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けんかっ早いけど人が好き Vol.96 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2025/05/15 09:00
- 更新日時
- 2025/05/15 09:00
むかし取った杵柄は
今年も米作りが始まった。以前は米作りは田植えからと信じていたが、実際には種籾を用意して温水につけることから始まる。温かくして目覚めさせるのである。ネット状の袋(みかんネットの大きいやつ)に入った種籾を専用のお風呂にぽちゃんとつける。この瞬間に、秋の収穫日が決まる。全部を一気につけるとすべての田んぼの刈取り日が同じになりとんでもないことになるので、そこは五月雨式に順々に行うことになる。毎年私がお世話になっている、うおぬま小岩農園のダイヒョーは、ぽちゃんとつけた瞬間から、ノンストップのジェットコースターの始まりだと覚悟を決めるらしい。ふむ。

座るだけで、気分がMAX。重機ばんざーい!
米作りは88もやることがあるので「米」という字になったという説があるほど、あれやこれやとやることがあるが、毎年、私が参加するのは田植え用の苗を育てるための播種である。パレットに土を盛り種をまき、その上にまた土、そして水……という流れなのだが、これら一連の作業は播種機がやってくれる。便利な時代だ。しかしその播種機にパレットをセットしないとすべてが始まらない。この作業を誰あろう、私が担っているのだ。作業の要といってもいい(まったく違う)。こうしてできる「るみこ米」は毎年進化を遂げ、昨年はついに日本でも最大級のお米品評会でグランプリを獲得した。すごいぞ、私(すごいのはダイヒョーと仲間たち!)。
さて、種が苗に成長したら田植えなのだが、雪深い魚沼ではひとつ悩みがある。田んぼに雪が残っていることだ。この冬は例年にない大雪で未だ溶けるきる気配がない。つまり田んぼに肥料をまいて整地する代掻作業ができないのである。現在、ダイヒョーは大悩みである。それも見越して種籾をお湯につける日を決めているものの、春の天気を読み切るのはむずかしいのだ。
かくなるうえは除雪する?ダイヒョーが新たに新調したショベルカーがあるではないか。重機愛にあふれる私、動かせます! この日のために3年前に講習を受け資格をとったといっても過言ではない。ところがちょっと試しにと乗り込んだら、昔とった杵柄はすっかり朽ち果て、えーっと、どれが前進でしたっけ? というありさま。すみません、修行して出直してまいります。
(日本物流新聞2025年5月15日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)