩谷 久美子 氏
- 投稿日時
- 2025/02/21 13:17
- 更新日時
- 2025/02/21 13:20
リアルとデジタルが融合
コロナ経て展示会は別物に
場の提供ではなく出会いの提供を
――展示会の景況感は。

右から日比まどか氏、塩谷久美子氏、高儀真氏
塩谷 展示会業界の景況感は一言で言えば「好調」。当社を含む多くの業界関係者が、コロナ禍からの回復はもちろん、昨年対比でも出展者、来場者ともに増加している。今後はさらに発展していくとみている。
――コロナ禍を経て展示会は進化した。
塩谷 当社はリアルの価値を重視しているが、コロナ禍で発達したオンラインの活用により関係人口が確実に広がった。海外や開催地と離れた遠方の方々にもリーチできるようになった。さらに一気にDX化が進んだ事で紙の招待状や名札などの制作も簡素化され、業務効率もあがった。展示会はコロナ前と比べ、大きく進化し、その形態や機能が大幅に拡張されたと感じる。
日比 当社がリアルを重要視するのは、出展者も来場者も大規模な取引を検討する材料の一つとして、情報交換だけでなく目の前にいる「人」を見ていると思っている。さまざまな感覚を駆使して信頼できるか否かを対面でのコミュニケーションを通じて見極めており、取引の決定打になっている。そしてそのようなリアルの大切さは我々だけでなくコロナ禍を経験した誰もが実感しているのではないか。
――人件費を中心に物価の高騰もあるが。
塩谷 昨今の物価上昇に伴い、多くの事業者が出展料を上げる中、当社も丁寧な説明とサービス強化を行った上で料金改定を実施した。その上で出展者数が増加しつつある現状を鑑みると、展示会市場全体が成長の好循環期に入ったと考えられる。
日比 TCT Japanと併設展含めた14展示会の開催で来場者数、出展者数ともに昨年と比べ増加している。
塩谷 25年の当社展示会事業全体でもこの25~30%増を達成したいと考えている。展示会事業は当社の重要な部門であり、投資も強化している。例えば、秋に開催される創薬・製薬・医療の展示会「BioJapan」では「パートナリング」に力を入れる。
■展示会は相互利益型ビジネス
――パートナリングとは。
塩谷 単なるマッチングではなく、より戦略的な企業の出会いを創出するもの。従来のマッチングでは取引の仲介で留まっていたが、当社の独自システムでは、A社に足りない部分をB社の技術で補えるのでは?といったA社との補完関係にあるパートナーを見出し、商談の確度が高いのが特徴だ。パートナリングにより新たな協業の場を提供している。
高 売り買いの商談のように成果は即座に結果が出ないこともあるが、5年後、10年後にパートナリングをきっかけに生まれたとニュースでみる、というのが我々の醍醐味になる。
――展示会に出展するうえでアドバイスがあれば。
高 DX時代の今、事前の自社PR活動が重要だ。我々事業者も、来場者を増やすべくウェブなどを通じて出展者情報を提供するなど展示会全体のプロモーションやマーケティング活動を実施しているが、出展者側も、事前に自社の製品やサービスの強みを明確にし、ターゲット顧客を絞り込んだ対象へのプロモーション、来場者のニーズを引き出す技術、展示会で得た名刺や情報を迅速に整理した上での事後フォロー、すべてが成功の鍵となる。
――事前の準備をせず、ガランとしたブースの机に、暇そうに、あるいは不機嫌そうにポツンと座っている出展者という図は記者も時折見かける。展示会の大変さや醍醐味は。
日比 単なる場の提供ではなく、人と人、企業と企業が出会うプラットフォームとしてパートナーと並走して作り上げていくのが我々の役割。各分野の専門家と共にコミュニケーションを取るために、常に違和感なく話しができるレベルまで、私たちも高度な知識を勉強する必要がある。高が言ったように展示会での出会いがきっかけで生まれた新技術やトレンドなどをテレビのニュースなどで見ると、この苦労も報われる。
高 展示会事業は、双方が利益を得る相互利益型のビジネスモデルだ。出展者は、新製品や技術をアピールでき、来場者は課題解決策や新たなビジネスチャンスを見つけられる。我々は中立的な立場から両者をつなぐプラットフォームを提供し、さまざまな情報とプロモーション戦略を通じて、ビジネスマッチングの質と確度を高める事で出展者に貢献する。
――今後の展望、事業戦略など。
塩谷 私たちは、リアルな出会いとコミュニケーションの力を信じ、その価値を最大限に引き出したいと考えている。新たな展示会の創出や進化に挑み、パートナリングを含む交流の場を広げ、リアルコミュニケーションをより深化させたい。人と人のつながりが未来を拓く原動力であり、その可能性を追求し続ける。
(日本物流新聞2025年2月25日号掲載)