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インタビュー

サトー  国内営業本部 担当部長(RFID販売担当) 山本 弘志 氏

投稿日時
2024/10/09 13:28
更新日時
2024/10/09 13:32

液体向けRFIDタグを開発

電波でタグ内の情報を読み書きするRFIDが物品管理に有効なのは周知の通り。ただ苦手な被着体があるのも事実で、その筆頭はこれまで金属と液体だった。サトーはこのほど液体入り容器に貼り付けられる新たなRFIDタグを開発。すでに展開する金属向けRFIDタグも含め、様々な物をRFIDで管理できる体制を整える。RFIDによる管理で作業時間を24分の1に縮めた例もあり普及加速に期待がかかる。

金属も液体もRFID管理へ

――従来、RFIDは液体が苦手ですよね。

「確かに電波で読み書きするRFIDは液体が苦手。電波が通り抜けられないからです。そこで従来はタグの一部を鯉のぼりのように液体入り容器から浮かす、フラッグタグを使っていました。ただ容器に直接タグを貼りたい要望も根強く、新たに液体に強いタグを開発しました」

――なぜ液体も読み取れる。

「読み取り可能な距離(≒読み取り感度)が、液体入り容器に貼った際にピークになるようRFIDタグのアンテナをデザインしました。液体入りガラスボトルに貼ると読み取れるようになるタグです。容器や液体の種類を選びますが、例えばワインや日本酒などに活用できる。類似のタグはごくわずか。しかも我々はラベルプリンターメーカーですからタグへの情報の書き込みも行えます」



ラベル.jpg

液体向けRFIDタグ(右)とワインボトルに貼り付けた例(左)

――RFIDは金属も苦手でしたがそれを解決するタグを提供していますね。

「一般的な薄型RFIDタグは金属に対応できないので、スポンジで厚みを持たせたタグを提供しています。金属同士にタグが挟まれると厳しいですが、それもフラッグタグで対応可能。つまり適切なタグ選択や保管方法で金属にも対応できます」

――2月にRFIDを使った新たな管理システムをリリースされました。大半が金属の設備予備品を一元管理できると。

「元は物の入りと出(入出荷)を管理するシステムだった『IritoDe』に、設備予備品の一元管理に適したパッケージを追加しました。数万点に及ぶこともある設備予備品を、誰が持ち出したか、あるいは戻したかなど都度記録し1つのシステムで管理・把握します。あらゆる製造業で使えますし鉄道の工具管理など、工具1本すら置き忘れられないシビアな現場にも。サービスパーツやデモ機の管理にも使えます」

■2030年問題にRFIDを

――RFID管理への移行で実際どの程度の効果が出ますか。

「目安として管理の作業量が90%減になるとよく言います。ただ工業用ホース製造を手掛けるカクイチ製作所様では、元は紙帳票だった製品在庫管理をIritoDeに切り替え、棚卸作業を2人で3時間から1人で15分に短縮できました」

――24分の1という数字からRFIDの便利さがわかります。一方でRFIDの浸透状況はどうですか。進んでいますか。

「サプライチェーン全体ではまだまだです。寄せられる相談も資産管理が主。製造・物流・販売と川上から川下まで一貫しRFIDで追うのが理想ですが、今は企業単位の運用に留まります。ただ約5年後には2030年問題が控え、トラックドライバーも今以上の不足が予想される。人海戦術を減らすことが重要で、長期的にはそこでの導入が進むと思います。例えばコンビニの納品も今は商品を1つずつバーコードで読む間ドライバーが待機しますが、RFIDなら待ちを短縮できます」

――液体対応RFIDタグの開発でRFIDの活用範囲はより広がった感があります。まだ課題はありますか。

「読み取り距離はタグの大きさに比例するので、小型でも遠くから読めるタグの開発が課題。ペンのような形状の物にタグが付けられればまた色々と変わるでしょう。あとはコストですね。仕様・ボリュームにもよりますが、一般的にタグは110円程度。ですが物価高騰の影響があります。とはいえ150円と言われた時代を考えればかなり下がりました。よりコストを下げるには流通量を増やすのが近道。どんどん採用いただだければ」



(日本物流新聞1010日号掲載)