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けんかっ早いけど人が好き Vol.93 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

投稿日時
2025/03/21 17:30
更新日時
2025/03/21 17:32

ペンネの茹で方

米の値段が高い。昨秋の米不足騒動のときは、これから新米が出るからと希望の光が見えていたけれど、相変わらず値段が下がらない(原稿執筆時点)。こうしたときに選ばれるのは麺である。93年の冷夏による平成の米騒動のときも麺が大人気だった。イタリアの輸入食材を扱う友人は、あれで一気にパスタという言葉が定着したと言っていた。そう、それまで
私たちはスパゲティしか知らなかった。パスタ? なんじゃそりゃ?

鍋底の写真は自主規制。ばらばらなら平気なのに。

それ以降、様々な形のパスタが日本市場に上陸してきたが、現在勝ち残っている勇者の代表格はペンネだろう。ペンネはイタリア語でペンのこと。私がよく食べる細めのスパゲティの茹で時間が4分であるのに対しこちらは11分ほどかかり、夏に茹でるとキッチンが壊れたサウナみたいになるため、私はあまり食べないでいた。

パスタの茹で方は、湯をわかして沸騰したら海水ほどのしょっぱさまで塩を入れてパスタを入れる。すぐに箸などでぐるぐるまぜないと、パスタ同士がくっついてしまうけれど、湯がふたたび沸騰しはじめたらパスタは勝手に湯のなかで踊るため放っておいていいというのが多くのシェフの教えである。

この冬、何年かぶりにペンネを食べることにした。ペンネが湯のなかで踊りはじめたので鍋から目を離し、ソース作りに取り掛かる。そして、キッチンタイマーが11分を告げたので、湯ごとペンネをざるに空け……たのだが、あれ、ペンネが半分くらいしか出てこない? 鍋のなかをのぞき込むとそこには! ぎゃー、なべ底にペンネが生えている! ぎっちりと密集したままペンネがそろって上を向き、ゆらゆらと揺れているではないか。ひいいい。

人には苦手な光景というものがある。私は子どものころ、ミツバチの巣を見られなかった。あのみっちりと同じ形が並んでいるのが意味もなく怖かったのである。なべ底ペンネは、まさにそれと同じ。ひいいいと訳のわからない声を出しながら、あわててしゃもじで掻き出した。ばらばらだとこんなに美味しそうなのに。私と同じ感覚をお持ちの方は、ペンネを茹でるときは最後までかきまぜることを絶対にお勧めいたします! 怖いもの見たさの方は、ぜひ放置を。

(日本物流新聞2025325日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)