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けんかっ早いけど人が好き Vol.82

アイスと冷蔵庫

酷暑が続いたこの夏は、私の大好きなアイスクリームも決死の覚悟でないと買いにいけなかった。夜でもむっとする暑さは、我が身はもちろんアイスを持ち帰るにしても危険アラームが鳴り響く。私のお気に入りはシャ○レーゼのチョコ○ッキ―という棒アイスなのだが、棒アイスはカップタイプと違って溶けると大変なことになる。ゆえに我が家では保冷バッグとともに大きな保冷剤も冷凍庫に待機させていた。

お気に入りの棒アイス。チョコのパリパリ具合が絶妙。

我が家の冷蔵庫に備蓄されている棒アイスは一日一個、夕ご飯の後というのをマイルールとして消費されていく。そんなある夜のこと。いつものアイスを手に取り一口かじると、わずかに柔らかいことに気づいた。む? 前日、炊き立てのご飯を大量に入れたせいだろうか。庫内の温度が上がってしまったのか? そう思っていた翌日、冷凍庫を開けて今夜の一本をつかんだとたん、予想外の感触が手のひらに伝わってきた。

ぐにゃり。

え、ぐにゃり?

手のなかのアイスが見事に溶けて液状になっているではないか。びっくりして庫内を確認するとすべてどろどろになっている。冷蔵庫の故障である。どうなる、アイス生活!

翌日、冷蔵庫メーカーに電話をすると基盤が故障した可能性が高いという。すぐに修理を頼んだものの早くて十日後だという。怒り爆発しそうになったが、エアコンの修理が立て込んでいるという。私にとってアイスなし生活は死活問題だが、エアコンがない日々は多くの人の命に直結するので仕方あるまい。

十日後、修理業者の手により、冷蔵庫は見事に復活した。彼によると、エアコンも冷蔵庫も夏に壊れることが圧倒的に多いそうだ。暑い中ぎりぎりまでがんばって、最後にぱたっといくらしい。一生懸命生きた人の人生のようで、なぜかしんみりしてしまった。

今回はアイスが溶けたので気付いたと伝えると、「アイスは最初に溶けます。入れておくといいですよ」と言うではないか。アイスは糖度が高く溶けやすいらしい。つまり、冷蔵庫故障センサーである。ふむ、ちょっと涼しくなってきたしこれを機にアイスシーズンも終了かと思ったけれど仕方ない。これからもずっと、アイスを食べて確認しなくちゃ。

(日本物流新聞1010日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)