インタビュー
Exotec Nihon 代表取締役 アジアパシフィック地域社長 立脇 竜 氏
- 投稿日時
- 2025/04/10 10:16
- 更新日時
- 2025/04/10 13:04
倉庫効率化は当たり前
2月、Exotecは自動倉庫「Skypodシステム」の次世代バージョンを発表した。ユニクロやヨドバシカメラでも導入が進む初期モデルを1から見直し、ワークステーションごとの処理能力を50%、保管能力を30%向上した。また、倉庫業務だけでなく、システム内に順立て機能や梱包機能を持ち、倉庫側からサプライチェーン全体の効率化を図れるシステムに仕上げた。第二世代のSkypodシステムについて、日本法人Exotec Nihon・代表取締役アジアパシフィック地域社長の立脇竜氏に聞いた。

サプライチェーンも改善できる自動倉庫
――2月に次世代のSkypodシステムを発売されました。第一世代とは何が変わったのでしょうか。
「実は、倉庫側からサプライチェーンや企業の収益構造を変えていく、というコンセプトを製品に反映していることが最大の変更点です。もちろん、システムの構造や機能も様々ブラッシュアップして、それぞれ他にはない特徴を持っていますが、それらはあくまでコンセプトに基いて開発したものです」
――第一世代でもサプライチェーンは意識されていたように思いますが。
「確かに、当社は以前からサプライチェーン全体を意識した提案をしてきています。実際、小売向けでは店舗の棚に品出しやすいよう商品の種類やサイズごとに順立てしてオリコンや段ボール箱にピッキングできるシステムを構築しています。しかし、第一世代はあくまで倉庫の自動化にフォーカスしたシステム。保管やピッキングの効率化に主眼があったので、複雑なシステムを組もうとするとSkypodの以外の様々なマテハン機器をパッチワーク的に組み合わせる必要がありました」
刷新されたワークステーション。全てのタスクをロボットで処理できる点が肝。ストレージに梱包用の空箱を入れることもできるため、ピックする商品に合わせた箱を呼び出せば、梱包まで完了する
――第二世代ではどう変わったのでしょうか。
「第二世代は、倉庫側の効率追求は大前提として、バッファー機能や、配送ルートや棚割りなどに基づく順立て機能、適切な出荷箱を自動で選定する梱包機能などを標準装備しています。倉庫業務だけでなく配送や店舗運営などサプライチェーン全体の効率化を倉庫側で図れる仕組みになっています。これらの実現には、1台のロボットが1つのコンテナ(タスク)ずつ処理していく非常にシンプルなシステムであることが肝で、パッチワーク的なシステムだと、マテハン機器の統合制御が難しく、様々な問題を引き起こす可能性があります」
――システム構成自体はロボット、ラック、ステーションと第一世代と変わらない印象です。どう実現したのでしょうか。
「例えば、ピッキングを行うワークステーションは、第一世代では出荷側がロボットではありませんでした。つまり、ストレージから荷物を搬送して来るまではロボットでしたが、ピックした先は作業者自らで出荷箱をセットするか、コンベヤで前後工程を結ぶ必要がありました。第二世代は出荷側もロボットになるとともに、 片側3列、計6列分の床がスロープ状に作業者の元までせり上がっています。ステーション上で待機しているロボットがローテーションで位置を変えていくので、その組み合わせで効率を落とさず複雑な作業を行えるようになっています」
■設置面積半減も
――発表後、国内からの反応はいかがですか。
「順立ては困られている方も多いので刺さっています。さらに、第二世代はロボットがラック下部を走行する仕組みになり、ロボットサイズもコンパクトで、コンベヤやソーターなどもほぼ設置する必要がありません。そのため、システムの設置に必要な面積を約30%、レイアウトによっては半減させることが可能です。日本はスペースが限られた現場や中小規模の企業も多いので、従来よりも小さなスペースで同じ処理能力を発揮できる点について強い関心をいただいていると実感しています」
――Skypodシステムは大規模かつ高額といった印象もあります。
「もとから小さい規模でも入れられるシステムでしたが、何故か大規模導入が向くシステムだと認識が広がっていました。今回、よりコンパクトにシステム導入が可能になり、限られたスペースから採用しやすくなりました。ここには我々もしっかりと訴求していきます。一方で、小さく始める場合はぜひ隣のスペースは空けておいていただきたいです。これまでも、空間選びで後々後悔されているお客様を数多く見てきています。Skypodシステムはお客様のビジネスの拡大と共に簡単に拡張していける。長期視点で計画いただきたいと思います」
「また、金額面についても、設置スペースが小さくなることやコンベヤやソーターなどが必要なくなることで、全体のコストが抑えられる可能性もあると見ています」
――第二世代を使えばやれることは沢山ありそうです。貴社として国内の物流をどう変えていきますか。
「欧米で活用が進むカーブサイドピックアップなど、新たな流通の形に対応する準備は国内でもできています。興味を持たれている企業様もいらっしゃいます。しかし、流通というのは消費者行動に大きく左右されるため、国内で欧米のようなドラスティックな変化を起こすのは難しい部分もあります」
「一方で、人手不足は物流の現場だけでなく、コンビニやスーパーなど店舗側でも起こっています。ここにも第二世代のSkypodシステムは貢献していけます。店舗で働く人達には、接客が好きだったり、自分達のお店を良くしたいという意識の高い人が多いと思います。倉庫側で店舗の棚割りまで考慮した出庫を行い、品出し作業を効率化することで、現場の人にはサービスの質向上や売場づくり、受発注戦略といった店舗側で本来求められ、やりがいを感じられる仕事に注力してもらえる体制を築くことが可能です。そうした環境づくりを倉庫側から整えていきたいと思っています」
ラックの下をロボットが走行するようになった。通路が最小化され、設置面積の削減に寄与する
(日本物流新聞2025年4月10日号掲載)