インタビュー
日東工器 取締役 専務執行役員 管理統轄(IR担当) 森 憲司 氏
- 投稿日時
- 2023/03/27 09:00
- 更新日時
- 2024/08/19 13:17
自動化機器と水素関連事業を伸ばす
迅速流体継手「カプラ」で知られる日東工器。国内では圧倒的な販売シェアをもつが、近年はロボットと組み合わせられる自動機対応エア工具に力を入れている。また、新エネルギーとして期待されている水素関連事業にも取り組んでいる。
迅速流体継手「カプラ」で知られる日東工器。国内では圧倒的な販売シェアをもつが、近年はロボットと組み合わせられる自動機対応エア工具に力を入れている。また、新エネルギーとして期待されている水素関連事業にも取り組んでいる。
――最近の受注環境はいかがですか。
「期初に掲げた売上目標と利益は確保できそうです。ただ今年に入ってから『カプラ』売上の2割くらいを支える半導体製造装置向けがやや厳しくなってきています。自動車向けも少し復調したように見えましたが、まだコロナ前の水準には戻っていません」
――売上比率で一番大きいのはカプラですね。
「『カプラ』が約260億円ある売上の約45%を占めます。次いで電動・エアーツールが約30%、リニアコンプレッサ・医療機器約15%、ドアクローザ約10%ほどです。リニアコンプレッサ・医療機器は爆発的に売れるということはありませんが、コロナ禍でも絶えず売れています。2023年度は中計(24年3月期の目標は売上294億8500万円、営業利益48億4800万円)の3年目に当たります。意地でも達成したいけれど決して楽ではありません」
――DXに力を入れていらっしゃいます。
「グループ工場の自動化を推進しています。最近実施したのは白河日東工器(福島県白河市)で10人くらいで行っていた建築機器の組立をロボット化して3人に減らし、4人で行っていた高周波溶接をロボットにしました。栃木日東工器(栃木県さくら市)では大量生産する『カプラ』の自動化はもともと進めていたのですが、ロボットとAGV(無人搬送車)を組み合わせた無人による材料供給や段取り替えにより夜間の無人稼働時間を延長しました。工場の再編にも取り組んでおり、老朽化しているメドテック(山形市)と白河日東工器を統合し、投資額112億円で福島市に新工場をつくります。2025年4月の稼働を目指し今年7月に着工予定です。日東工器グループの全製品を生産できるスマートファクトリーとして自動化をふんだんに取り入れるつもりです」
――自動化に貢献する製品もお持ちです。
「ロボット仕様にした当社製ツールをアーム先端のハンドに持たせてバリ取りできるものなどをラインナップしています。バリ取りは3Kに当たり、自動化が遅れています。ロボットなら文句を言わずに一晩中作業してくれます。現在、自動機対応のエア工具としてベルトサンダ『ベルトン』、ダイグラインダ『エアソニック』、デュアルアクションサンダ『オービタルサンダー』の3機種をラインナップしています。この分野の商品は当社が先行しています。電動製品のほうがロボットとの相性がよいと思われがちですが、バリ取りにはパワーが必要なので空圧が圧倒的に向きます。今後、毎年1機種ずつ商品を拡充していきたい」
「自動化に貢献できる商品としては『マルチカプラ』もあります。工場には油・空気・水とたくさん配管があり、それらを同時に接続したいニーズに応えます。10年ほど前からこの売上が年々増えています」
――先日、都内にある水素ステーションを取材した際、「HHVカプラ」の評判がすこぶる良かったです。
「燃料電池車(FCV)に高圧水素を充填するための『HHVカプラ』は、FCV側に付けるものと水素ステーションのノズル用の両方でビジネスをしています。これらはあくまでFCV向けですが、今後水素社会に移行すればもっと広い商品展開ができると思います。FCV向けは70MPa(大気圧の700倍)と極めて高い圧力ですが、もっと低圧の『カプラ』も取り揃えています。水素は一番小さい原子で、その流体を大気圧の700倍に圧縮してコントロールするのは実は非常に難しい。小さい原子なので金属をも脆性破壊といって壊してしまう。日本で商品化したのは当社が最初です」
――中長期的な目標と課題は。
「当社は海外売上比率が30数%と海外事業が弱い。もっともっと海外を攻めて比率を高めたい。当面の目標としては5割ですね。リニアコンプレッサ・医療機器については海外比率が5割ほどある一方、最も売上比率の高い『カプラ』の海外比率はまだ3割もありません。『省力化・省人化機器の日東工器』とずっと謳ってきましたから、自動化ももっと推進していかねばなりません」
20mm幅ベルトの空気式ベルトサンダ「ベルトン」はフローティング機構をもち、曲線部のバリ取りも可能。
(2023年3月25日号掲載)