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インタビュー

Engineering Bridge 代表理事 植竹 伸二 氏

エンジニアの諸課題を「つながり」で攻略

急ピッチで進む自動車の構造変革。変化に追随し、さらに付加価値の高い領域に事業をシフトするには人的リソースが必要になるが、一方で多くの企業はエンジニア不足に苦しみ、企業単体では打開が難しい状況だ。その課題をエンジニア同士の「つながり」で打破すべく、大手工作機械メーカーで常務、そして関連する設計開発会社で社長を務めた植竹伸二氏が一般社団法人を設立した。

――エンジニアと企業の「架け橋」となるEngineering Bridge(エンジニアリングブリッジ)を設立されました。概要を教えてください。

「今年の4月に設立、7月に本格始動した団体です。設計会社やメーカーが互いの技術を紹介し教えあい、自社のエンジニアに刺激や楽しさを伝え、交流できる集いの場を作るために設立しました。全会員が集まる場を年2回提供し、特定のテーマへの理解を深める『研究会』も開催します。また会員同士で人や仕事に加え技術のマッチングも実施。会員各社もエンジニア不足、製造先が見つからないなど各々課題をお持ちですが、その技術や『仕事の山谷』を互いにカバーするマッチングを行います」

――設立の背景は。

「契機はコロナ禍で企業が抱えるエンジニアの交流が途絶えたこと。大勢で自由に話す機会は失われ、新たな発想につながる外部刺激が得られません。また足元では、EVシフトがエンジン関連の企業に多大な影響を与えています。多くはその流れに個の努力で追随していますが、荒波を乗り切るため目先の仕事に注力せざるを得ないのが実情です。そうすると将来を見据えた付加価値の高い領域へのシフトや人材育成の時間が取れず、いずれはコモディティ化の波に呑まれてしまいます」

――人材やその他のリソースを融通・共用し、いち企業では難しい付加価値の高い分野を攻めための「余裕」を作ると。

「まさにそういうことで、助け合える部分は助け合わないともったいないですよね。人事労務や教育もそうですが、何かに費用や人材を割けばその分、高付加価値化のために割ける資源は少なくなります。またエンジニアも非常に不足しており、特にシーケンス設計ができる人材は皆無に等しい。そうこうするうちエンジニアの高齢化が進み、人材育成ができないまま熟練者が引退して新旧交代ができない事態に陥ります。1人や2人の新入社員に専門教育を実施するのは難しいですから、合同教育や、企業が互いのエンジニアに教育し合う場を作りたいと思います」

――企業のマッチングはどんな形で行いますか。

「会に寄せられた相談に応えられる企業を我々が紹介したり、交流の場で知り合った企業同士が協業するなど色々な形があります。特徴はデジタルな数字のマッチングではなく、私自身や会員会社の知恵や情報を借りてアナログマチックに質の高いマッチングをすることです。我々はあくまで企業同士を結び付けるだけで、その先は介入しません。またマッチングの仲介料は取らず入会金と年会費のみで運営します」

■会員向けの「なんでも相談」も

――足元の会員数は。

「会員は97日時点で35社。7月の本格稼働以降、月10社ほどのペースで増えています。1021日に設立総会を控えており、それまでに45社まで増やしたい考えです。目標として、来年6月に会員数60社を掲げています」

――順調に伸びていますね。

「おかげさまで、会員の方に入会を希望する企業を紹介頂けるようになりました。エンジニアリング会社や要素メーカー、工作機械や計測器などの完成品メーカーのほか、プロダクトデザインを手掛ける企業、採用コンサルを行う企業など一風変わった会員もいます。ノウハウを活かし共同で人材教育を行うなど、エンジニアの融通にとどまらない広い分野で課題の穴埋めが可能です。また生産財商社にも強い関心を示して頂き、入会頂いています」

――商社はどのような目的で入会されますか。

「経験不足からくるアイデア不足でお困りのようです。ユーザーから寄せられた要望を、熱が冷めないうちに具現化するフェイズで苦心されています。我々は会員向けに『なんでも相談』というサービスを行っており、これは相談したい課題をフォームに入力頂き、私自身が会員企業の力も借りて相談に乗るもの。直近では24時間の無人加工を行いたいという要望に対し、課題の洗い出しのために現地確認を行って改善点を指摘しました。必要に応じて課題を解決できる会員企業へのマッチングにもつなげます」

「これだけ変化の激しい世の中ですから、各社とも何かしら自社の手に余る仕事や課題をお持ちです。そうした弱点をつながりによってカバーしつつ、将来的にはひとつのプロジェクトを複数の会員企業で手掛けることも視野に入れています。交流を通じて互いに高め合い、エンジニアリングの楽しさを追求する会を目指します」

なんでも相談画面.jpg

会員企業サービス「なんでも相談」の記入フォーム。多少ザックリとした相談事でも、植竹氏自らが回答してくれる

2022925日号掲載)