インタビュー
アサイ産業 社長(山田ドビー常務) 眞野 清二 氏
資本業務提携3年「土台整った」
- 投稿日時
- 2026/09/11 13:07
- 更新日時
- 2026/09/11 13:11
「3本柱」で高収益体制へ
高速精密プレス大手・山田ドビーとの資本業務提携から3年、アサイ産業が技術融合による製品開発と経営改革を進めている。昨年に両社の技術を持ち寄った高精度油圧プレス「KTN1000e」を発売。収益面では山田ドビー製品の委託生産、大手メーカー向け小型プレスのOEM、自社油圧プレスの「3本柱」による補完体制の確立で、稼働を平準化し安定成長を目指す。受託加工による「4本目の柱」を創出する方針も含め、眞野清二社長に成長戦略を聞いた。

——直近の鍛圧機械の受注統計ではプレス系の受注が上向きました。貴社の手掛ける油圧プレスの市況は。
「業界全体としては上向き傾向にありますが、油圧に限れば投資意欲は軟調で、引き合いも全体的にまだ弱いのが実情です。かつて受注の約6割を占めた自動車の投資が停滞しています。今年に入り引き合いの数自体は戻りつつあるものの、なかなか決定に至りません。材料費が高騰しています。例えば20年ぶりの設備更新だと当時の価格と乖離が大きく、投資が見送られるケースが散発しています」
——厳しい環境下ですが、山田ドビーとの資本業務提携から3年です。シナジー効果の手応えは。
「山田ドビーの手掛ける高速精密プレスはデータセンターや半導体向けが好調。そこで山田ドビーの生産の一部をアサイ産業へ移管し始めました。当社敷地内に大型組立工場を新設し、90㌧級クレーンや大型五面加工機を導入。最大1000㌧級の大型高速プレスの部品加工・組立に対応できる体制を整えました。グループ全体の短納期化が可能になり、当社の収益も安定します」
「当社の売上比率は従来、大手メーカー向けの小型プレスOEMが6〜7割、自社プレスが4割弱でした。これを『自社40%、OEM30%、山田ドビー30%』の3本柱で均等化する体制を目指しています。この3年で山田ドビー向けの売上が20%近くに高まり、どこかが落ちても他でカバーできる基盤を確立しつつある。資本業務提携後は毎年10%以上の増収(前期17%増)を維持しており、利益体質の改善が着実に進んでいます」
——技術面での協業の成果は。
「昨年のMF-TOKYOに出品した高精度油圧プレス『KTN1000e』はまさにその成果。山田ドビーが高速プレスで培ったミクロン台の精度を実現する設計ノウハウを、油圧プレスに応用しました。油圧プレス特有の偏心荷重に対する弱みをスライド構造の強化で克服。1台で3工程の深絞り加工をこなすトランスファー仕様としたほか、下型が『昇降する』特殊な構造の金型を使った新工法と組み合せることで全高を40%低減しました。深絞りに不可欠だったダイクッション装置が不要となり、床面のピット工事もいりません。さらに機械自体の精度と剛性を高め、金型ガイドポストが不要になりました」
——金型製作費が下がる。
「金型費とピット工事の費用、さらには工程集約によりトータルの初期費用を大幅に低減します。汎用性を高めるコンセプトではないので導入先は限られますが、深絞り加工を行うユーザーへ集中的にアプローチしています」
■4本柱へ
——自社製品の販売比率を40%に引き上げる意向です。改めて貴社油圧プレスの強みを教えてください。
「強みはお客様とイチから膝を突き合わせて作り上げるオーダーメイド性にあります。CFRP成形や炊飯器の内釜の深絞りは高度なノウハウが必要で、お客様仕様へのチューニングが不可欠。金型合わせに使うダイスポッティングプレスも高いシェアを持ちます。ただ課題もあり、精度や安全装置など品質にこだわるあまり高価になりやすい。『長持ちして精度が良い』と評価される一方、投資回収を重視する経営者に対しては価格競争で厳しい場面もあります。品質重視のポリシーを守りつつ、一層のコスト研究も必要だと実感しています」
——資本業務提携3年を経て、今後の成長と組織づくりへの意気込みをお聞かせください。
「逆風下でも売上は毎年10%以上伸び、今期も12〜13%の増収を見込んでいます。将来的には『自社40%、OEM30%、山田ドビー30%』の売上構成に加え、受託加工で10%の売上を確保し『30:30:30:10』の体制にしたい。当社には製缶、焼鈍・ショットブラスト、加工、組立まで一貫対応できる設備と人材が揃っていますから」
——油圧プレス、サーボプレス、高速精密プレスを一貫製造する体制は業界でも希少ですね。
「今は何が起こるかわからない『カオス』の時代。だからこそ良い市場に臨機応変に飛び込むフットワークが不可欠です。そのために現場の多能工化を進めています。アサイ産業、OEM、山田ドビーすべての組立がこなせるようスキルを底上げしておく。現場力は私も非常に重視しており、さらに投資すべきと捉えています。資本業務提携から3年。新工場の稼働など土台は整いました。これまで撒いた種を、今後しっかり回収していきます」

「クロスセル」推進
山田ドビーとの資本業務提携を機に技術や生産面での協業を加速しているアサイ産業。互いに異なる顧客基盤を持つことから、相互補完性を活かして互いの機械を顧客に提案し合う「クロスセル」にもトライしていると明かす。眞野社長は「とはいえまずはお互いの勉強からですね。油圧と高速精密プレスは全くの別物なので」と、腰を据えて進める考えを示した。
(日本物流新聞2026年9月10日号掲載)