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インタビュー

芝浦機械 社長 坂元 繁友 氏 
EV減速跳ね返し反転攻勢へ

投稿日時
2026/09/09 15:13
更新日時
2026/09/09 15:16

EV減速の穴を埋める短期の「緊急対応」と、中長期の「グローバル投資」を同時に走らせる芝浦機械。好調な大型の工作機械、超精密加工機の生産量を1.5倍に引き上げる一方、欧米企業の買収や出資による販路拡大、北米の精密加工市場開拓など、攻めのグローバル戦略を展開している。同社の坂元繁友社長に喫緊の課題と未来への布石を聞いた。

――2026年度緊急対応に至った経緯は。

「以前にEVシフト加速による特需があり、BSF(電池用セパレータフィルム)向け大型押出成形機ラインを増強しました。しかし世界的にEV需要が減速し、蓄電池業界の設備投資が見送られました。また長納期の大型案件の売上貢献は2027年度以降にずれ込むため、リードタイムの短い案件を短期で受注・売上化して穴を埋めるのが、緊急対応の基本方針です」

――具体的にはどのような動きを。

「まず北米での在庫販売・回収の迅速化。次に販売網と現地工場が整っているインドでの増産と早期刈り取り。そして利益率が高く競争力のある超精密加工機の北米開拓です。同時に、大型の工作機械の増産体制構築やBSF向け次世代機開発といった中長期の布石も並行して行っています」

――成果は出始めているか。

「米国では関税問題が起き、自動車関連の設備投資抑制やサプライチェーン分断が影響しました。インドでは、内需不振の中国射出成形機メーカーによる製品の大量流入で競争の激化が起きました。超精密加工機の米国展開も、顧客に技術価値を理解してもらうのに少々時間が掛かっている。総じて半年ほど後ろ倒しになっています。一方で、大型の工作機械の需要が一気に顕在化したのは好材料です」

――北米市場での精密加工をどう見ている。

「これまで光学系の精密加工は中国や台湾が主戦場でしたが、リショアリングを推し進める米国にはまだ大きな開拓余地があると見ています。寸法精度を維持しながら面粗度も確保できる加工を知らない顧客も多く、医療・自動車に加え、航空宇宙、防衛分野で採用が増えるとみています。今後はテクニカルセンターでの実加工やサンプル提案を通じて市場を広げていきます」

――大型の工作機械が非常に好調な背景は。

「造船、航空宇宙、エネルギーなど大型ワークを必要としている業界がピークを迎えています。特に活況なのはデータセンターなどで使われる小型原子力モジュール向けの加工で、しばらくは需要が続くとみています」

――旺盛な需要に対する生産体制は。

「生産量を1.5倍に引き上げる手続きを進めています。組み立てに半年近く場所が塞がるため、他の工場を借りるなどできることはすべて着手しています。現場では営業・技術・製造が綿密に生産計画をすり合わせて共有する体制を構築しています」

――生産コスト上昇への対応は。

「人件費は、成形機の需要減と工作機械の伸長に合わせて必要な人材を配置転換する人材流動化により、固定費を増やさず対応しています。部材コスト上昇分は業界水準の4~5%程度の価格転嫁を進めていますが、受注から売上計上までのリードタイムが長いため、原価差額が利益にマイナスに働く面があります。これに対しては、習熟度を上げリードタイムを従来の3分の2に短縮するなどして対応しています」

■現地企業買収で販路拡大へ

――欧米企業の買収や合弁を進めている。狙いは。

「成形機は台数確保、超精密加工機は北米開拓という基本方針です。保守的な欧州市場は独力開拓が難しいため、強固な販路を持つドイツのLWB社を買収しました。当社の射出成形機を彼らの販路に乗せ、彼らの竪型射出成形機を当社ラインに乗せるクロスセルでボリュームを上げます。イタリアでは自社拠点とEPF社との合弁会社化を進め代理店とタッグを組む体制にします。米国は切削加工に強いナノテク社と、研削に強い当社との補完関係による高いシナジーを見込んで買収に踏み切りました。今後は同社の販路、サービス網を活用し北米市場における超精密加工機のプレゼンスを高めていきたいと考えています」

――インドや東アジアでの展開は。

「インドは2012年に買収した現地射出成形機メーカーの工場を増設し、最大4000台規模まで生産能力を増強しました。工作機械でも現地の実力向上を踏まえたターゲット再構築プロジェクトを立ち上げています。東アジアでは、中国・台湾は光学レンズ関連の精密加工需要が大きいです。中国は内需が振るわなくても生産能力を落とさず輸出攻勢を続けており、工作機械需要も当面高水準が続くとみています」

――販売体制の見直しを進めている。

「当社の製品は基本的にオーダーメイドですので、代理店に入ってもらうことはあっても、最終仕様の確認や決定に関しては当社が顧客のもとへ出向く、いわば半分直販に近いようなやり方を続けてきました。しかし顧客側のオペレーターが年々少なくなってきており、前後工程も含めて『丸ごと任せたい』という相談が非常に増えているのが実情です」

「これを各事業セグメントが個別に対応しようとすると煩雑になります。そこで、あえてシステムエンジニアリングという機能を切り出し、機械設計や周辺装置、前後工程までを社内で一貫して手がけられる体制を整え、組織として事業を大きくしている最中です。まだ件数としては多くありませんが、こうしたパッケージ型を直販するパターンを今後増やしていきたいと考えています」

――直販体制へのシフトによる既存の代理店との関係は。

「商社を完全に排除するわけではありません。当社の機械販売は顧客の要求を聞きながら仕事を組み立てる共同作業です。そのための窓口としての代理店関係は続きますし、今後はより現場と密にコミュニケーションを取る方向へと変わっていくでしょう」

――JIMTOFの見どころは。

「スペースが限られる中、造船・原子力・航空宇宙などの分野や、データセンター向け精密加工で自社機械が実際にどう使われているかを映像で訴求します。また新機種として精密5軸MCの「VM︱450A(5)」を出展します。こちらは超精密MC、UVMシリーズのDNAを継承し、幅広い精密加工ニーズに対応します」

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JIMTOF2026出展予定のVM-450A(5)




大型工作機械シェア堅持


現在、エネルギーから、防衛、航空宇宙、造船などほぼ全ての大型ワークを必要とする重厚長大産業に求められている大型の工作機械。欧米、中国勢なども虎視眈々とシェア拡大を狙っているが、坂元社長は「大型の工作機械を手がけられる国内企業が減る中、この分野は死守する」と力を込める。



(日本物流新聞2026年9月10日号掲載)