連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.95 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2025/04/25 13:15
- 更新日時
- 2025/04/25 13:17
ど根性桜
今年の春も桜がきれいに咲いた。満開の桜は本当にきれいだ。青空を背景にして淡いピンクの映えること。毎年、この光景を見られる日本に住んでいて本当によかったと思う。タイミングよくこの時期に海外から来た人も、さぞかし堪能してくれたことだろう。

木の幹から花を咲かせる、この根性。見習いたい。
ただ、このところ倒木の被害が増えてきた感じがする。昨秋は都内でもイチョウの木が倒れて歩いていた方が亡くなったし、京都の清水寺に行く通りでも歴史ある桜が折れたという。少し前になるけれどトヨタの往年の名車2000GTが走行中、倒木に直撃されて全損になったこともあるし。桜の場合、種類によると思うが50年くらいの寿命だという。植樹したときはきれいな桜並木を想像して植えたのだろうが、正直な話、50年なんてあっという間だ(先日、某イベント会場に行ったら、初めてこの場に来たのは50年前だと気付いて卒倒しそうになった。この話はまたいずれ)。そろそろ、街路樹を植えるときは木の寿命や倒木の危険性も考えていかないといけないのかもしれない。
私の家の近所にもきれいな桜並木がある。毎年、春を教えてくれる木々だが、樹木医チェックが行われたようで、倒木の危険があるからと3本ほどが根本から切られていた。太い幹がぱっくりと年輪をさらしている姿は、悲しげでいたたまれない気分になる。おそらく桜並木を作っているほかの木も時間の問題かもしれない。いずれすべて切られてしまうのかと思うとつらい。
そう思いながら、春の日に久しぶりにその桜並木を通ってみた。大きく伸ばした枝に満開の花。やっぱりきれいだ。しかし、目の高さになにやら見慣れない花がある。なんと、太い幹からめりめりと音をたてたように枝が出て、その根元あたりに花が咲いているではないか。まるで、この幹はまだ元気なのよ、ほら、花だって咲かせられるのよと言っているようだ。なんという生命力。こうでなくちゃ。同じ樹齢(年齢)でも、気合と根性で樹生(人生)は変わるのだ。根腐れだの、虫やキノコの被害だのと言っている場合ではない。免疫力をつけて、跳ね返せばいいのである(桜の木にそんなことができるのか?)。ど根性桜に感化され、私の日々のウォーキングにも、さらに力が入っている。
(日本物流新聞2025年4月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)