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インタビュー

山本金属製作所 営業企画課 兼 研究開発G課長 松田 亮 氏

投稿日時
2024/11/15 11:21
更新日時
2024/11/15 11:34

東南アジア圏でFSWの加工とセンシング注力

山本金属製作所は切削・摩擦攪拌接合(FSW)などの機械加工時の温度・振動・力をリアルタイムにモニタリング可能なIoTデバイス「MULTI INTELLIGENCE(以下MI)」や水や水溶性クーラント(切削油)の温度、濃度、pH、汚染度を常時同時計測するクーラント管理システム「COOL―i」などを用いて、これまで職人の経験や勘に頼っていた部分の「見える化」を推進する。こうした技術を用いて東南アジア圏への更なる販路拡大を目指す。営業企画課 兼 研究開発G課長の松田亮氏に話を聞いた。

松田 亮氏とクーラント管理システム「COOL-i」

――MICOOL―iの海外展開を目指されている。

「ベトナムのハノイ近郊に当社の拠点があり、現在は加工品をメインに海外展開を行っています。今後は東南アジア圏に向け、MICOOL―iなどの製品の輸出拡大を目指しています。昨年タイのMETALEXに出展しました。日系企業、ローカル企業の好反応を得て東南アジア圏への案件創出のため今年も出展します。今回はFSWの加工受注とMICOOL―iにポイントを絞って訴求します」

――タイ市場での展開は。

EV向けにFSWを使用した案件が増えています。FSWの接合部分の良し悪しは、一見してわからないことも多いですが、逐一強度試験すればコストは跳ね上がります。MIを用い、加工中のデータ分析を実施すれば『熱や力が正常であれば、接合が正常である』と品質を保証できます。こうした技術で我々自身が加工の受注を目指すとともに、部品加工事業者にMIを用いたソリューションの提供も行います。自動車メーカーからは、当社が試作して、品質を保証するデータの裏付けと共に、製品+ソリューションを納める案件もあります」

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 MULTI INTELLIGENCE i-stir(FSW version)

「日系企業では日本国内で試作やデータ取り、品質管理の仕組みを作り、タイの量産ラインに適用する、という流れが多くなります。日本で出来た加工が海外ではうまくできない、というのは『あるある』ですが、職人さんの知見に頼らないデータ分析が解決の糸口になります。これは切削も含めてですね」

自動化から自律化へ、SIer事業も

――COOL―iはいかがですか。

「水溶性クーラント液のph、液温、Brix(濃度)、汚れ具合、室温をモニタリングするシステムです。設置はタンクにホースを差し入れるだけ。100V電源で動きます。装置内部に液を循環させ常に自動で先述の5項目を計測しデータを蓄えます。面倒だったクーラント液の管理を一手に担えます」

「工作機械のメーカーに聞くと、トラブルの原因の多くはクーラントの管理が出来ていないこと、に由来するといいます。『工作機械を効率的に使うためにクーラントを管理してください』と言っても、汚い、臭い、めんどくさい、で後回しになりますよね。クーラントのデータをリアルタイムでとり、製品品質と紐づければ強い競争優位性になります。新たに工作機械を購入する際はCOOL―iも一緒に、となるように提案を強化しています」

「研削盤を使用しているあるユーザーは『クーラント液を交換したすぐは精度がいいが、時間が経つと精度が落ちる』ので、クーラント液を頻繁に交換していました。COOL―iでモニタリングすることで、最適な交換が行え、コストが下がりました。今、二台目を検討していただいています。後付けでも効果が出ている例ですね」

――その他の海外戦略は。

「ベトナムを拠点に、東南アジア圏でのSIer事業の拡大を目指しています。5年前に『ロボット100』というロボット100台導入のプロジェクトを立ち上げ自社の自動化を推進しました。そのノウハウの外販をしていきたい。MICOOL―iなどのセンシング技術とロボットを連動させ、加工中に異常を検知すればそのワークをラインから一旦外し検査するなど、総合的なソリューションが特徴ですね。我々の提案は自動化ではなく『自律化』なのです」

(日本物流新聞11月25日号掲載)