インタビュー
eve autonomy 代表取締役CEO 星野 亮介 氏
- 投稿日時
- 2023/08/29 13:37
- 更新日時
- 2023/08/29 13:45
屋外AMRで2030年に100億、当たり前品質+魅力品質で市場拡大
ヤマハ発動機と自動運転技術を持つティアフォーが共同で出資をするeve autonomy。提供する無人搬送サービス「eve auto」はレベル4の自動運転EVを用いた工場や倉庫の建屋間の屋外搬送を自動化するもの。3月に取締役CFOから代表取締役CEOへと昇格した星野亮介氏に市場からの反応や今後の展望について聞いた。
――昨年11月の正式発売から10カ月が経ちました。市場の反応はいかがでしょうか。
「現在、21社に対し34台を提供して、採用数は徐々に増えてきている。リピート採用や他工場への横展開での採用も出てきており、最初の滑り出しとしては悪くないと感じている」
――採用が進んでいる理由は。
「屋外と牽引力の掛け合わせが大きな差別化要因となっている。屋外の自律走行搬送ロボット(AMR)についてはそもそも競合があまりいない。加えて、我々がターゲットとしている工場や倉庫などの建屋間搬送では比較的重たいものを運ぶことが多いので、最大1・5㌧まで対応するeve autoは現場に適した製品として受け入れられている」
「海外も含めて、労働者不足が現場の深刻な課題となっていることも一因。日本の場合は生産人口の低下も顕著だが、労働者はきつく単調な仕事をしたがらなくなっている。担い手がいない仕事を持続可能なものにするには、当社のeve autoのような自動化技術に頼らざるを得ない。自動化・省人化の需要は今後も拡大していくとみている」
――実際の現場ではどのように使われていますか。
「わかりやすい事例だと、物流系倉庫のポイントAとBを外周で搬送する比較的長い定点間を結ぶもの。特殊な例では、ヤマハ発動機の本社工場で15㍍ほどの短い距離の建屋間を6台の車両がひっきりなしに搬送するという面白い事例もある。A工場でできたエンジンをBの完成工場に運ぶもので、従来はA工場で中間在庫をためてトラックで搬送していたが、eve autoを仮想ベルトコンベヤのように使用することで、AとBの建屋をつないだ1ラインのように処理できるようになった。他にも我々が見つけられていない使い方はたくさんあって、お客様にサービスを提供すると同時に、活用方法についても探っていく必要があると考える」
eve autoと竜洋倉庫。セットアップが完了した車体は倉庫前の駐車場で耐久試験が行われる。
■30年に100億目指す
――具体的な目標などはありますか。
「2030年に日本だけでなく海外を含めて100億を超えるような市場を作りたいと考えている。現在、屋内AMRの市場がこれだけ大きくなっているのをみると、屋外AMRにも確実にニーズはあると感じている。大規模な工場では屋外AMRが当たり前に走行している世界にしたい」
――海外展開も視野に入れているのですね。
「大きな市場である日本でしっかりと地に足を付けて、技術面やサービス面を確立することが前提であるが、現在検討しているのはアメリカとドイツへの集中展開。市場規模の集計や潜在的なニーズを探っていくと、両国は屋外AMR領域の市場規模が大きいとみている」
――他に目標達成に向けて注力していくことがあれば教えてください。
「導入を妨げている最大要因はeve autoが新しいサービスであることだと実感している。それを解消するためには、サービスに対する認知を広げていくこととユーザーフレンドリーな製品づくりが重要になるとみている。現在、成約までのリードタイムが長いことが一つの課題となっているが、それは屋外AMRがフォークリフトのように工場内で市民権を得ていないことに起因している。現在、デモ走行イベントなどを積極的に提案しており、そういうことを地道に積み重ねていくことで、新しいものに対する認識が変わっていくのではと考えている」
「ユーザーフレンドリーな製品づくりには、当たり前品質と魅力品質の二つが重要になる。当たり前品質は屋外AMRを使用する際、できて当たり前だと思われる品質。まずはこの当たり前品質で100点満点の製品へ作り上げていくのが方向性の第一。それには、現在、製品を使用いただいている早期導入のお客様が非常に重要だと考えている。その土台の上に切り込んでいきたい市場への魅力品質を付加していくことで、より多くのお客様に刺さる製品づくりをしていきたい」
竜洋倉庫内の様子。製品セットアップや検査、開発などを担う。新規開発のシステムの試験が行われていた。
(2023年8月25日号掲載)