1. トップページ
  2. インタビュー
  3. 3Dプリンタの可能性を拡げる「CADデータ」の最適化

インタビュー

3Dプリンタの可能性を拡げる「CADデータ」の最適化

投稿日時
2022/03/30 14:02
更新日時
2024/08/19 13:17

3DCAD「ソリッドワークス」の一次代理店として、また3Dプリンタ黎明期から販売事業を手掛けるテクノソリューションズ。数多くの製造現場へ3Dプリンタを納入してきた同社・野中博文本部長に昨今、3Dプリンタへ寄せられるニーズを伺った。

テクノソリューションズ 営業本部 本部長 野中 博文 氏

--昨今、3Dプリンタを活用する加工現場が増えていますが、3Dプリンタ販売を手がける貴社へのニーズは。

4~5年前から全世界的に3Dプリンタ需要が増加しています。コロナ以前はそれこそ倍倍ゲームで伸びていましたが、コロナ後は前年比110%くらいに落ち着いてきています。当社は3DCADのソリッドワークスの販売をメインの事業にしていますが、3Dプリンタ事業はそれに次ぐ規模に成長しつつあります」

――様々な3Dプリンタを取り扱われていますが、売れ筋は。

「やはり一番よく売れているのはMarkForged(マークフォージド)のデスクトップシリーズです。Foamlab(フォームラボ)のデスクトップサイズ光造形3Dプリンタや、最近取り扱いを始めたSinterit(シントリット)の粉末焼結方式のものも低価格ながら高品質で多くの引き合いを頂いております」

――マークフォージドが販売好調な理由を教えてください。

「航空機に用いられるアルミ材並みの強度の造形物がカーボン樹脂で手軽に出来る点です。当社のユーザーさんはワークに強度が必要な治具、ロボットハンドなどに活用されているケースが多いですね。またストックパーツが無いような古い機械設備を活用するために、部品を自作されているケースもあります。原材料のフィラメントはマークフォージドが供給してくれるのですが、海外の有名メーカーや国内大手メーカーのものに比べて圧倒的に安価で入手可能ですので、ランニングコストのメリットも大きいです」

――樹脂ということで、経年劣化の心配は無いのでしょうか。

「とある電動工具メーカー様に納入する際に、実際に紫外線照射のテストを行ったことがあり、全く問題ありませんでした。雨が当たる程度でも素材の劣化はありませんした。また工作機械の中でワークを止める治具として活用する場合、切削油を被ったりしますがそれでも劣化は見られませんでしたので、安心してお使いいただけると思います」

――昨今、3Dプリンタはメーカーも林立し、機種選びが難しく感じます。

「機種を決め打ちして来られるお客様はともかく、どれにしていいかわからない、と仰る方も一定数いらっしゃいます。3Dプリンタメーカーもたくさんありますし、調べれば調べるほど迷路に嵌ってしまう、というケースも少なくありません。こうしたユーザーに対し、当社では3Dプリンタコンシェルジュという相談窓口を設けています。どんな素材でどのようなモノを作りたいのか、最終製品なのか、試作なのかといった点を細かくヒアリングし、お客様のニーズにもっとも適した製品をお勧めしております。

無論、当社も全ての方式の3Dプリンタを取り扱っているわけではありませんので、取り扱いの無いメーカーのものが適している、という場合はそちらをお勧めするようにしています。機械を購入していただいて失敗するのがお客様にとっても当社にとってもいちばんのダメージになりますから」 

■積層造形における設計を最適化

――3Dプリンタ導入先のモノづくりに変化を感じていらっしゃいますか。

「いずれも内製率が高まり、明確なコストダウンに繋がっているように見受けられます。ただ、これまで作っていたワークをそのまま3Dプリンタに置き換える、といったケースがとても多いんです。本来、3Dプリンタは形状も3Dプリンタ用に変化させて活用するのがベストなやり方です。従来の切削加工では実現できない形状で強度と実用性を両立できるのが積層造形ですから」

――3Dプリンタユーザーから寄せられる昨今の課題は。

3DCADデータを最適化するのに様々な試行錯誤をしているが、なかなか上手くいかない、思ったような形状にならないといったご相談が増えています。こうした困りごとに対し、当社では昨年からnTopologynトポロジー)というデザインツールを提案しています」

――製品名のとおり、トポロジー最適化(位相最適化=強度を損なわずに軽量な3D形状を生成)に有効なソフトなのでしょうか?

「はい。nトポロジーは既存の3DCADと連携し、ラティス形状や複雑な表面形状を作成できます。従来のCADではデータが重く複雑な内部形状の作成は困難でしたが、nトポロジーはデータサイズが軽いので処理速度が速く、複雑形状を直感的に作成することができます」

――3DCADデータを手軽にシェイプアップするようなイメージでしょうか? 

「例えば、熱交換器の形状は熱効率や最適な冷却構造の設計が必要ですが、こうした複雑形状は設計も煩雑で、人の頭で考えるのには限界があります。しかし、nトポロジーのようなソフトを活用することで、人間では考え付かなかったような最適形状を短時間で、かつ自動で作成してくれます。現在は研究開発の現場で採用されるケースが多いですが、今後は3DCADデータの作成において活用が拡がっていくと見ています。特に金属3Dプリンタを最大限活用する上で必須のソフトになってくると思います」

テクノ2.jpg

MarkForgedのデスクトップシリーズ

2022325日号掲載)