インタビュー
ニッセイ 減速機事業部 開発二部 RC開発一課 稲垣 光明 氏
- 投稿日時
- 2022/12/21 15:44
- 更新日時
- 2024/08/19 13:20
機械・包装機械や自動ドアなどに採用されてきたが、昨夏新たに開発した高剛性減速機を新ブランド「UXiMO(アクシモ)シリーズ」として立上げ、これまで製品を提供できていなかった業界向けのアイテムを投入した。
――最近の景況感は。
「今年度上期は堅調に推移。原材料高騰、エネルギーコスト上昇、中国主要都市でのロックダウン、半導体・電装部材不足、ウクライナ情勢の影響など厳しい状況での要素はあるも、減速機事業において国内は、工作機械・搬送・食品業界の回復、海外は食品と搬送業界での需要増があり、中国・韓国でも生産設備向けで売上が増加しています」
――減速機製造にかかわる主な生産設備は。
「マシニングセンタや各種歯切り盤、研削盤、熱処理設備などを保有し、社内でほぼ一貫生産ができる体制を取っています」
――減速機をどれくらい生産されていますか。
「インダクションギアモータ、IPMギアモータ、バッテリ電源ギアモータ、サーボモータ用減速機、高剛性減速機などを合わせ年間60万台を生産。歯車生産においては年間600万個の生産を行っています」
――貴社は高剛性減速機UXiMOシリーズを立ち上げ、昨年8月に高剛性・高トルクの「DGH」を発売したのに続き、今年11月には扁平・軽量の「DGF」を発売されました。
「UXiMOシリーズはロボットの関節部分・半導体製造装置・工作機械のお客様に提案しています。製品の中心部に中空を持つDGH(外径71~142㍉の5枠番)は、モータや各種センサの配線・エアー配管を通しやすくするために中空径を最大限に大口径化しています。また、製品に加わるねじれとモーメントに対する剛性を高め、力が加わった際のたわみが非常に小さい減速機となっています。UXiMOシリーズの第2弾として販売開始したDGF(外径71.5~91.5㍉の3枠番)は、同じ外径のDGHよりも厚みと重量は約半分であり、薄さと軽さを追求した製品となっています。さらに入力軸を保持するためのベアリングを内蔵していることで、装置そのもののコンパクト化を実現する内部構造にしています。特にロボットの手首軸やアシストスーツなどでは扁平軽量化のニーズが高く、それらのニーズを満足できる製品であると考えています」
――このような高剛性減速機は貴社では初めての製品ですね。
「これまで当社では遊星機構や高精度ベベルギアを使ったサーボモータ用減速機をラインナップしていましたが、高剛性減速機UXiMOは高い剛性や高い精度を必要とするお客様向けに、新たに開発した差動減速機構を採用した初めての製品となります。また、差動減速機構の高剛性減速機の特殊仕様についても、工作機械のお客様にご採用頂いています」
――新シリーズの歯車の加工で最も重視していることは。
「今まで培ってきた歯車の製造技術や知見を充分に活かしつつ、新しい加工技術にも挑戦しています。今回、我々開発陣として最も注力したのは高精度の歯車をいかにコストを抑えてつくるかです。1つの工程のみで寸法精度を突き詰めるのではなく、熱処理を含めた完成までの製造プロセス全体でどうすれば精度を出せるかを追求し、加工のバラつきを抑えて最適化を図りました」
――あらゆる生産財の納期は今、長くなる傾向にあります。
「当社は部品在庫によるアッセンブリ納期で、ご注文を頂いてから1カ月とアナウンスしています」
――今後の製品展開の予定は。
「UXiMOでの新製品拡充は、もちろん考えています。これまで以上に幅広い業種のお客様から様々なご要望をいただき、その一つひとつにお応えし、特長をもった製品をラインナップしていきたいと考えています」
高剛性・高トルクの「DGH」(左)と扁平・軽量の「DGF」
株式会社ニッセイ
1942年設立、社員883人
愛知県安城市和泉町井ノ上1-1
各種減速機と各種小型歯車を製造販売(売上比率はおよそ7:3)。それぞれ年間60万台、600万個生産
日本ミシン製造(現ブラザー工業)へミシン部品を供給するメーカー、日本ミシン針製造として設立後、削る・磨くを武器に小型歯車および工作機械部品(1955年)、減速機(1974年)の生産を始めた。国内製造拠点は本社工場(歯車製品を中心にモーター巻線も)とその真向かいの減速機第2工場(減速機向け歯切りおよび歯車後工程)、500mほど離れた安城南工場(減速機向けモーターコア積層、ケーシング加工、組立)の3拠点。中国には日静減速機製造(常州)有限公司(減速機の組立を中心に一部加工)をもつ。2022年にブラザー工業の完全子会社となり、「健康経営優良法人2022」~ホワイト500~に認定。
(2022年12月25日号掲載)